農林水産省 総合食料局 食料政策課 歌丸 恵理
農産物の短期の需給見通しについては、従来から、「農業観測」として農業者 その他の関係者に対して、農産物や農業資材の需給、価格等に関する情報を総合 的に供給し、農産物の生産、出荷および資材購入等に関する合理的な計画の樹立 に資することを目的に作成・公表されてきた。 一方、食料・農業・農村基本法においては、国民に対する食料の安定的な供給 について、「国内の農業生産の増大を図ることを基本として、これと輸入および 備蓄とを適切に組み合わせて行う」こととされている。国内の農業生産の増大を 図るためには、消費者や食品産業等の実需者の求めるものに即した農産物の供給 を行い得るよう、農業者やその他の関係者に対して関連する情報を提供していく とともに、安定的な輸入の確保や不測の事態への迅速な対応を図るためには、海 外における食料の生産・供給動向に関する情報を適切に収集・分析する必要があ る。 このため、消費者や食品産業等の実需者側の情報の収集・分析等需要動向の分 析を深めるなど、これまでの「農業観測」の拡充・強化を行い、今年度から「食 料需給見通し」として新たに作成・公表することとなった。ここでは、そのうち 6月7日に公表された牛肉、豚肉および牛乳・乳製品の需給見通しについて、その 概要を紹介する。なお、最近の需給動向や見通し等の全文については、農林水産 省ホームページをご覧いただきたい。 (http://www.maff.go.jp/sogo_shokuryo/jk/index.html) 増減・騰落幅は、対前年度比
わずか ± 2%台以内 や や ± 3〜 5%台 かなり ± 6〜15%台 かなりの程度 ± 6〜10%台 かなり大きく ±11〜15%台 大 幅 ±16%台以上 |
13年度の牛肉の1人当たり消費量は、わずかに増加すると見込まれる。 13年度の成牛枝肉生産量は、子牛の生産動向等からみて、ほぼ前年度並みに推 移すると見込まれる。また、13年度の牛肉の輸入量は、わずかに増加すると見込 まれる。 13年度の牛枝肉卸売価格(省令規格)は、ほぼ前年度並みに推移すると見込ま れる。 注:家計購入数量および供給純食料は1人1年当たりの数値である。 消 費 近年の牛肉の1人1年当たり消費量(供給純食料)は、7kg前後で推移してお り、11年度は前年度並みの7. 3kgとなった。12年度の購入数量を見ると、12年5月以降、13年1月を除き前年同 月を下回り、2.2%の減少となっている。 13年度の牛肉の家計消費量は、家計消費の低迷が継続するとみられることから、 わずかに減少すると見込まれる。一方、13年度の加工・外食等消費量は、焼き肉 や牛丼などの外食需要が堅調なことから、やや増加すると見込まれる。この結果、 13年度の牛肉の1人当たり消費量は、わずかに増加すると見込まれる。なお、相 対的に価格の安い豚肉や鶏肉を含む食肉間の代替の可能性等についても注視する 必要がある。 参考情報1 焼き肉市場は拡大傾向 最近における外食産業市場の動向を見ると、新規の出店を含めた全店ベースで の売上は、店舗数が増加していることから、総じて前年同月を上回って推移して いる。中でもファミリーレストランの焼き肉分野の売上高は前年同月を2ケタ台 で上回る月もみられるなど、焼き肉市場は拡大傾向にあり、牛肉の家計需要が減 少傾向にある一方で、外食需要は堅調であることがみてとれる。 ◇図:外食産業市場の動向(全店ベース、対前年同月比)◇ 供 給 11年度の成牛枝肉生産量は、肉専用種は前年度並みとなったものの、乳用種が 増加したことから、2.7%増の54万4,000トンとなった。12年度は肉専用種、乳用 種ともに減少し、全体では4.5%減の52万トンとなっている。 13年度の成牛枝肉生産量は、子牛の生産動向等からみて、ほぼ前年度並みに推 移すると見込まれる。 11年度の牛肉の輸入量は、前年度並みの97万5,000トン(枝肉換算)となった。 12年度は、国内生産の減少等を反映して冷蔵品、冷凍品ともにかなりの程度増加 し、全体では8.2%増の105万5,000トンとなっている。 