トピックス

BSE、輸入にも影響

 牛肉の卸売価格は、3月に入ってからさらに低下し、東京市場の省令価格は日
によって300円を下回っている(図1)。これはBSE発生から波及した一連の食肉
偽装についての報道の影響によるものとみられる。
 さて、13年9月以降の輸入牛肉についてみると、9月はアメリカ産が対前年比
13.0%減、オーストラリア産が6.5%の減となったが、翌10月にはアメリカ産が7
.6%増、オーストラリア産が12.7%増となった。9月にBSEが確認されたが、す
でに契約済みの荷が到着したものと見られる。しかし、その後は、牛肉の消費不
振、特に冷蔵品を中心に急激に減少し、1月の輸入量はアメリカ産が対前年比で
63.1%、オーストラリア産50.4%となった(図2、3)。一方、輸入牛肉の卸売
価格は、原産国である米・豪でBSEの発生が確認されていないことと、輸入量
の減少から前年の価格を上回って推移している。
◇図1:牛肉の卸売価格(東京、大阪、省令)◇
◇図2:米国からの牛肉輸入量(対前年比)◇
◇図3:豪州からの牛肉輸入量(対前年比)◇


豚肉省令卸売価格、2月は引き続き前年を上回って推移

 豚肉の卸売価格(東京・省令)は、1月28日の412円/kgを底に再び値を上げ
始めてからは、堅調に推移している。

 1月は中旬から下旬にかけて温暖な気候となったことから、出荷頭数が増加し
値を下げたが、2月は引き続き前年を上回って推移し、2月の平均価格は、518
円/kg(15.9%)となった。

 3月に入っても堅調に推移している(図4)。
◇図4:豚肉の卸売価格(東京、省令)◇


14年度上期の豚肉出荷量は前年をやや上回る見通し

 農林水産省生産局畜産部食肉鶏卵課は、3月5日に全国肉豚生産出荷協議会を
開催、14年度の生産出荷見通しが報告された。

 13年9月のBSEの影響から、牛肉からの代替需要により豚枝肉価格が上昇して
いる。このため大規模飼養者では規模拡大、増頭意欲が見られる一方、中小規模
飼養者では依然として飼養者の高齢化や環境問題の対応に伴い、飼養戸数の減少
が続いている。

 従って14年度上期の出荷量は、大部分の都道府県で「前年並み」と見込んでい
るが、少数の都道府県で「前年を上回る」とする回答があったことから全体では
「前年をやや上回る」と見込んでいる(表1)。

表1 平成14年度上期の動向予測(都道府県提出資料より)

 資料:全国肉豚生産出荷協議会資料
  注:評価は「1」下回る、「2」前年並み、「3」上回るを基準として評価


13年度および14年度のブロイラー生産見通しについて

 農林水産省生産局畜産部食肉鶏卵課は3月5日に全国ブロイラー需給調整会議
を開催し、14年度出荷計画に基づく14年度の需給見通し等が報告された。

 需要については、家計消費量は前年度対比0.2%減となり、加工業務用として0
.2%減となることから合計で前年度を0.2%減少すると見込んでいる。供給では、
国内生産量は1.0%減、輸入量が1.6%増(家きん肉を含む。)、全体では1,765
千トン(0.2%減)を見込んでいる。(表2)

 また、会議の中で関係団体等からは、輸入見通しに関しては最大輸入国の中国
がトリインフルエンザ、合成抗菌剤検出問題等状況が不透明のためブレが予想さ
れること、13年末までのBSE代替需要による異常な国産鶏肉の高値は年明けから
値下がりを続けていること、適正表示問題はかねてより取り組んでいるが、まだ
まだ課題が多い等の意見と、行政等のなお一層の協力支援が不可欠であるという
強い要望が出された。

表2 14年度出荷計画に基づく14年度需給見通し(骨付きベース)

 資料:全国ブロイラー需給調整会議資料

国産鶏肉卸売価格下げる

 13年10月以降続いていた高値の反動が一気に出始めた。価格が頂点に達した昨
年末に比べるともも肉(東京3月11日現在)655円、むね肉(東京3月11日現在)
266円と値下がりが続いている。BSEによる代替需要と中国産鶏肉に疾病等が相次
ぎ、国産への切り替えが進んだこと等から、年末まで需給が引き締まっていたが、
今年に入り1月は高値を維持できずに下落し、2月はさらに下落が進んだ。3月
も前半日々下落している。(図5)

 推定期末在庫は1月末119,548トン(1.4%)と8ヵ月ぶりに対前年同月を上回
り、ひっ迫感も薄れつつある。
◇図5:国産鶏肉卸売価格(東京、中値)◇


バター需要のひっ迫によりバター買入入札を実施

 事業団は、平成14年2月13日にバターの買入入札3,640トンを実施した。
バターの需要がひっ迫したことから、カレントアクセス分の残りをバターの買入
れにあてたもので、バターの買入れは10年4カ月ぶりのこととなる。引渡期限は
4月15日で、結果は全量落札となった。

 バターの期末在庫量を見ると、13年1月には3万6千トン(対前年比105.6%)
と余裕があったが、その後減少し、9月には2万8千トン(対前年比66.4%)と
11年12月以来21カ月ぶりに3万トンを切り、12月には2万1千トンまで減少した
(図6)。

 この要因としては、以下が考えられる。

@生乳生産量が、減少傾向で推移している中、12年6月に発生した大手乳業メ
 ーカーの低脂肪乳の食中毒事故以来、飲用向けが伸びて乳製品向け処理量が減
 少、バターの生産量が減少した。

Aバターの代替として利用されていたハイファットクリームチーズ(HFC)の関
 税分類がナチュラルチーズ(0406.10-090)ではなく、デイリースプレッド
 (0405.20-090)に変更されたため、ハイファットクリームチーズ(HFC)の輸
 入量が激減した(図7)。
◇図6:バター生産量・推定期末在庫量(平成13年1月〜平成14年1月)◇
◇図7:チーズの輸入量・バターの生産量・バター推定期末在庫量◇


14年の鶏卵生産量は前年をやや上回る見通し

 農林水産省生産局畜産部食肉鶏卵課は、3月5日に全国鶏卵需給調整会議を開
催、14年の鶏卵生産見通しが報告された。

 近年の鶏卵に対する需要は、ほぼ横ばいで推移しており、生産量の96%は国内
で自給しているため、国内生産量のわずかな増減が大幅な価格変動につながる。
12年5月以降は、え付け羽数の増加による生産量の増加から卸売価格は、前年同
月を下回って推移している。

 14年の生産量は、え付け羽数の増加から前年をやや上回る258万9千トン(1.5
%)になると見込んだ。(図8)

 したがって14年の鶏卵の卸売価格は、引き続き低落傾向で推移すると予想され
ることから「鶏卵の計画生産に係る当面の緊急措置」(鶏舎増設の凍結等)につ
いては、新たな枠組みの検討結果および対処方針が明らかになるまでは、増産傾
向を抑制する必要があるとの立場から14年度(15年3月末まで)も継続すること
が決定された。
◇図8:14年鶏卵の生産量見込み◇

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