岩手県/農林水産部 畜産課
計画の位置付け 「岩手県酪農・肉用牛生産近代化計画」は、「酪農及び肉用牛生産の振興に関 する法律」に基づき、平成22年度を目標とする本県の酪農および肉用牛生産の近 代化を計画的に推進するための基本方針であり、県、市町村および農業団体等が、 本県における酪農および肉用牛生産の振興を図るために必要な施策展開の指針と なるものである。 なお、本計画は、国が12年4月に公表した「酪農及び肉用牛生産の近代化を図 るための基本方針」および本県農政の長期的な基本計画である「岩手県農業・農 村基本計画(11年9月策定)」との調和を図り、策定したものである。 酪農及び肉用牛生産の近代化に関する方針 1 本県の酪農および肉用牛生産は、頭羽数・粗生産額において全国のトップク ラスの地位にあり、本県農業の基軸であるとともに中山間地域の重要な部門と なっており、一層の生産振興を図っていく必要がある。 2 このため、優れた担い手の育成確保を図りながら、草地や畜舎等生産基盤の 整備、優良牛の改良増殖など総合的な施策の展開により、高品質で低コストな 生産性の高い酪農および肉用牛の生産の実現を図る。 3 また、耕種部門との連携を強化し、家畜排せつ物の有効利用等、環境と調和 した生産体制を構築する。 4 本県は、広大な公共牧場を有し、豊富な草資源に恵まれていることから、こ れを積極的に活用するとともに、水田や未利用地についても有効活用を図り、 良質な自給粗飼料の生産に努め、酪農・肉用牛主産地としての地位を確立する 必要がある。 5 また、効率的でゆとりある経営を実現するため、畜産経営支援組織(酪農・ 肉用牛ヘルパー、コントラクター等)の育成強化を図る。 6 さらに、生産性の高い経営を実現するため、酪農においては、牛群検定成績 の活用や受精卵移植の普及、拡大等による高能力牛群の整備、完全混合飼料等 による飼料給与方式の改善等を行い乳量、乳成分等の向上を図る。 7 肉用牛において、中核となる繁殖、肥育経営体の育成や経営内・地域内一貫 生産体制を確立する。 8 品種の特性を生かした低コストで高品質な牛肉の生産を推進するため、公共 牧場の再編による草資源の有効活用や低コスト牛舎、共同利用機械の導入を促 進するとともに、生産子牛の地域内保留や肉用牛団地の整備などにより、肉用 牛生産基盤の強化を図る。 9 育種価評価、受精卵移植や核移植技術など先端技術の普及定着による肉用牛 の改良を推進する。 酪農および肉用牛生産の展開方向 1 土地基盤に立脚した経営体の育成 意欲ある生産者の飼養拡大を図るため、企業的な経営感覚を取り入れた大規模 酪農経営の育成や、低コスト牛舎、共同利用機械等の整備や優良な繁殖素牛、肥 育素牛の保留を支援するとともに、経営や飼養管理技術等の指導体制の強化を図 る。 本県の広大な県土を背景として、草地の計画的な整備を進めるとともに、公共 牧場の再編、機能強化を図り、広域的利用や多面的利用など、粗飼料の有効活用 を図る。また、草種、品種の組み合わせによる刈り取り適期の拡大やラップサイ レージの普及拡大と併せて、水田や耕作放棄地などの未利用農地の有効活用など により、良質粗飼料の増産と粗飼料自給率の向上を図る。 2 生産性が高くゆとりのある経営の実現 乳牛・肉用牛の飼養頭数、生乳の生産目標 (1)酪農 生産性の高い酪農経営を育成するため、「岩手県酪農振興方針(平成11年5月 策定)」に基づき、県内各農業協同組合が策定する「酪農振興アクションプラン」 により、自動管理システムの導入による飼料給与方式の改善等を図るとともに、 牛群検定成績の活用や受精卵移植の普及拡大等により高能力牛の整備を促進する。 (2)肉用牛 ア 共通 生産性の高い肉用牛経営を育成するため、「岩手県肉用牛振興方針(12年7月 策定)」に基づきキャトルセンター(繁殖、肥育牛生産団地)の整備を促進する とともに、受精卵移植等の新技術を活用した優良繁殖用雌牛の整備や優良種雄牛 の造成を図る。 イ 本県特産の日本短角種の振興 日本短角種は、放牧適性等に優れた特性を持っており、また耕種部門との合理 的な労働配分が可能であるなどの利点があり、山間地域農業における複合経営の 主要な部門と位置付け、生産振興を図る。 また、放牧を通じて景観の保持、国土の保全にも寄与する。 3 酪農経営および肉用牛経営の円滑な継承 離農農場の新規就農者や規模拡大志向者への円滑な継承を図るため、リース農 場方式等の導入を促進する。 また、後継者や新規就農希望者が、新たな畜産経営を開始するのに必要な実践 的な経営技術をマスターできるよう、研修体制の整備を促進する。 4 資源循環型農業への適切な対応 環境問題や食品の安全性に対する人々の関心がとみに高まってきており、適切 な酪農・肉用牛生産活動を通じて、自然循環機能を高度に発揮した持続的な農業 の推進を目指す「人と環境にやさしいいわて型農業確立運動」を展開する。 5 稲わら等飼料自給率の向上 飼料自給率の向上目標 飼料自給率の向上は、外国に依存しない資源循環型農業を推進する観点から大 きな意味を持っている。 また、輸入粗飼料が原因である可能性が高いとされている口蹄疫等これら海外 悪性伝染病の侵入を防止し、安定経営の確保と食糧の安定供給の視点から積極的 に飼料の自給率の向上を推進する。 6 流通・加工の合理化 安全な牛乳・乳製品及び食肉に対する消費者ニーズの高まりに対して、HACCP 基準に適合した衛生的な牛乳処理加工施設および食肉処理施設の整備を促進する。 また、消費者と生産者との相互交流を促進することなどにより、畜産物の生産 過程についての情報発信を推進する。