神奈川県/堀 与志美
平塚市岡崎にある有限会社ぴゅあポーク(安西肇社長 61歳)は、「自然との 共生」を理念に、養豚と無添加ハム・ソーセージの生産で20年の歴史を持つ会社 だ。また、うまい豚と定評のある中ヨークシャー種の復活や無添加ハムの製造等、 常に新しいものにチャレンジし続ける会社でもある。 平成10年、新たなチャレンジが始まった。食品残さ(食品生ごみ)の餌化計画 である。元々神奈川県は残飯養豚の盛んなところである。しかし残飯養豚は飼料 効率や豚肉の品質の問題から輸入穀物による配合飼料に押され、現在はすっかり 廃れてしまっている。ところが、(有)ぴゅあポークは「食品残さを発酵させ、 配合飼料以上の品質のえさを作る。発酵によって生ゴミは輸入穀物以上の資源と なる。安全でおいしい豚肉も得られる。養豚業は都会には絶対になくてはならな い産業になる。」と行政や研究機関へ事業化に向け精力的な働きかけを行って来 た。 平成12年、「食品残さえさ化計画」は急激に動き始めた。同社の熱意は、トー タルウェルネス研究所奈良誠博士、神奈川県畜産研究所矢後啓司博士、日本大学 動物栄養学研究室阿部亮教授らそうそうたるメンバーとの共同研究プロジェクト 「肉豚肥育100%給餌可能な残さ発酵飼料の開発とその実証」となった。この共 同研究は財団法人食品産業センターの委託研究事業として行われた。この研究事 業の重要な特徴は、畜産業を営む一企業(有)ぴゅあポークが中核となっており、 えさを使うものの立場が貫かれたことであった。「残さ発酵餌のみで生後6カ月 で100キログラムに育成。肉質も配合飼料で育った豚と変わらないもの」と言う 技術目標を見ても明らかである。またこの共同実験研究は、食品残渣発酵飼料製 造、肥育試験、枝肉・肉質調査を軸としてえさの栄養価、消化試験、ふんのにお いにまで至る総合研究であった。 実験結果は当初の予想を上回る結果となって現れた。 発酵飼料による生育は6カ月で100キログラムになることが実証され、配合飼 料よりも少ないえさで育った。肉は少しゆるめという欠点を除けば、赤身部分が 多く、脂肪には頭を良くするといわれるDHAが多く含まれていた。日本大学での 食味試験でも配合飼料で育てた肉と同程度の評価を受けた。さらに、環境負荷物 質のリンの消化率が非常に高いえさであるというおまけまで付いてきた。 しかし(有)ぴゅあポークは「残さ発酵飼料を使用した肉を作り、それをいか に売るかが重要。欠点を補って余りあるメリットを理解し購入してくれる相手を 見つける必要がある。」という。予想外の好結果を得たとはいえ課題は残される。 13年度中には残さ発酵飼料製造の本プラントの稼働も予定しているという。さら なるチャレンジにエールを送りたい。