13年度の牛肉の輸入量は、消費量がわずかに増加すると見込まれる中、国内生 産量が前年度並みに推移すると見込まれることから、わずかに増加すると見込ま れる。このうち、冷蔵品は、12年度がかなりの程度増加したことから前年度並み になると見込まれ、冷凍品は、堅調な加工・外食等需要が今後も継続すると見ら れることから、わずかないしやや増加すると見込まれる。なお、現地価格や為替 相場等の動向等によっては、輸入量を左右する輸入価格の変動もありうるため、 今後の動向を注視していく必要がある。 価 格 11年度の牛枝肉卸売価格は、1,058円/キログラム(省令規格の東京・大阪市 場加重平均)となった。12年度は、国内生産量の減少に加え、景気の低迷により 消費者の低価格志向が継続する中、12年7月からの原産国表示の義務付け等から 国産の低・中級規格への需要が増加しているとみられ、通年では7.0%高の1,132 円/kgとなっている。 13年度の牛枝肉卸売価格(省令規格)は、消費量がわずかに増加すると見込ま れるなか、国内生産量が前年度並みに推移すると見込まれるものの、家計消費の 低迷が継続するとみられることから、ほぼ前年度並みに推移すると見込まれる。 参考情報2 牛肉の主要輸入先国の需給動向 資料:USDA「Livestock and Poultry : World Markets and Trade, March 2001」、財務省「貿易統計」 注:1)12年は推計値(輸出量の「日本向け」を除く)。 2)数量は枝肉換算値である。 3)輸出量のうち「日本向け」は、財務省「貿易統計」 の日本の輸入量である。 4)消費量は1人1年当たり消費量。
13年度の豚肉の1人当たり消費量は、ほぼ前年度並みになると見込まれる。 13年度の豚枝肉生産量は、子取り用めす豚の飼養動向等から見て、わずかに減 少すると見込まれる。また、13年度の豚肉の輸入量は、ほぼ前年度並みになると 見込まれる。 13年度の豚枝肉卸売価格(省令規格)は、ほぼ前年度並みに推移すると見込ま れる。 注:家計購入数量及び供給純食料は1人1年当たりの数値である。 消 費 近年の豚肉の1人1年当たり消費量(供給純食料)は、10キログラム台で推移 しており、11年度は2.9%増の10.7キログラムとなった。12年度の購入数量を見る と、牛肉に比べ相対的に安価な豚肉に対する需要の高まりがみられ、12年7月以 降、13年2月を除き、前年同月を上回っている。 豚肉の家計消費量は、12年夏以降前年同月を上回っていたが、最近は下回る月 もみられるなどの動向から、13年度はほぼ前年度並みになると見込まれる。一方、 加工・外食等消費量は、過半を占めるハム・ソーセージ等の加工品需要が近年お おむね安定的に推移していることから、13年度はほぼ前年度並みになると見込ま れる。この結果、13年度の豚肉の1人当たり消費量は、ほぼ前年度並みになると 見込まれる。なお、食肉間の相対的な価格の変動に伴う牛肉や鶏肉といった他の 食肉との代替の可能性についても注視する必要がある。 参考情報3 豚肉の仕入構成 豚肉の国産品と輸入品についての仕入構成を見ると、専門店、スーパーともに 国産豚肉が主体となっているが、スーパーは専門店に比べ輸入品の割合が高くな っている。 ◇図:豚肉の仕入構成の推移(国産・輸入別)◇ 供 給 11年度の国内生産量は、1.3%減の127万5,000トンとなり、12年度は、子取り用 めす豚頭数が前年を上回る地域がみられたものの、全国的にはわずかに減少して いることから、1.6%減の125万5,000トンとなっている。 13年度の豚枝肉生産量は、子取り用めす豚の飼養頭数が全国的にはわずかに減 少していること等から、わずかに減少すると見込まれる。 また、11年度の豚肉の輸入量は冷蔵品、冷凍品ともに増加し、全体では19.6% 増の93万3,000トン(枝肉換算)となった。12年度は、冷蔵品が6.3%の増加とな っているものの、冷凍品が11年度末の在庫が多かったこと等から年度当初を中心 に減少し、2.9%の減少となっていることから、全体では0.3%減の93万トンとな っている。 