総合食料局 食料政策課 佐藤 千栄子
農作物の短期の需給見通しについて、昨年度から従来の「農業観測」に替わり、 消費者や食品産業等の実需者側の情報の収集・分析等需要動向を重視し、新たな 「食料需給見通し」として作成・公表している。 本年度は、6月26日、27日に食料需給予測部会畜産物第1小委員会(牛肉・豚肉お よび牛乳乳製品)および第2小委員会(鶏肉・鶏卵および飼料)が開催され、14年 度の畜産物の需給等の見通しについて調査審議された。 ここでは、7月10日に公表された「平成14年度畜産物の需給等の見通し」のうち、 食肉部分(牛肉・豚肉・鶏肉)の需給見通しについてその概要を紹介する。なお、 最近の需給動向や見通し等の全文については、農林水産省のホームページをご覧い ただきたい。 (http://www.maff.go.jp/sogo_shokuryo/jk/index.html) 変動の幅
わずか‥‥‥‥‥‥‥‥± 2
%台以内 や や‥‥‥‥‥‥‥‥± 3 〜 5%台 かなり‥‥‥‥‥‥‥‥± 6 〜15%台 かなりの程度‥‥‥・± 6 〜10%台 かなり大きく‥‥‥‥±11〜15%台 大 幅‥‥‥‥‥‥‥‥±16%以 上 |
なお、この変動の幅は特に断り書きのない限り前年度(前年産、前年同期、前年 同月等)に対するものである。
消費 最近の動向 1人当たり消費量(供給純食料)は、近年7キログラム前後で推移しており、家計 消費が減少傾向で推移する一方で、加工・外食等の消費が増加傾向となっている。 13年度は、わが国でのBSEの発生の影響を受け、1人当たりの家計購入数量は24%減 の2.3キログラムとなった。 14年度の見通し 14年度は、BSEの影響からの回復のきざしがみられることから、牛肉の家計消費 量および加工・外食等消費量は、13年度と比べかなり増加し、平年の水準に近づく ものと見込まれる。この結果、14年度の牛肉の1人当たり消費量も13年度と比べか なり増加すると見込まれるが、消費動向については、相対的に価格の安い豚肉や鶏 肉を含む食肉間の代替の可能性や牛肉の需要回復の動き等の影響を受けることを注 視する必要がある。 供給 −国内生産− 最近の動向 成牛枝肉生産量は、飼養農家戸数等の減少等の影響を受け減少傾向で推移してい る。13年度は出荷停滞等から肉専用種が11.2%減、乳用種が8.6%減となり、成牛 全体では9.8%減の47万トンとなった。 14年度の見通し おおむね14年度に出荷をむかえるとみられる子牛の生産動向(肉専用種は出荷時 月齢の約30カ月前、乳用種は出荷時月齢の約22カ月前)は、肉専用種および乳用種 ともわずかに減少している。他方、成牛と畜頭数については、13年度はBSE発生の 影響を受け出荷停滞がみられたことからかなり大きく減少したが、14年度は、13年 度の出荷停滞の反動からと畜頭数は、14年3月以降前年をかなり上回る水準で推移 している。この結果、14年度の成牛と畜頭数は、13年度に比べ大幅に増加すると見 込まれる。また、こうした成牛と畜頭数の動向から見て、14年度の成牛枝肉生産量 は、13年度に比べ大幅に増加すると見込まれる。 −輸 入− 最近の動向 輸入量は横ばいないし増加傾向で推移してきたが、13年度は国内需要の落ち込み から冷蔵品が19.4%減、冷凍品が16.0%減となり、全体では17.7%減の86万トン (枝肉ベース)となった。 14年度の見通し 14年度は消費量がかなり増加すると見込まれる中、国内生産量が大幅に増加する と見込まれることに加え、13年度期末在庫量が高水準であることから、牛肉の輸入 量は、13年度に比べわずかないしやや減少すると見込まれる。なお、現地価格や為 替相場等の動向等によっては、輸入量を左右する輸入価格の変動もあり得るため、 今後の動向を注視していく必要がある。 価格 最近の動向 牛肉の卸売価格(省令規格)は、安定上位価格を上回る水準で推移していたが、 13年10月以降安定基準価格を下回って推移している。 14年度の見通し 14年度は、国内生産量が大幅に増加するものの消費量もかなり増加すると見込ま れることから、牛枝肉卸売価格(省令規格)は、13年度に比べややないしかなりの 程度上回ると見込まれる。
