★ 事業団から


平成11年度主要乳製品の流通実態調査の結果について

乳業部乳製品課




はじめに

 主要乳製品の流通消費の実態は、一般統計になじみ難いことや需要者である食
品製造業、食品小売業、フードサービス等の構造変化が著しいこともあって不明
な点が多い。このため、これら乳製品の生産流通消費の実態について調査分析を
行った。このうち主要な業務用乳製品であるバター、脱脂粉乳について調査結果
の概要を紹介することにしたい。


バター

業種別消費量(推計)

 平成11年度における国内のバターの推定消費量を83,000トン(事業団調べの
推定出回り量)とし、その業種別および用途別の消費量推計を行った。

 バターの流通経路と業種別消費量(推計)を図1に示した。乳業メーカーのバ
ターの推定供給量は83,000トンで、うち社内消費仕向が19.3%、社外販売が80.
7%となっている。社外販売量67,000トンのうち、需要者に直接販売されるのは
わずか2,800トン(社外販売量の4.2%)に過ぎず、一次卸売が64,200トン(同
95.8%)を占める。なお、二次卸売を経由するのは28,600トン(同42.7%)と
なっている。一次卸とは主に大手乳業系列販売会社、乳製品卸、大手食品卸であ
る。

◇図1:バター流通ルート(11年度推計)◇

 業種別消費量について見ると、「小売業」が23,300トン(全体の28.1%)で
最も多く、次いで「製菓・製パン」が21,900トン(26.4%)、「乳業」(注)
が16,000トン(19.3%)、「外食・ホテル」が8,800トン(10.6%)、「加工油
脂」が5,000トン(6.0%)、「調理食品」が2,700トン(3.3%)となっている。
(注)「乳業」とは、乳業メーカーのうち、バターを生産しているメーカーをい
う。


用途別消費量(推計)

 次に、バターの推定消費量83,000トンを用途別に見ると、「小売業」が23,30
0トン(28.1%)で最も多く、次いで「菓子類」が11,700トン(14.1%)、「パ
ン類」が10,900トン(13.1%)、「外食・ホテル」が8,800トン(10.6%)、
「乳飲料」が4,400トン(5.3%)、「マーガリン類」が4,400トン(5.3%)、
「はっ酵乳・乳酸菌飲料」が3,600トン(4.3%)、「調理食品」が3,500トン
(4.2%)となっている(図2、表1)。

◇図2:バターの用途(11年度推計)◇

表1 バターの用途別消費量(11年度推計)



業種別の消費実態

 業種毎におけるバターの用途別使用状況は次のとおりである。

1 乳業メーカー

 回答のあったバターを生産している乳業メーカーのうち、バターを社内消費し
ているのは11社であった。主な用途は、「乳飲料」が24.2%で最も多く、次いで
「はっ酵乳」が14.8%、「加工乳」が13.5%、以下「アイスクリーム類」「菓子
類・デザート」「マーガリン類」の順であった(表2)。なお、「その他」はチ
ーズ製品、乳等を主要原料とする食品、クリーミングパウダー、コーヒークリー
ム等となっている。

表2 バターの業種別用途内訳


2 アイスクリームメーカー

 回答のあったアイスクリームメーカー10社のうち、バターを使用しているのは
8社であった。用途は「アイスクリーム」で、「その他」は主にフレッシュクリ
ーム等となっている。

3 はっ酵乳・乳酸菌飲料メーカー

 回答のあったはっ酵乳乳酸菌飲料メーカー13社のうち、バターを使用している
のは6社であった。主な用途は、「はっ酵乳」が34.5%、「マーガリン」が23.1
%、その他「乳酸菌飲料」「菓子・デザート」となっている。

4 加工油脂メーカー

 回答のあった加工油脂メーカー9社のうち、バターを使用しているのは7社で
あった。主な用途は「マーガリン類」でその他となっている。その他の内訳は、
ホイップクリーム、フィリング、ファットスプレッド等となっている。

5 製パン

 回答のあった製パン業9社のうち、バターを使用しているのは8社であった。
主な用途は「パン類」となっている。

6 製菓

 回答のあった製菓業45社のうち、バターを使用しているのは38社であった。主
な用途は「菓子類」が83.1%を占め、その他「パン類」「アイスクリーム類」と
なっている。「菓子類」の内訳はケーキ類、チョコレート、パイ、クッキー、ビ
スケット、サブレ、カステラ、キャンディ等となっている。

