畜産局食肉鶏卵課 価格第2係 森分 昭
農林水産省は、「畜産物の価格安定等に関する法律」および「肉用子牛生産安 定等特別措置法」に基づき平成13年度指定食肉の安定価格ならびに肉用子牛の保 証基準価格および合理化目標価格について、別表のとおり決定し、11月29日付け で告示した。 以下その内容等について紹介する。 指定食肉の安定価格 1 食肉の価格安定制度の仕組み及び最近の情勢 (1)食肉の価格安定制度の仕組み 食肉の価格安定制度は、指定食肉(牛肉および豚肉)の価格の安定を通じて、 生産者の経営安定を確保しつつ、消費者への食肉の安定供給を図ることを目的と して設けられている。 本制度では、枝肉卸売価格について、省令により牛肉は去勢牛肉の「B−2・ B−3」規格、豚肉については「上」以上の規格のものを定め、それぞれの規格 に関して安定上位価格と安定基準価格を設け、その価格帯の間に価格を安定させ ることにより食肉全体の価格安定を図ることとしている。 (2)最近の牛肉情勢 需要については、食生活の多様化、輸入自由化(3年度)とその後の関税率引 き下げ等により、一貫して増加してきた。8年度は、狂牛病や腸管出血性大腸菌 O157問題による安全性に対する関心の高まりから、前年度をかなり下回ったが、 9年度以降は回復傾向で推移しており、12年度も前年同期をやや上回って推移し ている。 生産については、輸入自由化後も微増傾向で推移したが、7年度以降は、5年度 以降の子牛生産頭数が減少傾向にあったことから前年度を下回って推移してきた。 10年度に回復傾向となり、11年度は前年同期をわずかに上回った。12年度は前年 同期をやや下回って推移している。 輸入については、4年度以降増加傾向で推移してきたが、8年度は狂牛病等の影 響による需要の減少等からかなり減少した。9年度以降は、需要が回復したこと もあり増加傾向で推移し、11年度は、需要がほぼ前年度並みとなり、国内生産が 堅調であったことから、前年度並みとなった。12年度は需要が前年同期をやや上 回っており、生産量がやや減少していることから、前年同期をかなりの程度上回 って推移している。 枝肉卸売価格は、輸入自由化以降低下したが、5年度の夏以降はおおむね安定 的に推移し、8年度以降は安定上位価格を上回る水準で推移した。10年1月以降は 低下傾向となったが、11年度夏以降は回復傾向で推移している。品種別にみると、 去勢和牛、乳用肥育去勢牛とも輸入自由化前後から低下傾向で推移した。去勢和 牛は、中級規格が7年度に、高級規格は8年度には下げ止まり、それ以降堅調に推 移してきた。しかし、10年度に入り中級規格が低下傾向に転じ、12年度に入り高 級規格がやや低下している。乳用肥育去勢牛は、7年度以降堅調に推移してきた が、9年度後半から低下傾向にある。ただし、低級規格については、11年度秋以 降回復している状況が見られる。 (3)最近の豚肉情勢 需要については、近年ほぼ横ばいで推移している。9年度は、牛肉消費の回復 等から前年度をわずかに下回ったが、10年度には回復し、11年度も前年度をわず かに上回った。12年度は前年同期並みで推移している。 生産については、2年度以降、環境問題、担い手不足等から減少傾向で推移し てきたが、9年度以降はおおむね安定的に推移してきた。11年度以降は減少傾向 で推移し、12年度は、前年同期をわずかに下回って推移している。 輸入については、6年度以降、台湾、米国、EU等を中心に前年度を上回って 増加してきたが、9年度は台湾産豚肉の輸入禁止等により前年度を大幅に下回る 水準となった。10年度以降は、冷蔵品・冷凍品とも前年度を上回って推移し、12 年度は冷蔵品については、前年同期を上回って推移しているものの、冷凍品につ いては、前年度を下回って推移している。 枝肉卸売価格については、季節的な変動があるものの、おおむね安定価格帯内 で推移している。9年度は台湾産豚肉の輸入禁止等により一時高騰したが、同年 8月に1か月間輸入豚肉の関税減免を実施し、その結果、同年9月以降はおおむ ね安定価格帯内で推移した。11年度は12月から12年2月まで調整保管による買い 入れを実施した。12年度は9月まではおおむね安定価格帯内で推移してきたが、 10月下旬から安定基準価格を下回って推移したことから、10月30日から調整保管 による買い入れを実施している。 