山口県/企画情報部
株式会社砂本養鶏の直売店には平日でも60〜70人、休日ともなると100人を超 す消費者が卵を買いにやってくる。 JR山陽本線の光駅からタクシーで10分足らず。「たまごらんどへ…」と行き先 を告げると「すーちゃんちの…ですね」と念を押された。光市とその周辺の住民 からは「新鮮でおいしい鶏卵が手に入る」と、"すーちゃんちのたまごらんど"は すっかりおなじみだ。 飼養の主体はブラウン種3万6,000羽とネラ種3,200羽。小規模ながらアローカ ナと烏骨鶏もいる。 ブラウン種を収容する鶏舎はウインドーレスのケージ飼いになっているが、特 徴的なのは平均の2倍近いスペースでゆったりとした環境を保っていること。 また、ネラ種は平飼いされており、鶏舎は直売店のすぐ横という、消費者がい つでものぞける場所で飼われている。 「大事なのは卵を高く売ることよりも、自然により近い状態で産ませること」。 代表取締役の砂本光治さん(52歳)は消費者に安心して食べてもらうことこそが 「付加価値」と考える。 飼料の主体を占めるトウモロコシについては、非遺伝子組み換えで、ポスト・ ハーベスト・フリーが確認されなければ使わない。また卵自体についても8〜1 4カ月齢の若鶏が産んだものだけに限定している。これらを砂本さんは「こだわ り」というが、「アトピー症に苦しむ子供さんでも食べられるような卵の供給」 こそが目指すところである。 経営を法人化したのは昭和43年10月。当時は大手製薬メーカーへのワクチン卵 の供給が主力だった。90年代に入ってワクチン行政が変わり、砂本養鶏も大きな 転換を強いられる。 それまでも経済農協連等に原卵として出荷していたが、新たな販売ルートの開 拓を迫られたのである。試行錯誤の末、結論として得たのは消費者に喜ばれる鶏 卵の生産と販売。平成6年、現在の地に「すーちゃんちのたまごらんど」を、さ らに8年には直売店もオープンさせた。 直売店においては1セット6個入りの卵が200〜260円で販売されているほか、 卵黄油、カステラ、プリン、チキン・ウィンナー、手作りパン等も扱われている。 春秋の2度のイベントには毎回1,000人を超える消費者が参加する。音楽コンサ ートが行われる会場では有機質栽培による野菜の直売会も開かれる。近隣農家の 婦人で構成する「ラディッシュ・レディース」が持ち寄る野菜で、この栽培で使 用される鶏ふんは「すーちゃんちのたまごらんど」からのものだ。地域との連携 は森林組合との間にも行われており、近辺の遊歩道化も構想されている。
【すーちゃんちのたまごランド前で 砂本光治さん(左)と次男・英世さん】 |
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【鶏舎内の模様】 |