◎地域便り


環境対策投資は必要経費

滋賀県/企画情報部


 農業生産法人有限会社成田牧場がある甲賀郡甲南町へはJR草津線で草津市から
30分足らず。東西を山に挟まれた一帯は雷の通り道で、信号機に落ちた途端に列
車はストップ。だが乗客は驚いた様子もなく平然としている。

 代表取締役の成田紘一郎さん(60歳)がこの地に乳肉複合経営の牧場を開いた
のは14年前。19歳の時から名古屋市緑区内で酪農に従事してきたが、市街地緑化
構想による立ち退きを強いられ、移転してきた。

 現在の経営規模は搾乳牛120頭、育成牛100頭、それに乾乳中が30頭。
乳雄、F1等の肉牛も150頭飼養している。牧場は2カ所で合計26ヘクタールの広
さ。このうちの20ヘクタールが牧草地で、これらをカバーするスタッフは役員4
人、従業員2人。そのほか実習生6人が手助けしている。

 1頭当たりの搾乳量は平均で年間8,500キログラム。「食料を生産している自
覚の下に、この牛乳ならばと評価を受けるような、乳質に自信が持てる生乳供給
を心掛けてきた」。従って飼養頭数の拡大に無理することのない経営が続けられ
ている。

 移転して14年の時が経過したが、「すっかり地元に溶け込むことができている」。
地域の理解、消費者との交流を前向きに進めてきた成果だが、それは事業を通じ
ても行われている。それがレストランの経営だ。F1牛のバーベキューを中心とす
るメニューで1人前が3,000円。少々高いような気がするが、「肉は見蘭牛のロ
ースですよ」と力が入る。そのルーツは山口県見島の見島牛。国の天然記念物に
も指定されている良血牛に由来し、これを導入するために成田さんはわざわざ見
島にまで足を運んだという。休日ともなると京阪から自動車でやってくる観光客
が、1日、牧草地を下に見るレストランでくつろぎの時を過ごす。年間の来場者
は1,500人を数え、この部門単独で黒字を計上しているのが成田さんの自慢でも
ある。滋賀県は琵琶湖を抱えるだけに環境対策は畜産経営者にとっても細心の注
意を要する課題だ。地下や河川を通って汚水が流れ込んだのでは、県のシンボル
に傷がつく。このため2年前にコンポスト3基、脱臭漕等を完備したが、これら
への投資は「経営を継続していくための必要経費」。「ふん尿を制する者が酪農
を制する」のであり、処理可能な規模でこれからも経営を続けていこうと考えて
いる。
【2年前に設置したコンポストの前で】


    
【牛舎内で】

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