2 安定価格の算定 食肉の安定価格については、その生産条件および需給事情その他の経済事情を 考慮し、食肉の再生産を確保することを旨とし、従来どおり、過去の一定期間を 基準期間(牛肉:過去7年間、豚肉:過去5年間)として、この間の牛肉および豚 肉の農家販売価格を基本に、価格決定年度に見込まれる生産コストの変化率を織 り込む需給実勢方式により算定した。 牛肉については、@基準期間の農家販売価格が低下していること、A乳用種も と畜費が低下していること、B配合飼料価格が低下していることなどが引き下げ 要素となり、安定基準価格は5円、安定上位価格は10円の引き下げの諮問となっ た。 豚肉については、@基準期間の農家販売価格が低下していること、A配合飼料 価格が低下していること等があるものの、低下の程度が小さいことから、安定基 準価格は前年と同額、安定上位価格は5円の引き下げの諮問となった。 肉用子牛の保証基準価格及び合理化目標価格 1 保証基準価格 肉用子牛の保証基準価格は、肉用子牛の再生産を図ることを旨とし、その生産 条件および需給事情その他の経済事情を考慮して毎年定めている。 13年度の価格についても昨年同様、子牛価格に自由化の影響が出ていない過去 の一定期間を基準期間(具体的には、昭和58年2月〜平成2年1月までの7年間)と して、この間の農家販売価格を基本に、価格決定年度に見込まれる子牛生産コス トの変化率を織り込む需給実勢方式により算定した。 2 合理化目標価格 合理化目標価格は、肥育経営にとっては牛肉の輸入数量制限が撤廃された段階 で、輸入牛肉と対抗し得る価格で生産を行うための子牛価格であり、子牛生産者 にとっては、長期的視点に立って生産の合理化を進めていく方向を示す目標とな る価格である。従って、合理化目標価格は生産の合理化の進展に伴って保証基準 価格が近づいていくことが期待される目標であり、5年ごとの設定を原則とする が、牛肉輸入自由化後の肉用子牛生産をめぐる情勢が流動的であること等から、 特例措置により平成2年4月1日から15年間は毎年度定めることができることとさ れている。 13年度の価格は、まず、翌年度(14年度)における輸入牛肉の国内価格を推計 し、その価格から「品質格差」を勘案した輸入牛肉と対抗しうる国産牛肉価格を 求めた後、それを肥育牛の農家販売価格に換算し、さらにその肥育牛を生産する ために必要な合理的な肥育経費(素畜費を除く)を差し引いて子牛価格(合理化 目標価格)とする従来どおりの方法により算定した。なお、適用期間は昨年同様 1年間(13年4月から14年3月)とした。 算定の結果、肉用子牛の保証基準価格は、「黒毛和種」、「褐毛和種」、「そ の他の肉専用種」、また、12年度から分離した「乳用種」、「交雑種」のいずれ の品種についても、労働費や物財費がわずかに低下しているものの、その影響は 小さく、前年と同額の諮問となった。 合理化目標価格は、「黒毛和種」、「褐毛和種」、「その他の肉専用種」、 「乳用種」、「交雑種」のいずれの品種についても、輸入牛肉価格の低下が下げ 要素となるものの、肥育経営の生産性の向上(合理的な肥育経費の減少)が上げ 要因となり、総合すると前年と同額の諮問となった。 答申および建議 こうした政府試算について畜産振興審議会食肉部会で審議され、次のとおり答 申と建議が行われた。 【答申】 1 豚肉の安定価格については、その生産条件及び需給事情その他の経済事情を 総合的に考慮すると、試算に示された考え方で安定価格を決めることは、やむ を得ない。 牛肉の安定価格については、その生産条件及び需給事情その他の経済事情を 総合的に考慮すると、試算に示された考え方で安定価格を決めることは、やむ を得ない。 2 肉用子牛の保証基準価格については、その生産条件、需給事情及びその他の 経済事情を総合的に考慮すると、試算に示された考え方で決めることは、やむ を得ない。合理化目標価格については平成13年度につき試算に示された考え方 で決めることは、やむを得ない。 【建議】 1 我が国畜産の安定及び健全な発展が図られるよう、「食料・農業・農村基本 法」及びそれを具体化する「食料・農業・農村基本計画」、「酪農及び肉用牛 生産の近代化を図るための基本方針」等に即し、食料自給率の目標の達成等に 向けた農業者その他の関係者の取組を支援するため、施策の総合的かつ計画的 な展開を図ること。 