7 調理食品

 回答のあった調理食品メーカー10社のうち、バターを使用しているのは7社で
あった。主な用途は「調理食品」となっている。その内訳は、ホワイトソース、
デミグラスソース、コーンスープ、ミートソース、コロッケ、カレー、総菜等と
なっている。

8 外食産業

 回答のあった外食産業23社のうち、バターを使用しているのは17社であった。
主な用途は「調理用」で79.7%を占めている。その他「パン類」「菓子・デザー
ト類」となっている。外食では調理用からデザート、パン・トースト用等と用途
が広い。

9 ホテル

 回答のあったホテル52社のうち、バターを使用しているのは51社であった。主
な用途は「調理用」が最も多く、次いで「パン用」「菓子・デザート類」となっ
ている。


今後(直近2〜3年)の需要見通し

 バターを供給する乳業メーカーや卸から見た今後の需要見通しは、おおむね
「横ばい」から「やや減少」と予測している。主な要因としてバターの26%を消
費する大口需要者である製菓製パンの需要の低迷、液状乳製品や輸入調製品等代
替製品へのシフトが挙げられている。

 一方、需要者の今後の消費見通しはおおむね「横ばい」となっているものの業
種、企業により差違が見られ、製菓・製パン、外食では「やや増加」となってい
る。


脱脂粉乳

業種別消費量(推計)

 11年度における国内の脱脂粉乳の推定消費量を216,000トン(事業団調べの推
定出回り量)とし、その業種別および用途別の消費量推計を行った。

 脱脂粉乳の流通経路と業種別消費量(推計)を図3、表3に示した。乳業メー
カー等の脱脂粉乳(事業団売渡しの輸入脱脂粉乳を含む)の推定供給量は216,0
00トンで、うち乳業メーカーの社内消費仕向が50.7%、社外販売が49.3%とな
っている。社外販売量106,500トンのうち、需要者に直接販売されるのは12,200
トン(社外販売量の11.5%)であり、一次卸売が94,300トン(同88.5%)とな
っている。なお、二次卸売を経由するのは17,900トン(同16.8%)となってい
る。一次卸売とは主に大手乳業系列販売会社、乳製品卸、大手食品卸である。

◇図3:脱脂粉乳の流通ルート(11年度推計)◇

表3 脱脂粉乳の業種別消費量(11年度推計)


 業種別消費量について見ると、「乳業」(注1)が109,500トン(全体の50.7
%)で最も多く、次いで「はっ酵乳・乳酸菌飲料」が30,200トン(14.0%)、
「製菓・製パン」が19,900トン(9.2%)、「飲料メーカー」が13,800トン(6.
4%)、「乳業・アイスクリーム」(注2)が17,500トン(8.1%)、「加工油
脂」が11,100トン(5.1%)となっている。なお、「小売業」は400トン(0.2%)
であった。

 国産脱脂粉乳197,000トンと輸入脱脂粉乳19,000トンの内訳は表3に示したと
おりである。国産脱脂粉乳は「乳業」が半数で、以下「はっ酵乳・乳酸菌飲料」
「製菓・製パン」「乳業・アイスクリーム」となっている。輸入脱脂粉乳は「乳
業」が3分の2を占め、以下「乳業・アイスクリーム」「はっ酵乳・乳酸菌飲料」
「飲料メーカー」となっている。

(注1)「乳業」とは、乳業メーカーのうち、脱脂粉乳を生産しているメーカー
  をいう。脱脂粉乳の項目において以下同じ。

(注2)「乳業・アイスクリーム」とは、乳業メーカーのうち、脱脂粉乳を生産
  していないメーカーおよびアイスクリーム製造メーカーをいう。脱脂粉乳の
  項目において以下同じ。


用途別消費量(推計)

