北海道/企画情報部
新冠郡新冠町における町づくりの中心概念はレコード(Re=再生、Cord=心)。 今日ではコンパクト・ディスクにその地位を取って替わられたレコードだが、ア ナログ再生による優れた音質はオーディオ・ファンから根強い支持を得ている。 そんな忘れ去れようとしている本物の良さ、古き良きものに、もう一度眼を向け 再発掘し、町全体の元気を取り戻そうとする象徴がレコードという訳だ。 昭和30年代半ばまで同町では、農業といえば競走馬と酪農がすべてだった。現 在でもそのすう勢に大きな変わりはなく、平成11年度の農業粗生産高90億円のう ち、軽種馬だけで61億円を占め、酪農も14億円と健闘している。 肉牛生産が始まったのは昭和40年代半ばにコメの生産調整が開始されてからで ある。水稲+αの複合経営が推進され、その複合アイテムとして取り上げられた。 島根県から導入した黒毛和牛の雌牛を出発点として、肉牛生産の土台は着々と築 き上げられていく。 ただし、それは繁殖経営に限ったこと。新しい分野として取り組む農家にとっ て、肥育経営は代金回収に至るまでの期間的長さから魅力に乏しく、またリスク 管理面からもちゅうちょされがちだった。その点、素牛ならば出産から出荷まで がせいぜい8〜10カ月。こうして新冠町における肉牛生産は繁殖経営に特化して いった。 平成12年度の実績は42戸の繁殖家から434頭の素牛を出荷。白老市場での新冠 の素牛は道内で1番と評価も高く、平均38万3,000円で落札されている。 しかし、将来ともに繁殖経営の優位性を確保していくためには「牛の生涯にわ たる能力指数を把握することが必要」となる。そこで新たなステップとして設定 されたのが肥育経営の振興である。これを通じて蓄積されるデータで「育種基地 としての実力を培い」、肉牛生産全体の強化を図ろうとしたのだ。 畜産再編総合対策事業(肉用牛生産効率化対策事業)の補助を受けて、東川地 区に町有肥育牛舎をオープン。ここから今年度出荷された18頭の町有牛のうち、 8頭がA5、4頭がA4の格付けを得ている。 町内における肥育家は現在7戸。昨年度70頭を出荷し、1頭当たりの平均価格 は70万5,000円だった。肥育経営が繁殖経営同様に盛んとなり、「新冠牛」が食 肉市場を席巻する日もそう遠くはない。
【新冠町東川地区の町営牧野】 |
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【町有肥育牛舎で肥育される黒毛和牛】 |