2 肉用子牛生産の維持・拡大を図るため、肉用子牛生産者補給金制度の安定的 な運営に努めるとともに、繁殖雌牛の維持拡大対策を推進すること。また、肉 用牛肥育経営の経営安定のための対策について適切な見直しを行うとともに、 肉用牛の改良対策、地方特定品種対策、乳用種肥育対策等を推進すること。 3 養豚経営の経営安定のための対策を継続実施するとともに、地域における価 格差補てん事業の見直し等につき都道府県を指導することを含め、その適切か つ健全な運用を図ること。また、肉豚生産の維持・拡大及び養豚経営の体質強 化を図るため、生産コストの低減、優良種豚の導入等を推進すること。 4 肉用牛生産の基盤強化を図る観点から、「飼料増産推進計画」の達成に向け て、国産稲わらの利用促進、水田等での作付け拡大等関連対策を推進し、自給 飼料の増産を図ること。 5 「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」に即し、処理 施設の計画的な整備、耕種農家との一層の連携等による家畜排せつ物の利用の 促進を図るため、畜産環境関連対策を強力に推進すること。また、意欲ある担 い手の確保・育成対策、地域における経営支援対策を推進すること。 6 効果的かつ効率的な家畜防疫体制を構築するため、家畜伝染病予防法を改正 し、国内防疫措置及び輸入検疫措置の強化を図ること。また、豚コレラ撲滅対 策について関係者の理解と協力の下、早期に撲滅が確認されるよう努めること。 7 食肉処理施設の再編整備等を推進し、食肉の安全性の確保及び食肉流通の合 理化を図ること。 8 消費者の視点を踏まえつつ、きめ細かな情報提供を図るとともに、JAS法に 基づく原産地表示の徹底など表示問題に関する施策や国産食肉の消費拡大等の 施策を推進すること。 最終決定 この答申および建議を受けて、農林水産省は、政府諮問案どおり指定食肉の安 定価格ならびに肉用子牛の保証基準価格および合理化目標価格を決定し、併せて 畜産物価格関連対策の実施を決定した。 1 指定食肉安定価格 2 指定肉用子牛保証基準価格及び合理化目標価格 合理化目標価格の適用期間 今回の合理化目標価格の適用期間は、 13年4月1日から14年3月31日までとする。
畜産局牛乳乳製品課 価格調査班 太齊 雅幸
農林水産省は、「加工原料乳生産者補給金等暫定措置法」の第11条の規定に基 づき、新制度の移行初年度である13年度の補給金単価および生産者補給交付金に 係る加工原料乳の数量の最高限度として農林水産大臣が定める数量(限度数量) を別表のとおり、畜産振興審議会酪農部会に諮問を行い、やむを得ないとの意見 をいただいた。農林水産省としては、この答申を受け、加工原料乳生産者補給金 等暫定措置法の一部を改正する法律の施行(13年4月)後遅滞なく13年度の補給 金単価等の告示を行うこととしている。以下、背景、内容等について紹介する。 加工原料乳の生産者補給金の算定方法の見直し 12年5月に「加工原料乳生産者補給金等暫定措置法」が改正されたことにより、 13年度からの新制度においては、保証価格、安定指標価格、基準取引価格が廃止 され、乳製品・加工原料乳の取引価格は市場実勢を反映して形成される新たな制 度に移行することとなった。 また、加工原料乳生産者補給金については、13年度から、従来の加工原料乳地 域における生乳の再生産を確保することを旨として定められる保証価格から、主 要な乳製品の製造業者販売価格から製造販売経費等を控除して得られる基準取引 価格(乳業者支払い可能乳代)を差し引いて単価を求める不足払いによる算定方 式を改め、市場実勢が生産者サイドに適確に伝達されるよう、生産費等の動向を 基本に一定のルールに基づいて毎年度あらかじめ算定される補給金単価による助 成方式に変更することとされた。 牛乳・乳製品の需給動向 12年4〜10月の生乳生産量は、北海道でわずかに減少したものの都府県でわず かに増加したこと等により、前年度をわずかに上回って推移している(12年4〜 10月前年同期比0.2%増)。飲用牛乳等向け処理量については、4〜10月で対前年 同期比0.6%の増加となっている。 