栃木県/豊田知紀
那須高原のリゾートへと向かうなだらかな丘陵地帯の傍らに、ミルクアイラン ドの看板とそれを取り囲む四季の花々に彩られたロックガーデンが往来する人々 の目を楽しませている。時折、花々の美しさに誘われて家族連れのハイカーなど が足をとめ、記念写真の撮影や清掃の行き届いた牧場内を散策し、初めて間近に 見る牛の大きさに驚く子供達の歓喜の声が場内いっぱいに広がる。ここは、栃木 県那須町で酪農を営む「上の原畜産組合」組合長今耕一氏(51歳)の牧場である。 組合が所在する大同地区は、昭和22年から入植が進んだ開拓地域であり、現在、 20戸の酪農家が経営を営んでいる。同地区は、那須高原リゾートの入り口に当た るため、畜産農家は、環境美化と環境保全に積極的に取り組んでいる地域である。 上の原畜産組合は、平成5年に飼料作物栽培の共同化を図るため、近隣の酪農 家3戸で設立され、以後、土づくりや環境美化、畜舎周辺環境改善整備等を積極 的に実践している。 一般的には、マイナス面にとらえられがちな家畜ふん尿処理についても、完熟 たい肥の生産と利用を資源循環型農業に不可欠なものとして位置付け、酪農を軸 とした循環型農業を目指した取り組みが行われている。組合で生産されたたい肥 は、地域内の耕種農家等へも供給され、たい肥が完熟しているので雑草等の発生 がないと利用者から大変喜ばれている。 また、酪農業に対する理解やイメージアップを図るため、視察を積極的に受け 入れており、さらに、小・中学生の農業体験学習の場として牧場を開放し、直接 家畜に触れることのできる搾乳体験等を通じ、酪農のすばらしさを伝える取り組 みも行っている。 組合では、消費者との関わりを密接にしたいと、共同で乳製品の加工販売施設 「アイス工房ももい」を9年に整備し、アイスクリームの加工販売も行っている。 原材料は地場産のものを利用するといったこだわりで、アイスクリームを食した 消費者からは、「コクがあり、滑らかで舌触りもよい」と好評で、その味を求め て再度来店する客も多い。 今後は、現在の乳製品加工販売施設に食肉加工販売施設を併設し、家畜とふれ あえる小規模な公園を整備する計画である。消費者や地域と密接なつながりを保 ちつつ、多角的な経営を目指す上の原畜産組合の取り組みは続いている。
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【乳製品の加工販売施設「アイ ス工房 ももい」】 |
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【酪農に対するイメージアップ に役立っている小中学生の視察】 |