◎地域便り


肥育牛5,000頭経営のふん尿処理も楽々と

広島県/仙波 豊三


 広島県東部、福山市の(株)なかやま牧場(社長中山伯夫氏)は、肥育経営を
始めた当初は、草地を開発して土地還元によるふん尿処理をする方針であった。
しかし、肥育経営の採算上、粗飼料生産に労力をかけることが難しく、草地によ
るたい肥の消化能力も限界となり、次第に野積みになっていった。相当量を土地
還元するものの堆積量は増える一方で、公害問題にもなりかけた。

 飼育頭数が1,000頭を超えた頃からかくはんはっ酵槽による処理を始めた。

 はっ酵槽は、頭数規模が拡大するに伴い拡張し、当初、昭和60年に2連を整備、
平成7年に2連追加、さらに飼養頭数が5,000頭を超した11年に2連追加し、計6連と
なった。

 6連が整備、稼働を始めて1年半を経過した現在、処理能力にだいぶ余裕が生じ、
うち2連については、近くの肥育農家(200頭規模)3戸が共同で利用するように
なった。

 かくはんはっ酵槽の1連の規模は、幅6メートル、深さ1.2メートル、長さ80メ
ートルで、1度に20トン程度の生ふんが投入でき、かくはんしながら移動し、60
日程度で製品化する。

 敷料は、おがくずと炭粉(製紙工場の樹皮の炭粉)を9:1に混ぜたもので、臭
気がほとんどなく、水分調整も良好で、はっ酵が極めて効率的に行われている。
これまで1回のはっ酵で出荷していたが、全量を出荷できないこともあった。し
かし、約1年前から滞貨したものを再度生ふんに混入して再はっ酵させた結果、
製品量が減量し、品質も向上した。今では滞貨することもなくなり、余裕をもっ
てふん尿処理ができる体制が確立したといえる。

 当牧場は、12年に創立30周年という大節を迎え、経営的にも安定期に入り、唯
一の悩みであったふん尿処理問題を克服した。

 ふん尿処理施設や運搬車両(ほとんど中古対応)の設備に要した費用は、総額
2億5,000万円に及び、経営にとって大きい投資であるが、その償却はおおむねた
い肥の売上げでまかない、専従職員1人分の給料だけ、肥育部門の支援を受ける
状態である。今後は、たい肥部門における独立採算が夢である。
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【かくはん機稼動中】

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【たい肥排出口】

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