最近の乳製品の需給については、バターは、生産が増加傾向で推移している一 方、消費が過去の水準に比べて低迷していることから、在庫は増加傾向にある。 脱脂粉乳については、供給量のうち国内生産量は生乳需給のひっ迫等により減少 し、カレントアクセス分は一部が8月に放出された。一方、消費量は加工乳、乳 飲料及びはっ酵乳等の生産減に伴い減少している。 酪農の経営動向 酪農経営の動向について見ると、乳用牛飼養戸数は、小規模層を中心に減少を 続けている(12年3万4千戸、対前年比5.1%減)一方で、1戸当たり飼養規模は着 実に拡大している(1戸当たり経産牛頭数 全国11年33.1頭→12年34.2頭、北海道 11年47.9頭→12年49.6頭)。 酪農経営の収益性を生産費調査(期間:11年生産費調査以前 前年9月〜当年8 月、12年生産費調査 前年4月〜当年3月)で見ると、11年は、子牛価格の低下等 により、1頭当たりの所得は前年を下回った。12年は、全国においては、粗収益が 増加したこと等から前年に比べ向上、北海道においては、ほぼ前年並みの水準と なった(搾乳牛1頭当たり所得:全国11年22万7千円→12年23万1千円、北海道11年 20万9千円→20万8千円)。 加工原料乳の生産者補給金単価等 1 生産者補給金単価 (1)13年度の補給金単価については、12年5月に改正された「加工原料乳生産者 補給金等暫定措置法」にある、@生乳の生産費その他の生産条件、生乳およ び乳製品の需給事情ならびに物価その他の経済事情を考慮、A加工原料乳地 域における生乳の再生産を確保することを旨として決定、B酪農経営の合理 化の促進に配慮−という規定に即し、また、「乳製品・加工原料乳制度の改 革骨子」において、移行初年度(13年度)の助成単価については、「制度の 円滑かつ適正な移行に配慮しつつ、適切に設定する」とされていることを十 分踏まえる必要があった。 (2)この12年度の保証価格の算定時以降の(1)@の算定の考慮事項の状況(13 年度単価算定時まで)を見ると、 @生乳の生産費その他の生産条件の動向については、農林水産省統計情報部の12 年牛乳生産費(北海道)(調査期間:11年4月〜12年3月)が、11年生産費と比 較して▲1.9%の低下(100キログラム当たり6,732円)にとどまっていること A生乳および乳製品の需給事情については、12年度上期(4月〜9月)の生乳生産 量が昨年より0.4%増(4,287千トン)となっていること B物価その他の経済事情については、配合飼料価格については、12年1〜3月期か ら見ると、その後の4〜6月期の引上げ、7〜9月期の据え置き、10〜12月期の引 下げにより、現在はほぼ同じ価格水準に戻っており、子牛価格についても、12 年7月までは上昇したものの、その後は低下しており、12年春の価格水準に戻 りつつあること から、大きな変化が見られないと考えられた。 (3)また、12年度の補給金単価は、保証価格の一部をなすものであるが、この 12年度保証価格は、AおよびBに基づいて定められたものであり、その後の 状況に大きな変化がない中では、12年度補給金単価自体が、今後なおこれら の要件にかなうものとして位置付けられると考えることができた。 (4)以上のことを勘案し、12年度の補給金単価は、改正前の法律に基づくもの とはいえ、現時点においては、改正後の法律の規定にも沿うものと考えられ た。 このため、13年度の補給金単価は、制度の円滑かつ適正な移行に十分配慮 する観点から、12年度の補給金単価と同額のキログラム当たり10.30円が諮 問値となった。 (5)なお、14年度以降の補給金単価の算定方式については、畜産振興審議会の 答申において、「次年度以降の補給金単価については、透明性の高い客観的 な算定のあり方について検討を進めること」とされており、今後、乳製品・ 加工原料乳制度等検討委員会の制度部会において具体的な検討を進めること としている。 2 限度数量 限度数量は、生産者補給金の交付の対象となる加工原料乳の数量の最高限度と して定められる数量であり、生乳の生産事情、飲用牛乳および乳製品の需給事情、 その他経済事情を考慮して定めることとされている。