熊本県/犬飼 直紀
熊本県菊池郡旭志村は、熊本県北部に位置する中山間地であり、県下最大の酪 農村である。旭志村における平成11年度の家畜飼養頭数は、乳牛4,891頭、肉用 牛繁殖雌牛309頭、肥育牛等23,766頭、また、飼料作付け延べ面積は、畑656ヘク タール、水田180ヘクタールである。 旭志村を含めた菊池管内の基盤整備率は、約80%となっており、耕種部門にお いても利用し易いため、購入はもとより借地による経営農地の拡大が厳しい状況 にある。 このような中、旭志村の坂本賢也氏を代表とするグループは、コーンサイレー ジ給与体系による土地に立脚した安心・安全な生乳の生産に努力してきた結果、 グループ全体の粗飼料自給率は、70〜80%に達している。 一方、コープこうべは、10年以上前から飼料作物、家畜管理、環境対策などに 対する独自の考え方を持ち、「フードプラン」として安心できる食品の供給元を 求めて、11年に旭志村を訪れた。 これが契機となり、両者間での話し合いと現地調査が重ねられた結果、次の事 項などを条件として、合意が成立した。 ・粗飼料の減農薬栽培 ・子牛および乾乳牛の運動 ・動物用医薬の抑制 ・薬剤を抑制した畜舎の衛生管理 ・家畜排泄物リサイクルによる環境対策 ・Non−GMO(非遺伝子組み換え作物)の使用 その後、グループは、「超高品質生乳生産協議会」を設立し、12年産から完全 無農薬を目標にした粗飼料生産を開始するとともに、13年4月からコープこうべ にプレミアム乳価で生乳を供給している。 こうした取り組みの背景には、粗飼料生産を受け持つコントラクター組織やN on−GMO飼料を供給する熊本県酪あるいはJA菊池の協力が不可欠であったが、 幸い、菊池管内には6つのコントラクター組織が活動しているし、Non−GMOに よる生乳生産についても以前から別のグループが実施しているため、そのノウハ ウに基づいて熊本県酪連が開発した専用の濃厚飼料「エコこうべ2号」とサプリ メント「パワーこうべ」を使用することができた。 現在は、1日当たり9トン程度を供給しており、60トンまでの供給量について は充分ゆとりがあるが、従来の濃厚飼料と異なるため、今年の夏場の食い込み量 への影響が課題となっている。 消費者ニーズ・安全安心・環境がキーワードのこのような取り組みは、昨年制 定された食料・農業・農村基本法にも沿っており、先端的な取り組みとして、今 後の発展が大いに期待される。
【バンカーサイロ】 |
|
【刈り取り】 |