◎地域便り
「2001年北海道酪農・畜産計画」について
北海道/農政部酪農畜産課
1 はじめに
今回の「2001年北海道酪農・畜産計画」は、昭和41年の第1次の「酪農近代化
計画」から数えると第8回目の計画となったが、今回は、21世紀初めの計画策定
ということ、また、「食料・農業・農村基本法」や「家畜排せつ物の管理の適正
化及び利用の促進に関する法律」の制定など、農政の基本的枠組みが大きく変化
している中での計画の策定となった。
このため、策定に当たっては、前回までの「酪農・肉用牛生産近代化計画」お
よび「家畜改良増殖計画」に加え、国の飼料増産運動と連携した「飼料増産計画」
を初めて策定するとともに、21世紀初めの北海道における酪農・畜産の基本的枠
組みを定めるなど、これまでにも増して、重要な計画策定となった。
さらに、策定途中において、本道の酪農・畜産をゆるがしかねないような、
「口蹄疫」「雪印乳業の食中毒事故」が発生するなど、酪農・畜産の分野におい
ても危機管理や安全性などが一層求められる中で、計画の策定に当たっては、こ
うした点にも配慮した。
表1 「2001年北海道酪農・畜産計画」の構成
2001年北海道酪農・畜産計画
北海道酪農・畜産の基本方向
北海道酪農・肉用牛生産近代化計画
北海道飼料増産推進計画
北海道家畜改良増殖計画
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2 計画の基本理念
基本理念のトップに掲げた「消費者に信頼されるクリーンで良質な畜産物の安
定供給」の持つ意味は、今後とも北海道がわが国最大の酪農・畜産地帯としての
役割を果たしていくという気概と、北海道産畜産物の安全性、クリーンなイメー
ジを意識したものである。
この良質な畜産物の安定供給をベースに、酪農・畜産が土地利用型農業の基軸
であるという本来の意義を再認識し、「土・草・家畜が調和した資源循環型酪農
・畜産」や「人と家畜と自然にやさしいゆとりある酪農・畜産経営」の確立を目
指していくこととしている。
3 畜種別の具体的な推進方向
(1)酪農
生乳生産量の目標(平成22年度)は、現状の約1.3倍の483万トンとしており、
本道の酪農がわが国の生乳生産基地としての役割を一層担うこととして計画して
いる。
しかしながら、地域においては酪農家戸数の減少による地域活力の低下が懸念
されていることから、地域振興と担い手の育成・確保を図るため、多様で効率的
な経営体の育成と経営支援組織の強化等に取り組むとともに、家畜ふん尿の有効
利用や放牧型酪農等、土・草・牛が調和した循環型酪農の確立を目指すこととし
ている。
具体的には、コアファーム(注1)等の大規模な法人経営や経営トライアル農
場(注2)等後継者不在農家の円滑な継承に取り組むとともに、ヘルパーやコン
トラクターなど地域支援システムを育成することとしている。
注1「コアファーム」・・・生乳生産を経営の主体とする大規模な法人経営体で、
生産の拡大のみならず、新規就農希望者の受入、または、地域におけるヘルパ
ーへの人的派遣、飼料生産等のコントラクター機能など、地域支援的機能も併
せ持った経営体
注2「経営トライアル農場」・・・後継者不在の高齢農家における実践研修等、
将来の経営実践に向けたトライアルを可能とするような農場。新規就農者が直
ちに本格的な営農を開始するのではなく、そうした農場での実践を経て、円滑
に営農をスタートできるようにしていくことをねらいとしている。
表2 酪農における基本的な方向
主な目標(H22)
生乳生産量483万トン(現状の1.3倍)
乳牛飼養頭数943千頭(現状の1.1倍)
1頭当たり乳量8,800kg(現状の1.2倍)
<参考:現状(H10)>
生乳生産量364万トン
乳牛飼養頭数878千頭
1頭当たり乳量7,390kg
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(2)肉用牛