具体的には、13年度の推定 生乳生産量の中央値(8,519千トン)から、推定自家消費量(96千トン)、飲用等 向け生乳消費量として見込まれる数量の中央値(4,954千トン)、チーズ、クリー ム等のその他乳製品向けとして見込まれる生乳消費量(1,199千トン)を控除して 算出した。カレントアクセス分は、相対的に需要が大きい無脂乳固形分である脱 脂粉乳を輸入し、年度を通してバター、脱脂粉乳の適正在庫を確保するという考 え方をとっている。この結果、限度数量は、昨年度より13万トン減少の227万ト ンの諮問となった 答申および建議 畜産振興審議会酪農部会において、次のような答申および建議がなされた。 【答申】 政府諮問に係る限度数量及び補給金単価については、生産者補給金制度の円滑 かつ適正な移行に配慮しつつ、生産条件、需給事情及び物価その他の経済事情を 総合的に考慮すると、政府試算に示された考え方で定めることは、やむを得ない。 なお、次年度以降の補給金単価については、透明性の高い客観的な算定のあり 方について検討を進めること。 【建議】 1 我が国酪農・乳業の健全で持続的な発展と国内生産を基本とする牛乳・乳製 品の安定的な供給が確保されるよう、「食料・農業・農村基本計画」、「酪農 及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」等に即し、施策を総合的に展 開すること。 2 新たな制度の下でその特性を踏まえた透明性の高い公正かつ適正な生乳取引 の実現のため、関係者間の情報の共有化及び価格形成の円滑化を図るとともに、 広域指定生乳生産者団体の充実・強化、生乳の用途別の計画生産の推進、より 的確な生乳の需給調整の実施、集送乳の合理化等の条件整備を図ること。 3 ゆとりある生産性の高い酪農経営を確立するため、意欲ある担い手の確保・ 育成を図るとともに、酪農ヘルパー等支援組織の利用拡大、飼養管理技術の高 度化及び家畜改良の推進に努めること。 4 環境と調和した酪農経営の推進を図る観点から、「家畜排せつ物の管理の適 正化及び利用の促進に関する法律」に基づき、家畜排せつ物について、その適 正な管理を確保するとともに、たい肥としての一層の利用を図るため、耕種部 門との連携に努めること。 5 土地基盤に立脚した酪農経営の育成を図る観点から、「飼料増産推進計画」 の達成に向け、関係者一体となった増産運動を展開するとともに、水田や畑で の作付拡大、草地整備の推進、単収の向上、飼料生産受託組織の育成、稲発酵 粗飼料の利用拡大等を図ること。 6 乳業の合理化と牛乳・乳製品の安全性の確保を図るため、「酪農及び肉用牛 生産の近代化を図るための基本方針」に即して乳業の再編・合理化及び衛生管 理水準の向上を強力に推進すること。 7 牛乳・乳製品の品質や優れた栄養に関するPR活動の展開と学校給食用への 牛乳供給の推進等により、消費の一層の拡大を図ること。 また、飲用牛乳等の表示については、消費者にとって分かりやすいものとし、 商品情報を的確に消費者に提供する観点から、必要な改善に努めること。 8 バターの需給緩和の傾向の下で、新たな制度に移行するに当たっての臨時応 急特例的な対応として、バター在庫の縮小を図るための適切な措置を講じるこ と。また、国際市場の影響を受けにくい生クリーム等液状乳製品や今後更に需 要が見込まれる国産ナチュラルチーズの生産振興を図ること。 9 効果的に酪農経営の安定と生乳の再生産の確保を図る観点から、酪農家の所 得・経営の状況等を踏まえつつ、生産者補給金の交付のあり方について早急に 検討を開始すること。 平成13年度加工原料乳補給金単価等総括表
畜産局畜政課畜産振興推進室 指導係 小野 庄一
農林水産省は、畜産物行政価格の決定を踏まえ、平成13年度の畜産物価格関連 対策を決定したのでその概要を紹介する。 