★ 事業団から


食肉処理施設等再編整備事業の実施状況について

畜産助成部


 農畜産業振興事業団は指定助成対象事業の一環として、食肉処理施設等再編整
備事業(以下「本事業」という。)を平成8年度から実施し、すでに5年を経過し
ているところでもあり、その実施概況を紹介する。


目的

 最近のわが国の食肉をめぐる情況にかんがみ、食肉処理施設の再編合理化を通
じた食肉処理コストの一層の低減と衛生的な食肉流通体制の整備を図っていくこ
とが喫緊の課題となっていることから、産地における食肉処理施設、消費地にお
ける物流拠点の整備等を推進する。併せて小規模な食肉処理施設の整理統合と衛
生的な食肉処理の促進等を図りつつ、総合的な食肉等の流通合理化および近代化
を促進することにより新たな「酪農及び肉用牛生産の近代化基本方針」の達成に
資することを目的とする。


最近における施設整備の特徴

 本事業の平成8年度以降の事業実施状況は、表1のとおりであり、その特徴的な
ことは次のとおりである。また、事業の種類とそれぞれの内容、事業実施主体の
用件については末尾に記したので、参照されたい。


衛生管理向上等施設整備事業

 8年度に全国各地で発生した腸管出血性大腸菌O157問題の発生は、消費者に安
全で衛生的な食品を提供する重要性を改めて認識させる契機となった。食肉処理
の段階における衛生基準は、と畜場法施行規則の一部改正(8年12月25日)等に
より、直腸結さつ・食道結さつ、繊維製品等洗浄消毒が困難な手袋の不使用、ナ
イフ等の83℃以上での洗浄消毒等が定められ、その後、冷却設備の設置、給湯設
備の設置等が義務付けられた。

 適用は、大動物(牛)については12年度から、また、小動物(豚)については
14年度からであり、緊急かつ必要性の高い整備であることから、補助率は、従前
の1/3以内に比べ、高率の1/2以内となっている。

 8年度以降11年度までに、延べ95の事業実施主体が当該事業を実施し、12年度
においては、20余りの事業実施主体が小動物の衛生対策を所轄の食肉衛生検査所
の指導を受けながら取り組んでいる。

表1 事業実施状況
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 注1:事業実施主体数の合計は、重複を除いていない。	
  2:事業費は補助金確定額に当該事業の補助率で除した。	
  3:各年度とも予算繰り越しは加味していない。
    12年度は11月末日現在の交付決定額である。


総合食肉流通施設整備事業

 係留施設、と畜解体および内臓処理施設、部分肉加工施設等全般が対象となる
当該事業と衛生管理向上等施設整備事業により、施設の新設を計画する事業実施
主体が出現している。

 例えば、県内3カ所のと畜場の再編整備を行って1カ所に統合し、豚換算約1,800
頭/日のと畜能力を有するわが国でも有数の施設を新設するケースがある。また、
豚1,600頭/日のと畜能力を有する施設の新設の際、12年3月の口蹄疫発生等に係
る衛生対策等について検討し、海外における湯剥ぎ方式の技術が品質面・処理コ
スト面でも進歩したことから、湯剥ぎ方式の導入を決定したケースもある。


食肉高付加価値化施設等整備事業

 補助対象施設として、内臓等処理装置、血液処理装置、加工室、原料処理室、
食肉高付加価値化用機械器具等が対象になる。

 例えば、当該事業により、食肉処理施設からオンレールで結ばれ、部分肉処理
加工とコンシューマーパック商品製造を衛生的に行える施設を整備し、安全な商
品の供給を目指すケース、ウィンナー充填機・深絞り自動包装機(真空ガス包装
兼用機)を導入し、HACCP対応機による安心・安全・高品質な新商品の開発を目
指すケースがある。


酪農及び肉用牛の近代化を図るための基本方針

 「酪農及び肉用牛生産の振興に関する法律」に基づき、12年4月に新たに定めら
れた「酪農及び肉用牛の近代化を図るための基本方針」においては、本事業にも
関連する重要な長期的目標が設定された(表2)。

牛肉の流通の合理化

 広域的な食肉処理施設の再編整備、効率的かつ衛生的な食肉処理・加工、産地
食肉処理施設における部分肉仕向割合の増加、高付加価値化を推進することとし
ており、その際の目標として、食肉処理施設の処理能力等の目標を設定している。

