◎地域便り


青雲の志を後継者にも託せる養豚経営を

秋田県/企画情報部


 本庄市郊外の有限会社青雲農場は養豚専業の農業生産法人で、その規模は母豚
190頭。年間4000頭を出荷している。

 ちょうど豚舎移動の真っ最中で成長過程に応じて場内をトラックに乗った豚が
運ばれていく。久しぶりに外光を浴びたのか、豚は元気はつらつ。それを満足気
に眺めながら代表取締役の高橋武夫さん(53歳)はテキパキと作業を続けていく。

 社名は亡き実弟の戒名に由来する。2人で農業をやりたい、やっていこうと誓
い合ったが、交通事故で夭逝。その約束は今日も「青雲の志」として高橋さんの
心の中に強く刻み込まれている。

 父の代までは水稲作1本の経営。家に残り、農業を継いでも全く別の経営に挑
戦したかった。そこで矢島農業高校では酪農を専攻。しかし北海道に実習に行っ
てみてカルチャーというか、そのスケールにショックを受けた。とてもではない
が秋田県では無理と。そこで養豚に進路変更する。土地の広さがそれほど要求さ
れないから…だった。

 ゼロからのスタートで、経営を法人化する直前の昭和57年には母豚70頭にまで
規模を拡げた。しかし、さらなる拡大を図ろうとした時、出会ったのがグローバ
ル・ピッグ・ファーム株式会社。神奈川県の厚木市場に繁殖豚を購入に出かけた
際のことだった。農家自身が出資する養豚専業企業に参加することは励みともな
った。

 後継者の勇太さん(21歳)も同社系列の中での養豚経営に魅力を感じたのであ
ろう。大曲農業高校で畜産を専攻し、現在同社の農場に勤務、修業している。

 その勇太さんのためにも早急に講じなければならないのが畜産環境対策強化へ
の対応。尿については浄化槽を既に設置しており、クリアしている。問題はふん
の処理。一応のコンポストも擁し、たい肥として販売しているが、規模拡大に伴
って能力は限界に達しており、独自に拡充を図る方針だ。

 しかし、それが完備しても青雲農場単独では環境対策が万全とはならないだろ
う。必要なのは耕種農家との連携であり、豚ふんに対する理解を深めてもらえる
ように、養豚家として自ら努力することが大切だ。

 自身が父とは異なる農業を目指したのと同様に、「異なった角度から畜産、養
豚経営に取り組んでほしい」とするのが後継者への願い。時代に適った農業を作
り出していくのが若い世代の使命であり、そのための補佐役を自家に限らず、地
域の中でも担っていこうと考えている。そのためには週休2日の完全実施等も実
現するなど、世代間の隙間を埋めるような経営展開を図らなければならない。
【青雲農場の入口で】

    
【豚舎移動の作業】

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