牛海綿状脳症(BSE)の経過
9月10日、千葉県白井市の酪農家で飼育されていた乳用牛1頭について、BS
Eの疑いがある旨が農林水産省から公表された。また、確定診断のため、当該牛
の材料と国内検査結果が英国獣医研究所に送付された。
9月18日、平成8年4月から行政指導されていた肉骨粉等を牛用飼料に使用し
ない旨を、「飼料及び飼料添加物の成分規格等に関する省令の一部改正」により、
法的に義務化した。
9月19日、厚生労働省はスクリーニング検査等の実施を決定。これにより30ヵ
月齢以上の牛全頭および24ヵ月齢以上の神経症状等を呈する牛について全国の食
肉衛生検査所において10月下旬頃に検査開始することを公表した。
同日、農林水産省は以下の対策を講じることを公表した。
@牛肉の安全性を確保するための緊急対策
A厚生労働省による検査体制が整うまでの計画的な出荷推進
B国産牛肉の消費減退、出荷繰延によるによる影響の緩和(利子助成)
C肉骨粉の適正な処理の推進
D擬似患畜と関連がある牛に対する措置
E国産牛肉等の安全性のPR
9月21日、英国獣医研究所からから回答があり、当該牛がBSEであると確定診
断された。このことから、家畜伝染病予防法上当該牛は患畜として処理されるこ
ととなった。
9月27日、厚生労働省は、と畜場での特定危険部位の除去および焼却を都道府
県に要請した。
10月1日、10月4日から当分の間、全ての国から肉骨粉の輸入を一時停止する
とともに、国内産肉骨粉等の製造・販売の一時停止を要請した。
なお、期間満了後の取り扱いについては専門家や消費者等から構成されるBSE
対策検討会において検討することとされた。
10月5日、厚生労働省は食品の製造者及び加工者に対し、牛由来原材料を使用
して製造又は加工された食品の安全性を確保するため、牛由来原材料の点検と結
果の報告を指導するとともに、特定危険部位の使用又は混入が認められた場合に
は、原材料の変更及び当該食品の販売の自粛を求めた。
10月9日、厚生労働省はBSEスクリーニング検査の対象を拡大し、30ヵ月未満
の牛を含めたすべての牛を検査対象にすることにした。
本件に関する最新情報は、農林水産省ホームページhttp://
www.maff.go.jpあるいは、畜産情報ネットワークhttp://www.
lin.go.jpをご覧下さい。
注1)10月1日、農林水産省は当分の間、
飼料用・肥料用の国内産肉骨粉等の製
造・販売等を一時停止した。このこと
から、肉骨粉等がすべての家畜の飼料
用に出回ることがなくなった。
注2)10月9日、厚生労働省はBSEス
クリーニング検査の対象を拡大し、3
0ヶ月齢未満の牛も含めてすべての牛
を検査対象にすることにした。
牛肉卸売価格の推移
9月10日の国内初のBSE擬似患畜の発表後、牛の卸売り価格はおおむね下がり
続けている。特に9月22日の英国での検査結果(BSE陽性)の公表後、次の市場
価格9月25日の東京省令は、前回9月22日に比べ大幅に値下がりした。9月10日
の卸売価格と比べると、ほぼ6割となった(図1)。
和牛についても値を下げ、9月25日の価格を前回価格と比べると、かなり大き
く下がった。また9月10日の価格と比べるとほぼ8割となった(図2)。
と畜頭数について見ると、BSE検査体制ができるまでの間の30ヵ月齢以上の牛
について、出荷の停止やと畜場におけると殺解体の停止が強力に指導されたこと
から、9月19日以降、おおむね減少傾向で推移している(図3)。
豚肉卸売価格、BSEの影響から一時急騰
豚肉の卸売価格には季節変動がある。5〜8月にかけては生産量が減少するこ
とから価格は上昇し、10〜12月にかけては肥育しやすい気候になることから出荷
頭数が増加するため価格は下落する。しかし、この時節に思わぬ事態で価格は上
昇した。
東京食肉市場の豚肉卸売価格を見ると、7月をピークに低下し、8月、9月は、
出荷頭数の増加からほぼ前年を下回って推移した。しかし、BSEの影響で学校給