表2 食肉処理施設の1日当たりの処理能力および稼働率の目標
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 注:肥育牛 1 頭を肥育豚 4 頭で換算


事業実施に当たっての留意点等

 今後とも消費者の食品に対する安全面、衛生面に対する要求はますます強まっ
ていくと思われ、衛生面での施設整備も着実に進んでいくこととなる。本事業を
活用して施設を整備し、消費者ニーズにこたえた安全で衛生的な食肉の供給を推
進することは、大変重要なことと考えている。

 しかしながら、輸入食肉の増加、国内生産の伸び悩み等わが国畜産を取り巻く
状況は厳しく、施設整備に係る自己負担分が、今後の経営に大きな負担となり得
ることにも配慮した事業計画の立案が望まれる。

 すなわち、施設を整備したものの、集荷頭数の減少等により経営が悪化し、施
設使用料等の値上げを招くような事態は、生産者等への負担増ともなり、国際競
争力の強化を目的とし、食肉処理コストの一層の低減を図ることを旨とした本事
業にとっては、好ましいことではない。

 従って、安全性や衛生対策等もあり、施設整備等への投資はやむを得ないもの
の、集荷体制の強化や、徹底した経営内部の合理化等を図り、結果的には必要最
小限の投資で最大の効果となるような経営努力をお願いしたい。

 また、事業団の指定助成対象事業はすべて「補助金等に係る予算の執行の適正
化に関する法律」のまた、当該事業は、11年度以降「指定助成対象事業の実施に
ついて」の適用を受けているので、事業の実施に当たっては、補助条件、手続き
等を遵守し、適正に行っていただきたいことを併せてお願いする。


参考

事業の種類と内容等

(1)総合食肉流通施設整備事業
ア 内容

 肉畜の主要な生産地において当該生産圏における集出荷機能を促進・強化する
近代的な食肉流通施設の整備

イ 採択基準

 施設の1日当たりの処理能力がおおむね豚換算500頭以上の規模となること等

ウ 補助率

 1/3以内

(2) 食肉高付加価値化施設等整備事業

ア 内容

 畜産副生物(内臓、血液、骨、脂、原皮等)の有効活用を図るための施設の整
備および食肉の商品としての高付加価値化を図るための施設の設置

イ 採択基準

 施設を継続して利用できると認められる数量の畜産副生物または食肉の流通が
あること等

ウ 補助率

 1/3以内

(3)大都市基幹食肉物流施設整備事業

ア 内容

 消費地における需給調整機能の強化等を図るため、大都市またはその周辺にお
いて食肉の物流の拠点となる施設の設置

イ 採択基準

 施設の冷蔵能力がおおむね1万トン以上あること等

ウ 補助率

 1/3以内

(4)消費地食肉配送センター整備事業

ア 内容

 小売店等への合理的な配送体制の整備を図るため、消費地において加工機能を
有する物流施設の整備

イ 採択基準

 施設を継続して利用できると認められる数量の部分肉の流通があること等

ウ 補助率

 1/3以内
 
(5)鶏肉流通施設整備事業

ア 内容

 鶏肉の品質の向上および流通の合理化、近代化を図るための食鶏処理施設の整
備

イ 採択基準

 1日当たりの処理能力は、ブロイラーの施設整備にあっては、新設の場合、おお
むね8000羽以上、増設の場合は、おおむね4000羽以上、成鶏の施設にあっては、
おおむね4000羽以上であること等

ウ 補助率

 1/3以内

(6) 衛生管理向上等施設整備事業

ア 内容

 食肉等の衛生的処理、品質向上および生活環境の保全等を促進するため、肉畜
の主要な生産地における高度衛生処理機械施設等の整備

イ 採択基準

 施設の1日当たりの処理能力がおおむね豚換算500頭以上の規模となること等

ウ 補助率

 1/2以内


事業実施主体

(1)農業協同組合

(2)農業協同組合連合会

(3)中小企業等協同組合

(4)協業組合であって、中小企業団体の組織に関する法律(昭和32年法律第
   185)第5条に規定する中小企業者のみを組合員としているもの

(5)民法(明治29年法律89号)第34条の規定により設立した法人

(6)農業協同組合または農業協同組合連合会が株主となっている株式会社であ
   って、農業協同組合、農業協同組合連合会、地方公共団体または農畜産業
   振興事業団がその発行済株式(議決権のあるものに限る。)の総数の過半
   数を所有しているもの

(7)消費生活団体等

(8)農事組合法人

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