「新たな酪農・乳業対策大綱」実現のための牛乳・乳製品関連対策 1 市場実勢を反映した適正な価格形成の実現及び酪農経営の安定の確保並びに 生乳の流通対策 新たな対策フォローアップ推進事業(新規) 27百万円 酪農・乳業の関係者で構成するフォローアップのための会議を開催し、新たな 対策の円滑な推進、実施状況の調査・指導等 生乳生産者団体再編合理化緊急対策事業 1,396百万円 広域指定生乳生産者団体の適正かつ効率的な業務運営の推進及び生乳の販売を 委託する都道府県内生乳生産者団体の再編等の取り組みに対する助成 広域指定生乳生産者団体が行う生乳の配乳調整、乳代精算等の効率化・迅速化 のためのオンラインシステムの開発・整備に対する助成 広域指定生乳生産者団体への移行後におけるブロック内及びブロック間の生乳 需給調整手法の検討、生乳出荷計画及び乳業者の用途別取引希望数量等の調査 (社)牛乳輸送施設リース協会が集送乳施設等をリースするのに必要な施設等 の購入費に対する助成 2 牛乳・乳製品の加工・流通・消費対策 乳業再編整備等対策事業 7,837百万円 乳業の再編・合理化等を促進するとともに、高度な衛生管理水準を備えた施設 整備を推進するため、乳業工場の廃棄及び乳業施設の整備(新設、増設又は移設) 余剰生乳の発生に伴う飲用乳市場の混乱を回避するため、需給調整拠点施設及 びクーラーステーションの整備等の実施 国産生乳需要拡大推進事業(拡充) 2,719百万円 国産生乳需要の拡大を図るため、飲用牛乳等における生乳使用割合の表示や容 器の色識別による適切な商品情報表示の推進、牛乳・乳製品の有するカルシウム 等豊富な栄養成分及び商品情報の提供、バターに関する需要促進及び牛乳消費の 伸び悩んでいる地域、年代着目した生乳需要拡大キャンペーン等の実施 バターを使用した新商品開発、高齢者等のニーズに対応した商品開発・新技術 導入、生乳使用割合の分析技術を確立するための機器の整備等 生クリ−ム等生産拡大促進事業(拡充) 6,324百万円 基準年度(5年度)実績(333千トン)に対する取引拡大分について、価格を引 き下げて生クリ−ム等向け生乳を出荷した指定生乳生産者団体に対する奨励金の 交付 酪農安定特別対策事業(拡充) 3,000百万円 国内生産の振興を図るため、チーズ原料乳を出荷した指定生乳生産者団体に対 する奨励金の交付 学校給食用良質牛乳供給推進事業 983百万円 乳業者が、学校給食用良質牛乳供給計画を作成し、牛乳を供給した場合に、供 給数量に応じた奨励金の交付 その他対策 1 経営体・担い手対策(ゆとりある生産性の高い酪農経営の確立) 新規就農円滑化モデル事業 802百万円 我が国の実態にあった「日本型畜産経営継承システム」の確立を図るため、新 規就農者の研修の充実、データベースの構築等を推進、肉用牛繁殖経営の開始に 必要な施設のリース等 畜産経営総合改善指導事業(新規) 613百万円 生産技術、経営・財務管理等に係る指導の強化及び新規就農者等への濃密 指 導の実施等 新世紀対応酪農基盤確立調査事業 80百万円 法人化、協業化等を通じた合理的かつ体系的な草地・畜産関連施設の配置及び 運営方法について基本構想及びモデル計画を策定、離農跡地等の経営継承又は交 換分合を円滑にするための客観的評価基準の策定、新たな飼養体系に対応した既 存施設の改修・転用技術の検証等 飼料増産受託システム確立対策事業(拡充) 636百万円 コントラクターの育成・定着のため、マネージャー・オペレーターの育成、コ ントラクターに係る情報の収集及び提供、コントラクター業務の平準化を図るた め、飼料収穫作業等を受託した場合に受託面積に応じた助成 酪農ヘルパ−利用促進特別対策事業 296百万円 酪農ヘルパ−に就業を希望する者に対しての修学資金の交付等 酪農ヘルパ−傷病時利用円滑化特別対策事業 314百万円 酪農経営の拠出による積立金により、酪農経営の傷病時のヘルパ−利用料金を 軽減する互助制度を実施する利用組合に対して、軽減に要した費用の助成等 酪農ヘルパー組織運営体制強化事業 293百万円 利用組合の運営経費を助成する都道府県段階の事業基金設置者に対し、その財 政基盤を補完するために必要な経費についての無利子融資 酪農ヘルパ−事業安定特別対策事業 213百万円 利用組合が酪農ヘルパ−を新規採用した場合に、採用後1年間を研修期間とみ なして助成金の交付 酪農ヘルパー利用拡大推進事業 768百万円 酪農ヘルパ−の利用拡大のため、酪農経営に対し、利用日数の増加等に応じ、 1日当たり定額の助成金の交付 新酪肉基本方針等啓発普及事業 795百万円 新酪肉基本方針等の普及啓発、家畜改良状況の調査、新酪肉基本方針等の経営 指標を実践するためのモデル畜産経営体の整備(農協等が行う施設等の整備に助 成)等 酪農経営体育成強化緊急対策事業 424百万円 