◎地域便り


北海道黒毛和種改良基本要綱について

北海道/農政部酪農畜産課


 平成13年3月に公表された北海道家畜改良増殖計画をうけ、北海道の黒毛和種
改良の推進方針として「北海道黒毛和種改良基本要綱」が、13年6月道内関係機
関・団体、生産者組織による協議を経て改正されたので、その概要を紹介する。

T 基本的な考え方

 北海道の黒毛和種経営は、肥育素牛の生産販売が主体であったことから、肥育
保留割合が先進県に比べて低く、育種価判明率も低い状況にある。

 しかしながら、近年本道においては、肥育成績の収集をはじめとする黒毛和種
の生産改良情報の活用体制が一定程度整備されたことから、引き続き育種価評価
の推進と活用に取り組む必要がある。

 一方、北海道基幹種雄牛育成事業においては「深晴波」号が選抜供用され、道
内繁殖雌牛群改良に対する成果が期待される。

 本道の黒毛和種の改良にあっては、肉質・枝肉重量の向上はもとより、繁殖・
ほ育能力の改良や放牧適性などの粗飼料利用性の向上も重要な課題と位置付けら
れる。

 そのため、産肉能力及び繁殖・ほ育能力などの種牛能力に重点をおいた改良を
推進し、「優良牛群」の育成・確保による産地確立を図るものとする。


U 改良の目標

1 産肉能力

 産肉能力の目標は次のとおりとし、「脂肪交雑」、「ロース 芯面積」、「ば
らの厚さ」および「枝肉重量」を重点として改良を進める。

【産肉能力(去勢肥育牛)の目標数値】

 注:「現況」は北海道酪農畜産協会調べ。「全和」は全国和牛登録協会の略。

2 体型

 体型の目標は、次のとおりとし、道内の粗飼料資源を生かした子牛生産に資す
るため体積雄大かつ繁殖能力に優れる牛群の造成を目標として、「体躯の幅と伸
び」および「後駆」の充実を重点として改良を進める。

【体型の目標数値(成熟時の繁殖雌牛)】

 注:「現況」は北海道酪農畜産協会調べ。「全和」は全国和牛登録協会の略。


V 改良の推進方向および推進体制

 道内における黒毛和種の経済能力の向上を的確に推進するため、受精卵移植技
術や育種価評価値(産肉能力、繁殖能力、ほ育能力)、産肉能力検定等の遺伝情
報を活用し、本道の基幹となる優良な種雄牛や雌牛の育成確保を進める。

 なお、本道黒毛和種の改良推進に当たっては、道内関係機関・団体が意思統一
を図り、強固な連携の下、この推進に努めるものとする。

1 優良種雄牛(精液)の確保

(1)優良精液の確保

 優良繁殖雌牛群の育成・確保を目的として、後代検定を終了した種雄牛のなか
から、次により推奨種雄牛を選定し、その精液確保に努める。

(推奨種雄牛の選定基準)

 推奨種雄牛は産肉能力後代検定成績、または育種価評価値が基準を満たすもの
の中から、遺伝的不良形質を保因していないこととして@精液の供給能力、A精
液性状、B血統、C市場性―などを総合的に勘案して選定する。

○産肉能力後代検定成績

1日当たり増体量(DG)0.8以上、脂肪交雑基準(BMS.No)8以上

○育種価評価値

枝肉重量+0.67σ以上、脂肪交雑基準(BMS)+0.67σ以上

*今後、公表される種牛能力の育種価評価値を上記基準に加える方向で検討する

(2)優良種雄牛の作出

 道は、道立畜産試験場において、道内の育種価上位の雌牛に、優良精液を交配
し直接検定及び全兄弟検定並びに産肉能力後代検定を実施し、その結果により選
抜を進め、優良な種雄牛を作出する。

 同時に、精液・受精卵の雌雄判別や受精卵クローン等の先端技術の活用による、
種雄牛作出の効率化や選抜精度の向上に努める。

 作出する種雄牛は肉質、増体能力に加え、北海道の生産環境に適応した繁殖・
ほ育能力等を兼ね備えたものとする。

2 育種価評価の推進と活用

 関係機関・団体は、産肉情報に基づいた科学的な改良を推進するため、肉用牛
情報活用システムの運用による育種価判明率の向上を図るとともに、育種価を用
いた交配シミュレーション等、情報の積極的な活用に努める。

3 優良雌牛群の育成

(1)優良雌牛群の育成・確保

 育種価に基づく優良繁殖雌牛の選抜と地域内保留を推進するほか、優良種雄牛
との計画交配推進、受精卵移植を活用した改良推進体制の整備等により、優良雌
牛群の充実を図るものとする。

(2)育種組織体制の整備

 優良雌牛のうち、道内育種価最上位の超優秀雌牛は、優れた育種素材であるこ
とから、種雄牛作出や育種牛群の育成等に活用を図るため、指定育種牛制度およ
び育種組合の組織化を目標として改良組織体制の整備強化を進める。

* 以上、北海道における黒毛和種の改良推進方針について、紹介させていただ
 いたが、今後の推進に当たっては、解決を要する課題も多い、引き続き国並び
 に先進各県のご指導と農畜産業振興事業団をはじめ関係団体のご支援を賜り、
 牛群改良と産地確立に取り組んでいきたい。

  尚、本要綱の策定と併せ、現地における指導資料として肉用牛広域改良普及
 定着化事業により「北海道黒毛和種牛群改良指針:ステップアップ21」を作成
 配付し改良方針の周知と普及を図っているところである。

元のページに戻る