福井県/企画情報部
坂井郡三国町で農業生産法人有限会社こどう養鶏農場を経営する古道豊さん (63歳)が養鶏に取り組もうと決心したのは昭和30年代。先進地愛知県豊橋市 を視察した時だ。 それまでは水田2ヘクタールを擁する有畜経営の稲作農家だった。畜ふんは貯 蔵され、農地に還元されていた。今でこそ資源リサイクル型農業としゃれた名前 で呼ばれているが、当時の農家としては当たり前のこと。家畜を持つこと自体が 農家の実力の証でもあった。 「選択的拡大」に胸を躍らせる農業青年古道さんに、父からプレゼントされた のは20メートルの鶏舎。こうして200羽の平飼いから町内で初の本格的採卵養鶏 がスタートした。 現在所有する養鶏場は2つ。イン・ラインシステム(注:鶏卵自動搬送システ ム)を完備する陣ヶ岡本場で4万羽、さらに本社近くの油屋分場で1万羽を飼養 している。鶏種はハイライン80%、ソニア15%、ポリスブラウン5%等の構成。 合計5万羽は「ちょうど良い規模」で、年間800トンの鶏卵が出荷される。 全体の30%がスーパー、八百屋、レストラン、そして三国温泉郷の旅館等に仕 向けられており、一部は独自ブランド「越前路たまご」として納入されている。 ちなみにブランド名は、印刷屋の間違いから生まれたもの。ラベル等を越前“地” たまごで注文した積もりだったが、なぜか違っていた。しかし「越前路たまご」 の方が気に入ったので、そのままイタダキにしたとのことである。 同社のセールス・ポイントはイン・ラインシステムによる健康卵の生産・直送。 今日生産されれば明日店頭へと、とにかく新鮮な卵を消費者に届けることに専心 している。 衛生管理面ではオール・イン/オール・アウトを徹底し、サルモネラ対策で乳 酸菌の部類は活用するにしても、無投薬を基本に、抗生物質は絶対に使用しない。 環境対策でのユニークなのは自分の経営を取り巻く環境を整備するという視点。 既に発酵・たい肥舎を設置しているが、1戸だけで環境問題を考えようとはしな い。一例が農家4戸で組織した「三国町活性堆肥生産組合」で、町内1,000ヘク タール規模の畑を視野に入れながら、休耕地も利用してタマネギ、ブロッコリー 等の野菜栽培の集団化にも力を入れている。近く、子供向けに展示鶏場も設ける 意向で、社会還元にも意欲的だ。
【油屋分場での古道豊さん】 |
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【イン・ラインシステムを完備した陣ヶ岡】 |