経営中止又は縮小する酪農経営から生乳生産枠を取得することを通じて規模拡 大を行う酪農経営に対して、生乳生産枠の取得に必要な経費の助成 2 畜産環境対策の推進 畜産環境緊急特別対策事業(拡充) 24,355百万円 素掘り、野積みの解消を図るため、たい肥化施設や浄化処理施設等をリースす るのに必要な機械・装置等の購入費の一部の助成 たい肥センターが行うたい肥散布への助成、成分分析、散布運搬や広域流通促 進のための機械、ストックポイント等の整備、たい肥センターの運営改善を図る ため、良質たい肥生産技術、たい肥施用技術等についての研修・人材育成 悪臭防止、浄化処理等の家畜排せつ物処理コストの低減のための技術開発、情 報の提供等 家畜排せつ物と生ゴミ等の一体的な処理によるたい肥化、食品産業等からの食 品残さの飼料化等を第三セクター方式によるモデル的な実施 有機畜産の検討、畜産環境問題を解消するため、畜産会、農協等からなる特別 指導チームを設けて技術面、経営面等の重点指導の実施 土地利用型酪農推進事業(拡充) 9,614百万円 経産牛1頭当たり飼料作物作付面積の水準に応じてランク分けし、それぞれの ランクごとの奨励金の交付 畜産副産物需給安定体制整備事業 198百万円 畜産副産物製造業の安定的発展、安全な畜産副産物の需給の安定を推進するた め、セミナ−の開催、需給状況、流通実態等に関する調査・検討、動物油脂等の 新製品開発及び食用副産物の新調理法の開発を行う委員会の開催、動物油脂等の 需給の安定を図るため油脂の共同保管施設の整備、サルモネラフリーを証明する ための検査期間中の飼料原料製品の共同貯蔵施設の整備等 畜産衛生環境整備円滑化事業(拡充) 305百万円 死亡家畜の冷却保管衛生施設、冷却運搬衛生車両、家畜の殺処分器具等の整備、 レンダリング周辺施設の改修、効率的な殺処分処理方式の確立等 3 自給飼料の増産 草地生産性向上対策事業 497百万円 雑草の混入・裸地化等により生産力の低下、周辺環境への悪影響が懸念される 草地について、農協等が適正な肥培管理、優良品種導入、緑肥作物導入等による 耕種的な雑草防除等による高位生産草地への転換 国産粗飼料増産緊急対策事業 4,704百万円 国産粗飼料の増産を図るため、自給飼料生産基盤の拡大、生産組織等が飼料用 稲わら等を収集・調製し、安定的な供給を行う体制の確立、稲発酵粗飼料の給与 についての実証等 公共牧場利用体制等整備事業 250百万円 公共牧場の再編統合の推進、広域的な利用体制の確保のための施設整備、経営 財務管理の改善指導等 草地畜産拡大対策事業(拡充) 712百万円 公共牧場等を活用した日本型放牧を推進するため、入下牧時等の家畜運搬、家 畜衛生対策、自給飼料生産等の共同作業に取り組む放牧集団への助成、環境保全 と良質な畜産物生産を目指す持続可能な生産方式(持続的草地畜産)の定着を図 るための普及・啓発等 4 家畜改良の推進及び飼養管理技術の高度化 畜産新技術開発活用促進事業(拡充) 1,033百万円 先進繁殖技術の確立を図るため、優良雌牛からの採卵、受精卵移植等に対する 奨励金の交付、エンブリオバンクによる受精卵供給体制の整備、分別精子利用成 績の調査分析、不良形質遺伝子の特定及び診断法の確立、遺伝子修復技術の確立 等 優良乳用牛群整備促進事業(拡充) 804百万円 乳用牛の交配状況等についての情報収集と提供、乳用種を一定以上交配してい る牛群検定実施酪農経営が実施する乳用雌牛群の改良速度の向上に資する取り組 みに対する奨励金の交付 5 畜産経営対策 (1)負債対策 大家畜経営改善支援資金特別融通助成事業(畜特資金)(新規)融資枠700億円 負債の償還が困難な酪農及び肉用牛経営の経営の安定並びに後継者の経営継承 の円滑化を図るため、長期・低利の借換資金の融通を行う農協等融資機関に対す る利子補給、保証基盤の拡充 養豚経営改善支援資金特別融通助成事業(畜特資金)(新規) 融資枠100億円 負債の償還が困難な養豚経営の経営の安定並びに後継者の経営継承の円滑化を 図るため、長期・低利の借換資金の融通を行う農協等融資機関に対する利子補給、 保証基盤の拡充 (2)肉用牛経営の安定対策 肉用牛肥育経営安定対策事業(新規) 13,812百万円 都道府県ごとに肥育牛1頭当たりの推定所得が平均家族労働費を下回った場合 