農畜産業振興事業団
理事長 山本 徹
平成13年を迎え、新春のお慶びを申し上げます。 昨年春には、今後10年間の農政のビジョンとも言える食料・農業・農村基本計 画が閣議決定されました。これによると、食肉の消費量は牛肉でかなり増加し、 豚肉、鶏肉が減少して、全体では27キログラムと3%減少、牛乳・乳製品は100キ ログラムと約9%の増加を見込んでいます(1人1年当たり供給純食料。9年度との 対比)。一方、生産努力目標として、肉類は6%増、生乳は15%増、飼料作物は 9%増を見込み、食料自給率目標は肉類で61%(9年度から5ポイントの増)、牛 乳・乳製品で75%(同4ポイントの増)となっています。 この計画に沿って、畜産の分野では、酪農及び肉用牛の近代化方針、飼料増産 推進計画等の策定、加工原料乳不足払い法の改正等が進められ、昨年11月にはす でに13年度における食肉および肉用子牛の行政価格、加工原料乳生産者補給金単 価等が決定され、併せて関連対策が措置されたところです。当事業団も、農林水 産省生産局のご指導を得ながら、畜産環境対策、担い手対策、自給飼料対策、経 営対策等、さらには家畜衛生・畜産物の安全対策や加工・流通・消費拡大対策等 に取り組んでまいる所存です。 わが国の畜産は、昨年、大きな試練を経験いたしました。ひとつは92年ぶりの 口蹄疫の発生です。早期に発見され、的確に処置されたことからすでに清浄国に 復帰を果たしましたが、多大な打撃を受けた経営があることも忘れてはなりませ ん。その原因が輸入稲わらであることが否定できないということから、国産の稲 わらや粗飼料を見直すきっかけにもなりました。 また、雪印乳業の食中毒事故の発生やEUにおける狂牛病の発生は、消費者に安 全・安心な畜産物を提供することの重要性を、また、迅速かつ正確な情報提供の 重要性を改めて強く認識させるものでした。 WTOの新ラウンドに向けて、わが国は、農業の多面的機能、食料安全保障の重 要性等を柱とする日本の提案をいち早く内外に示しています。これらはすなわち 新基本法の精神であります。基本計画において掲げた具体的な目標を達成し、新 しい食料・農業・農村の姿をこの21世紀に実現すること、一翼を担う畜産業が元 気よく発展することが極めて重要です。われわれも役職員一同、心を新たにして 努力してまいる所存であります。本年も、皆様方の格別のご指導とご協力を賜り ますようお願い申し上げます。