 次に、脱脂粉乳の推定消費量216,000トンを用途別に見ると、「はっ酵乳・乳
酸菌飲料」が61,400トン(構成比28.4%)で最も多く、次いで「乳飲料」が49,
800トン(23.1%)、「加工乳」が28,200トン(13.1%)、「パン類」が12,70
0トン(5.9%)、「飲料」が10,000トン(4.6%)、「アイスクリーム類」が9,
000トン(4.2%)、「菓子類」が8,300トン(3.8%)、「調理食品」が6,600ト
ン(3.1%)となっている(図4)。国産脱脂粉乳197,000トンと輸入脱脂粉乳
19,000トンの内訳は表4に示したとおりである。国産脱脂粉乳は「はっ酵乳・乳
酸菌飲料」「乳飲料」「加工乳」、輸入脱脂粉乳は「乳飲料」「加工乳」「はっ
酵乳・乳酸菌飲料」「アイスクリーム類」で多く使用されている。

表4 脱脂粉乳の用途別消費量(11年度推計)


◇図4:脱脂粉乳の用途(11年度推計)◇


業種別の消費実態(国産脱脂粉乳)

 業種毎における国産脱脂粉乳の用途別使用状況は次のとおりである。

1 乳業メーカー

 回答のあった脱脂粉乳を生産している乳業17社のうち、社内消費しているのは
15社であった。主な用途について見ると、「乳飲料」が40.2%で最も多く、次い
で「はっ酵乳・乳酸菌飲料」が22.0%、「加工乳」が20.6%となっており、この
3つが主な用途となっている(表5)。なお、「その他(12.1%)」の用途は、
クリーミングパウダー、加工食品等となっている。

表5 脱脂粉乳の業種別用途内訳

 ◎なお、本調査は社団法人食品需給研究センターに委託して
  実施したものである。

2 アイスクリームメーカー

 回答のあったアイスクリームメーカー10社すべてが国産脱脂粉乳を使用してい
る。主な用途は「アイスクリーム類」が29.4%、「その他」が63.5%となってい
る。「その他」の内訳は菓子・デザート類、飲料等となっている。

3 はっ酵乳乳酸菌飲料メーカー

 回答のあったはっ酵乳・乳酸菌飲料メーカー13社すべてが国産脱脂粉乳を使用
している。主な用途は「はっ酵乳」が57.6%、「乳酸菌飲料」が41.0%となって
いる。

4 加工油脂メーカー

 回答のあった加工油脂メーカー9社のうち、国産脱脂粉乳を使用しているのは
8社であった。用途は「マーガリン類」が12.9%、「その他」が86.0%となって
いる。「その他」の内訳はファットスプレッド、ホイップクリーム、業務用チョ
コレート、フィリング、濃縮加工乳となっている。

5 製パン

 回答のあった製パン業9社のうち、国産脱脂粉乳を使用しているのは8社であ
った。主な用途は「パン類」が82.1%を占め、残りは「菓子類」となっている。

6 製菓

 回答のあった製菓業45社のうち、国産脱脂粉乳を使用しているのは25社であっ
た。主な用途は「アイスクリーム類」が48.1%、「菓子類」が46.9%となってい
る。「菓子類」の内訳はビスケット、クラッカー、カスタードクリーム、チョコ
レート、ケーキ、米菓、パイ等となっている。

7 飲料メーカー

 回答のあった飲料メーカー9社すべてが国産脱脂粉乳を使用している。主な用
途は「飲料」が71.6%を占め、「乳酸菌飲料」が20.3%、「乳飲料」が6.9%と
なっている。これらの具体的な用途は、缶コーヒー、カフェオレ、清涼飲料、紅
茶飲料、缶スープ等となっている。

8 調理食品

 回答のあった調理食品メーカー10社のうち、国産脱脂粉乳を使用しているのは
7社であった。主な用途は「調理食品」でその内訳は冷凍食品やレトルトパウチ
等である。


今後(直近2〜3年)の需要見通し

 国産脱脂粉乳を供給する乳業メーカーや卸から見た今後の需要見通しは、「や
や増加」と予測している。乳業では「やや増加」となっているが卸売業では「や
や増加」から「減少」と見通しにばらつきがみられる。一方、需要者の今後の消
費見通しは、おおむね「やや増加」と予想しており、特に飲料、製菓・製パンで
は堅調となっている。

 また、輸入脱脂粉乳を購入し販売している乳業メーカーや卸から見た今後の需
要見通しは、回答企業により差異があるがおおむね「横ばい」と予測している。

 一方、需要者の今後の消費見通しは、おおむね「やや増加」と予想しているも
のの企業によって差異がみられる。

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