に、その水準に応じた肥育牛生産者に対する補てん金の交付 中核肉用牛繁殖経営等育成対策事業 2,224百万円 繁殖雌牛を飼養する生産者が、増頭計画(3年間)に基づいて繁殖雌牛を増頭 した場合、実に基づいた奨励金の交付 繁殖雌牛を飼養する生産者が、経営内一貫生産計画(3年間)に基づいて自家 生産の肥育素牛を増頭した場合、実績に基づいた奨励金の交付 子牛生産拡大奨励事業 16,265百万円 全国における肉専用子牛平均価格が一定価格水準を下回った場合、繁殖雌牛頭 数の増頭者及び維持者が生産子牛を販売又は保留した場合に価格の程度に応じた 奨励金の交付 (3)養豚経営の安定対策 地域肉豚生産安定基金造成事業 5,000百万円 生産者等自らが自主的に実施している肉豚に係る価格差補てん事業を支援する ための資金供給を行う基金造成に対する助成 地域養豚振興特別対策事業 600百万円 各地域における肉豚の生産振興・生産性向上のための多様な活動を支援するた め、都道府県段階において、養豚集団等が自ら行う基金造成に対する助成 養豚振興体制整備総合対策事業 2,044百万円 種豚の能力向上や優良種豚の広域流通のための隔離検疫施設、自家検定用機材 の整備等、安全で高品質な豚肉を低コストで生産するための優良種豚導入奨励金 の交付、人工授精用精液等の導入等 (4)低コスト化の推進 乳肉複合経営体質強化事業 3,223百万円 初生牛の自家ほ育・育成、経産牛肥育、受精卵移植技術の活用を促進するため の奨励金の交付 乳用種牛肉生産流通体制改善事業 726百万円 早期肥育等新たな生産方式の導入により特色ある乳用種牛肉の生産、一定の出 荷規格牛を生産した場合に奨励金を交付、乳用種牛肉の計画的な集出荷体制の整 備、消費者との意見交換、試験販売、販売広報活動等 肉用牛生産基盤安定化支援対策事業(拡充) 3,590億円 離島・山村振興地域等における子牛取引の活性化を図るための奨励金の交付、 優良雌牛確保のための導入奨励、特定種雄牛の交配奨励、ヘルパー活動に対する 支援、省力的な繁殖方式の導入等による分娩間隔の短縮等の科学的な分析に基づ く飼養管理技術の実証等 地方特定品種生産流通等強化対策事業 429百万円 地方特定品種の維持・拡大を図るための、繁殖雌牛の導入、交配時期の調整及 び肥育素牛の保留を行う生産集団に対する助成、放牧地の維持・管理、飼料生産、 繁殖用純粋種雌牛の共同管理等を行う生産集団に対する助成、産直活動を行って いる農協等に肉用牛の計画的出荷を行う肥育経営に対する助成等 大家畜自家配合飼料給与技術効率化推進事業 32百万円 新たな自家配合技術についての飼料給与試験の実施分析、自家配合技術の普及 定着の推進 6 家畜衛生・畜産物安全対策 家畜防疫互助基金造成等支援事業 (拡充) 2,533百万円 豚コレラの万一の発生に備えた互助基金の造成及び発生時の互助基金の交付等 発生経営の再建等に対する支援、緊急接種用豚コレラワクチンの製造・備蓄、ワ クチン接種関連資材の備蓄、豚コレラワクチン接種中止経営を対象とした豚丹毒 ワクチンの接種、海外悪性伝染病防疫互助基金造成等 家畜生産農場清浄化支援対策事業 (拡充) 2,130百万円 ヨーネ病の広範な検査ととう汰対策、オーエスキー病の抗体陽性同居豚のとう 汰更新、ワクチン接種対策の強化等による清浄化の推進等、と畜場等の施設及び 産地における車輌消毒施設の整備、牛、豚、鶏において指定した特定伝染病に対 する予防接種等 7 食肉の加工・流通・消費拡大対策 国産食肉等需要促進総合対策事業(拡充) 1,469百万円 消費者向けの広報活動、食肉に関する知識の普及・啓発のためのイベント等の 実施、食肉の栄養に関するデ−タの収集、情報提供のための相談窓口体制の整備、 店頭における産地表示等の実態調査、食肉等を用いた加工品の新規需要開拓のた めの調査・検討会の開催、新製品の開発・普及、高齢者を対象とした食肉製品の 開発・普及等 食肉処理施設等再編整備事業(拡充) 9,669百万円 食肉処理施設の整理統合を促進して、産地における高度に衛生的な食肉等処理 施設、消費地における物流拠点施設の整備、食肉センタ−の経営に関する改善対 策の協議等
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