食、スーパーや外食産業等を中心に牛肉の消費が落ち込み、豚肉等の需要が高ま
ったことから9月27日の411円/Kgから徐々に値を上げ、10月4日には今年度最
高値の638円/Kgとなった。
しかし、その後は急落し、10月2日には422円/Kgとなったものの前年同期に
比べ高い水準となっている(図4)。
鶏肉の卸売価格の推移
鶏肉の卸売価格は中国からの輸入の一時停止措置から輸入量が減少し、出回り
量も減少傾向で推移したことから、むね肉は前年を上回って推移している。もも
肉も6月を底に回復している。中国からの輸入の一時停止は8月7日に一部解除
されたが、その後も中国の輸出検疫体制と農場の管理体制の強化により中国から
の輸入量は回復していない。最近の卸売価格を農林水産省の食鳥市況情報で見る
と、東京もも肉中値(1キログラム当たり)は9月1日に552円であったものが、
9月29日には613円と61円もの値上がりとなっている。東京むね肉中値(1キロ
グラム当たり)も9月1日272円であったものが、9月29日には281円と上昇傾
向にある。他の主要都市においても同様の傾向で、中国からの輸入解禁により9
月以降の国産鶏肉の価格の低下が心配されていたところであるが、BSEの影響で
牛肉の消費が落ち込み、鶏肉需要が強まったものとみられる。農林水産省は13年
10月4日からすべての国からの肉骨粉等の輸入を一時停止するとともに、国内産
を含めた飼料用・肥料用の肉骨粉等および肉骨粉等を含む飼料・肥料の製造およ
び販売を一時停止すると発表した。ブロイラー飼料としては、肉骨粉等に替わる
たんぱく質飼料として、大豆油かす、綿実油かす等があるが、成分が異なること
から、成長が遅れ、出荷日齢が遅れるか、出荷重量が減少するとみられている
(図5)。
乳用牛飼養頭数は1.9%減
農林水産省が公表した「乳用牛及び肉用牛の飼養動向」によると、平成13年8
月1日現在の乳用牛飼養頭数は北海道、都府県とも減少し、171万9千頭(▲1.9
%)と前年同期に比べ3万4千頭減少した。
「経産牛」は、北海道で1.3%減、都府県では3.0%減で、全国では112万2千頭
(▲2.3%)となった。
「未経産牛」は北海道が36万7千頭と1.7%減、都府県が23万1千頭で0.6%減
と、いずれも減少し、全国で59万8千頭(▲1.3%)となった(図6)。
年齢別飼養動向を見ると、「3歳から8歳」が都府県では7.1%減と大きく落
ち込み、北海道では1.4%減、合計で4.7%減の88万4千頭となった(図7)。
13年2月から7月の「分娩頭数」は46万5千頭と前年同期を3.6%下回った。
このうち「乳用向けめす」は14万6千頭(2.8%)、「乳用種おす」は16万4
千頭(2.5%)と前年同期を上回ったが、「交雑種(F1)」は14万5千頭と前年
同期を14.7%下回った。
10〜12月期配合飼料価格、引き上げ
全農は、10〜12月期配合飼料供給価格を全国全畜種総平均トン当たり約700円
の値上げを決定した(9/21)。専門農協系および商系もそれぞれ450円引き上げ
た。
<最近の原料コスト動向等>
@ とうもろこしのシカゴ相場は、降雨不足による米国生産量の減少が懸念され
ること、および、輸出需要が好調なことから上昇している。米国農務省の今後
の見通しでは、2002年8月の期末在庫率の減少を見込んでいること、また、米
国内需が依然として史上最高レベルを維持していること等から価格は強含みに
推移すると予測している。
A 副原料の大豆かす価格は、降雨不足による米国産大豆の作柄悪化と世界的な
飼料需給の増により上昇を、魚粉価格も需給のひっ迫から上昇を見込んでいる
(図8)。
B 為替レートは、米国多発テロ事件後は円高には転じたが、長期的には円安傾
向に推移するものと見込まれる。
<補てんの実施>
配合飼料価格安定制度による通常補てん金1,450円/トンが交付される。
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