北海道の肉用牛生産は、輸入牛肉や多様化する消費者ニーズ等に対応するため、
安全・良質という道産牛肉の強みを全面に打ち出すとともに、生産・流通コスト
の一層の削減に努め、安定的な供給を図っていくことが重要となっている。
このため、北海道の豊かな自給飼料基盤やほ場副産物の有効活用による資源循
環型肉用牛生産を推進するとともに、耕種農家や酪農家との連携による地域的な
取り組み体制を整備し、地域の特色を生かした安定的な肉用牛資源の増大や北海
道ブランドの確立を推進することとしている。
このような取り組みを通じた22年度の肉用牛飼養頭数目標は、現状の約1.5倍の
626千頭とする意欲的な数値を掲げた。
表3 肉用牛生産における基本的な方向
主な目標(H22)
肉用牛飼養頭数626千頭(現状の1.5倍)
乳用種 362千頭
肉専用種264千頭
<参考:現状(H10)>
肉用牛飼養頭数 414千頭
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(3)飼料
酪農・畜産経営の体質を一層強化し、安全で良質な畜産物を供給していくため
には、飼料自給率の向上と自給飼料の増産を通じ、生産コストの低減や飼料価格
の変動等経営外の要因への対応力の強化、さらには畜産環境問題への適切な対応
を図っていくことが重要である。
このため、本計画では、飼料作物作付面積の確保や生産性及び品質の向上、飼
料生産の組織化・外部化の推進を基本方向として、自給飼料基盤の強化を図ると
ともに、積極的に放牧を推進するなど、地域の実情に即した効果的な自給飼料の
増産に取り組むこととしている。
表4 飼料生産における基本的な方向
(1)主な目標(H22)
作付面積 681.1千ヘクタール
飼料自給率 67%
<参考:現状(H10)>
作付面積 619.0千ヘクタール
飼料自給率 54%
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(4)養豚
北海道の養豚は、道内豚肉需要量の約8割を供給できる出荷頭数を維持すると
ともに、豚肉の生産は、飼料等の生産資材の供給、食肉の処理加工、流通、販売
等、多くの関連産業を有している。また、養豚はたい肥の生産供給など循環型農
業の一翼も担っており、今後とも地域の耕種部門等との連携を強化しながら、本
道における肉豚生産基盤の維持を図る必要がある。
このため、今後一層の国際化の進展が見込まれる中で、輸入豚肉に対抗し得る
高品質な道産豚肉の生産と道内自給率の向上を目標に、飼養管理および経営管理
に優れた大規模専業経営、耕種部門と有機的に結び付いた中小複合経営、未利用
資源の有効利用などによる特徴ある養豚経営など、それぞれの経営体がその優位
性を発揮する多様な養豚経営の育成を推進することとしている。
表5 養豚における基本的な方向
(5)養鶏
北海道の採卵養鶏は、道内生産量の約9割を占める大規模経営(成鶏めす羽数
5万羽以上)を主体に、地域においては、特殊卵の生産や地場消費向けの中小規
模経営も営まれ、道内鶏卵需要のほぼ全量を供給する自給自足的生産を維持して
いる。
また、ブロイラー養鶏は、企業経営を主体に、全国出荷羽数の4%を占める生
産盤を有し、全国屈指の大規模経営が展開されており、食鳥処理場と一体となっ
た地域産業としての発展が期待されている。
しかし、鶏卵・鶏肉の需要が、近年、横ばい基調に移行する中で、環境保全対
策や衛生対策、さらには、消費者ニーズ等に対応した、より一層安全で良質な鶏
卵・鶏肉の生産により消費の維持拡大を図る必要がある。
このため、需要に即した鶏卵・鶏肉の計画的生産の推進を図るとともに、消費
者の視点に立脚した鶏卵・鶏肉の安全性の向上やより一層高品質な鶏卵・鶏肉を
安定的に供給できる養鶏の確立を推進することとしている。
表6 養鶏における基本的な方向
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