★ 農林水産省から


食料の安定供給と美しい国づくりに向けて 

(人と自然が共生する社会の実現を目指して)

大臣官房 企画評価課


 このたび武部農林水産大臣の示された「食料の安定供給と美しい国づくりに向
けて」という構想は、小泉総理や武部農相が所信表明で述べられた「農林水産業
の構造改革」と「農山漁村の新たなる可能性を切り開く」という基本的考え方に
基づき、その目指すものや、その具体的な検討方向を示したものである。

 武部農相は、平成13年5月31日に開催された経済財政諮問会議に出席し、この
大臣私案を示しつつ、「今後の経済財政運営や経済社会の構造改革に関する基本
方針」の検討に際し、食料自給率の向上に向けた農林水産業の構造改革の必要性
と、良質な食料や水の確保(ヒューマンセキュリティー)および都市と農山漁村
の共生・対流など、農林水産業と農山漁村の重要性を主張された。以下、その内
容について紹介する。


構造改革の目指すもの

基本法に基づく農林水産政策の見直しの推進

1 食料・農業・農村基本法の基本理念の実現のため、食料自給率の向上に向け、
 消費者ニーズに即した国内生産の増大を通じた食料の安定供給を図る観点から
 農政の見直しを推進中

 基本理念=国民に安全な食料を安定的に供給する機能や、自然環境の保全等多
面的機能を十分に発揮するため、わが国農業の持続的な発展と農村の振興を図る
こと

2 森林・林業、水産分野についても、政策の基本理念を転換する新たな基本法
 案を今国会に提出。今後、これに沿った施策を展開

(1) 森林・林業分野については、持続的森林経営を推進する観点から、政策
   の基本理念を「森林の有する多面的な機能の持続的な発揮」に転換

(2) 水産分野については、資源管理の観点を踏まえつつ、「水産物の安定供
   給」と「水産業の健全な発展」を基本理念として政策の抜本的な見直し


農業の構造改革と農山漁村の新たなる可能性の創出

 国民の「安心」と生活の「安定」を支える、「おいしい水」、「きれいな空気」、
「安全な食べ物」、「心休まる住居」、「美しい自然の姿」を提供するため、活
力ある21世紀型日本経済の創造に向けた構造改革の一環として、農林水産分野に
おいても、

・21世紀にふさわしい食料供給システムの構築のための農業の構造改革を断行す
 るとともに、

・農山漁村と都市とは共生・対流すべき関係にあるものととらえ、都市住民のニ
 ーズにも対応する農山漁村の新たなる可能性を切り開き、もって循環型社会の
 実現を目指すことが必要


「農業の構造改革」を通じた効率的な食料の安定供給システムの構築 

〜安全でおいしい食料の安定供給を担う農業構造の実現〜

多様な農業経営等の役割を踏まえた施策の推進

1 「食料自給率の向上」を基本とした食料の安定供給を図るためには、効率的
 で安定的な経営体が、農業生産の大部分を担う農業構造を確立する必要(「農
 業の構造改革」)

2 特に、構造改革が遅れている米や、輸入急増によりセーフガード暫定措置発
 動に至った野菜等においては、生産・流通にわたる構造改革を重点実施

3 このため、専業農家等家族農業経営や集落営農などで「意欲と能力のある経
 営体」(育成すべき農業経営)を明確化した上で、これら経営体が創意工夫を
 生かした農業経営を展開できるよう、家族農業経営の活性化や農業経営の法人
 化等を推進する必要

  こうした観点から、地域における多様な農業の存在を踏まえ、これまでのよ
 うに一律に同様な施策を行うことをやめ、それぞれの特色等に応じた適切な施
 策を講じる。

(1) 「意欲と能力のある経営体」→「食料自給率の向上」を基本とした食料
  の安定供給を中心的に担う経営体と位置付け、家族農業経営の規模拡大や集
  落営農を含む農業経営の法人化の推進など構造改革のための支援策を可能な
  限り集中化(産業政策としての農業政策)

(2) それ以外の農家等→

 ア (1)の経営体をサポートし、地域の農業資源の維持管理において一定の
  役割を担うもの

 イ 豊かな自然環境の中で健康、生きがいのための農業など人と自然との共生
  の役割を担うもの

   と位置付け、農村振興政策等については、これら農家等も含めて実施


構造改革推進のための諸施策の見直し・再編

1 消費者ニーズに的確に対応できる食料供給システムの構築に向け、効率的で
 安定的な農業経営を育成していくため、生産・流通面も含め既存の諸施策・予
 算を抜本的に見直し

 → 農業経営の創意工夫を生かした経営の改善に資する効果の高い施策に対し
  思い切った重点化

 → 意欲と能力のある経営体が、自らの経営判断に基づき、リスクや新機軸へ
  の挑戦(思い切った作目転換や革新的な技術の導入)を可能とする新たなセ
  ーフティ・ネットを構築

2 上記の観点から、意欲と能力のある経営体の経営多角化等を進めるため、加
 工・流通等への取組やそれ以外の農家等への支援が可能となるよう農業経営の
 法人化を促進するとともに、外食産業、食品加工業等と農業との連携を一層促進


循環型社会の構築に向けた農山漁村の新たなる可能性の創出 

〜美しい国づくりに向けた自然と共生する農山漁村環境の創造〜

都市と農山漁村の共生・対流

1 都市と農山漁村との関係は、これを対立するものととらえるべきではなく、
 発展と安定という役割は明確にしつつも、水問題を始めとして都市の問題が都
 市だけでは解決されないように、都市と農山漁村とは、融合、協力、共生、対
 流すべき関係にあるものとしてとらえる必要があり、このことは21世紀のわが
 国を「循環型社会」としていく上でも不可欠

2 将来に向けた活力ある美しい国づくりを進めるため、ライフステージ、ライ
 フスタイルに合わせ、また、男女共同参画推進の視点も踏まえ、多様な就業機
 会を求め、都市と農山漁村を問わず、居住の場、就業・就学の場を選択しうる
 自由度の高い自立した社会を構築する観点から、新しい農山漁村コミュニティ
 づくりを推進

 → 都市の住民にはきれいな空気、美しい自然を持ったふるさとが提供され、
  農山漁村の住民には都市と同様の社会基盤の下での生活や仕事、都市の持つ
  魅力へのアクセス等が確保され、都市と農山漁村の双方の住民が豊かさを享
  受し、そして相互の対流が生まれるような活力ある農山漁村づくり


自然と共生する環境の創造

1 このような都市と農山漁村の共生を可能とする条件整備として、農山漁村に
 おける社会資本整備については、事業の内容自体を安全な食料の安定供給等と
 併せて循環型社会の構築や自然との共生に寄与するものに改革し、都市住民に
 も開かれた新たな農山漁村の可能性を切り開く

 → 新たな田園環境整備のマスタープランの下、多様な生物が暮らす環境との
  共生など自然と共生する環境を創造するもの等に転換

 → また、関係府省との連携を図りつつ、高度情報化社会を享受できるようI
  T化を推進するとともに、地域住民と都市住民が求める「美しいふるさと」
  (農村・集落ニューコミュニティー)の整備に努める。

2 森林や海について、おいしい水、きれいな空気、美しい自然を提供する国民
 の財産として、整備の方向を明示し、豊かな森林づくり、海づくりを進める。

3 また、農業が本来的に備えている自然循環機能を活用し、都市と農山漁村と
 における食品リサイクルを始めとする有機性資源の循環利用等を促進(食と農
 の環づくり)

「食料の安定供給と美しい国づくりに向けて」(私案)
<人と自然が共生する社会の実現を目指して>

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