福岡県/企画情報部
久留米市の内田龍司さん(49歳)は搾乳牛57頭、育成牛30頭を飼養する酪農家。 しかし近辺、そして九州一帯の子供たちからは「カブトムシのおじさん」として 親しまれている。 内田さんとカブトムシとの出会いは20数年前にさかのぼる。牛ふんと稲わらを 混ぜた1次発酵程度のたい肥の中に"イモムシ"を見つけたのだが、それが実はカ ブトムシだった。早速、二男が通う保育園でプレゼントしたのだが、その頃の久 留米市内にはまだ自然がいっぱい。「それほど珍しがられることもなかった」。 しかし、ここ4〜5年で状況は一変した。カブトムシブームの到来に専門業者 は各地で虫を買いあさり、コマーシャル化が進み出した。 今夏に限っても内田さんは全国2万人の子供たちにカブトムシ、クワガタ等を オス・メス1対で配布した。虫自体はもちろん無償だが、これらの観察箱につい てはそれぞれ実費負担してもらっている。1個300円だが、これについても以前 は自腹だった。だが、各地からの配布要請が拡大するにしたがって、繁殖・飼育 自体が大規模化し、これに専従する要員を雇用せざるを得なくなるなど活動に係 る経費が増大した。そこでこの一部を支えてもらおうというのだ。 ただし、それは負担可能な環境にある子供たちに限ったこと。これまで通り、 身体障害を持った子供たち等にはすべて無償でプレゼントする。 酪農家ならではのボランティア活動。そして「地域とのつながり、都市の子供 たちとの交流を大切にしたい」とする内田さんの気持は、平成13年2月、久留米 市からの「ふるさと市民賞」となって報われた。問題は野積みとは言わないまで もたい肥を自然界に置くこと。これには当初、行政も難色を示した。だが「カブ トムシの飼育場所として、一部ほ場で一時処理を行ったたい肥を利用して飼育し ており、野積みと言えるほど大規模ではない」と理解を示している。 カブトムシをプレゼントする会場では子供たちがほぼ突進するようにして内田 さんを取り囲む。虫を手にして熱気ムンムン。汗だくになった内田さんは「子供 たちの輝く顔を見ているとこれからも続けていこう」と思っている。
【牛ふん等のたい肥の中で 育ったカブトムシ】 |
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【内田さん経営の乳牛舎】 |