13年度の輸入豚肉の需要量は、消費量が前年度並みになると見込まれ、国内生 産量がわずかに減少すると見込まれること等から、わずかに増加すると見込まれ るが、12年度末の在庫水準が高いことから、輸入量はほぼ前年度並みと見込まれ る。 参考情報4 豚肉の主要輸入先国別の需給・価格の動向 資料:USDA「Livestock and Poultry : World Markets and Trade, March 2001」、財務省「貿易統計」 注:1)12年は推計値(輸出量の「日本向け」を除く)。 2)数量は枝肉換算値である。 3)輸出量のうち「日本向け」は、財務省「貿易統計」 の日本の輸入量である。 4)消費量は1人1年当たり消費量。 価 格 12年度の豚枝肉卸売価格(省令規格)は、10月末に前年に引き続き生産者団体 や加工業者団体による調整保管が実施されたことから、11月以降は前年同月を上 回り、また1月および2月は寒波による発育不良や降雪による出荷遅延から出荷 頭数が減少し前年同月をかなり大きく上回り、期間全体では2.0%安の439円/キ ログラム(省令規格の東京・大阪市場の加重平均)となっている。 13年度の豚枝肉卸売価格(省令規格)は、消費量が前年度並みになると見込ま れるなかで、国内生産量がわずかに減少し、冷蔵品の輸入量がわずかに増加する と見込まれることからほぼ前年度並みに推移すると見込まれる。
13年度の牛乳・乳製品の1人当たり消費量は、前年度並みないしわずかに増加 すると見込まれる。このうち、飲用向けの消費量はほぼ前年度並みになると見込 まれ、乳製品向けの消費量はわずかに増加すると見込まれる。 13年度の生乳生産量は、ほぼ前年度並みになると見込まれる。 13年度の乳製品の輸入量(生乳換算)は、わずかに増加すると見込まれる。 注:供給純食料は1人1年当たりの数値である。 ◇図:飲用牛乳等の種類別生産量◇ 消 費 近年の牛乳・乳製品の1人1年当たり消費量(供給純食料:生乳換算)は、93 キログラム前後の横ばい傾向で推移している。12年度の飲用牛乳等向け処理量は 食中毒事故の原因となった加工乳等から生乳のみを使用した牛乳へ需要がシフト したこと、12年度夏が記録的な猛暑となったこと等から、1.3%の増加となって いる。 13年度の飲用向けの消費量は、12年6月末に発生した食中毒事故以降の牛乳の 増加傾向が当面継続すると見込まれるが、飲用牛乳等全体では少子化や他の飲料 との競合等により、大幅な増加は期待できないと考えられることから、前年度並 みになると見込まれる。また、13年度の乳製品向けの消費量は、チーズの需要が 堅調であること等により、わずかに増加すると見込まれる。これらの結果、13年 度の牛乳・乳製品の1人当たり消費量は、前年度並みないしわずかに増加すると 見込まれる。 供 給 11年度の生乳生産量は、前年度をわずかに下回り、851万3,000トンとなった。 12年度は、12年度の計画生産数量が11年度実績比100.2%とされたが、北海道お よび都府県ともに減少していることから1.1%減少し、841万7,000トンとなって いる。 13年度の生乳生産量は、生産者団体による自主的な計画生産の取り組み等から みて、ほぼ前年度並みになると見込まれる。また、用途別処理量については、飲 用牛乳等向け処理量は、飲用牛乳等の消費動向から前年度並みになると見込まれ る。優先的に仕向けられる飲用牛乳等向け処理量が前年度並みと見込まれること から、乳製品向け処理量についてもほぼ前年度並みになると見込まれる。 また、乳製品の輸入量はチーズを中心とした堅調な乳製品需要を背景に増加傾 向で推移しており、11年度は、5.0%増の368万2,000トン(生乳換算)、12年度は、 7.6%増の396万2,000トンとなっている。 13年度の乳製品の輸入量(生乳換算)は、乳製品向けの消費量がわずかに増加 すると見込まれるなか、国内生産の乳製品向け処理量がほぼ前年度並みになると 見込まれることから、チーズを中心にわずかに増加すると見込まれる。
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