消費 最近の動向 1人当たり消費量(供給純食料)は、近年10キログラム台でほぼ横ばいで推移し ている。13年度の1人当たりの家計購入数量は、牛肉の代替需要の影響から4.9%増 の5.2キログラムとなった。また、ハム・ベーコン等の豚肉加工品の家計購入数量 は、近年横ばいないし微増傾向で推移している。 14年度の見通し 14年度の豚肉の家計消費量は、牛肉の代替需要の影響が継続することから前年度 並みと見込まれる。なお、消費水準は牛肉の需要回復とともに平年並みに戻ると見 込まれる。加工・外食等消費量は、13年度はハム、ベーコンの家計購入数量が減少 したものの、加工品需要がおおむね安定的に推移していることから、前年度並みと 見込まれる。この結果、14年度の豚肉の1人当たり消費量は、前年度並みと見込ま れるが、消費動向については、食肉間の相対的な価格の変動や消費者のし好の変化 に伴う牛肉や鶏肉といった他の食肉との代替の可能性についても注視する必要があ る。 供給 −国内生産− 最近の動向 豚枝肉生産量は、横ばいないし減少傾向で推移している。13年度は、子取り用め す豚頭数の減少により1.7%減の123万トンとなった。 14年度の見通し 14年度の肉豚と畜頭数は、子取り用めす豚の飼養頭数が前年度並みであること等 から、前年度並みと見込まれる。また、こうした肉豚と畜頭数の動向から見て、14 年度の豚枝肉生産量は、前年度並みと見込まれる。 −輸 入− 最近の動向 輸入量は、消費者の低価格志向等を背景に増加傾向で推移している。13年度は、 国内需要の高まりから冷蔵品が5.2%増、冷凍品が9.9%増となり、全体で8.5%増 の101万トン(枝肉ベース)となった。 14年度の見通し 14年度は、消費量および国内生産量が前年度並みと見込まれるものの、13年度末 の在庫量が高水準にあることから、豚肉の輸入量は、13年度に比べやや減少すると 見込まれる。なお、現地価格や為替相場等の動向等によっては、輸入量を左右する 輸入価格の変動もあり得るため、今後の動向を注視していく必要がある。 価格 最近の動向 卸売価格(省令規格)は、BSE発生後は前年度を大きく上回って推移している。 14年度の見通し 14年度は、消費量および国内生産量が前年度並みと見込まれることから、豚枝肉 卸売価格(省令規格)は、前年度並みと見込まれる。
消費 最近の動向 1人当たり消費量(供給純食料)は、近年10キログラム前後でほぼ横ばいで推移 している。13年度の1人当たりの家計購入数量は、牛肉の代替需要の影響から3.1% 増の3.7キログラムとなった。 14年度の見通し 14年度の鶏肉の家計消費量は、牛肉の代替需要の影響が継続することから前年度 並みと見込まれる。なお、消費水準は牛肉の需要回復とともに平年並みに戻ると見 込まれる。加工・外食等消費量は、調理食品や中食等の需要が堅調であることから、 前年度並みと見込まれる。この結果、14年度の鶏肉の1人当たり消費量は、前年度 並みと見込まれるが、消費動向については、食肉間の相対的な価格の変動や消費者 のし好の変化に伴う牛肉や豚肉といった他の食肉との代替の可能性についても注視 する必要がある。 供給 −国内生産− 最近の動向 鶏肉生産量は、飼養農家戸数等の減少や輸入鶏肉の増加等の影響を受け減少傾向 で推移している。13年度は牛肉の代替需要の影響により、12月以降増加し、通年で は前年度並みの120万トンとなった。 14年度の見通し 14年度の鶏肉生産量は、飼養戸数の減少による飼養羽数の減少が継続するとみら れるものの、国産鶏肉の卸売価格が堅調であることから生産意欲が高まり、最近の ひなえ付け羽数は前年同月を上回る月がみられることから、前年度並みと見込まれ る。 −輸 入− 最近の動向 輸入量は、増加傾向で推移している。13年度は鶏肉が0.2%増、鶏肉調製品が19.1 %増となり、全体では2.4%増の70万トン(骨付き肉ベース)となった。 14年度の見通し 14年度は、消費量が前年度並みと見込まれる中、国内生産量が前年度並みと見込 まれるものの、引き続き調製品を中心に安価な輸入品への需要が高まるとみられる ことから、鶏肉(調製品を含む)の輸入量は、13年度に比べわずかに増加すると見 込まれる。なお、現地価格や為替相場等の動向等によっては、輸入量を左右する輸 入価格の変動もあり得るため、今後の動向を注視していく必要がある。 価格 最近の動向 卸売価格は、もも肉についてはおおむね安定的に推移。13年度は夏までは低価格 で推移、その後高い水準で推移し期間全体では0.5%安の1キログラム当たり609円 となった。むね肉については輸入品との競合で下落傾向で推移。13年度は国際価格 の上昇や牛肉の代替需要により37.1%高の1キログラム当たり263円となった。 14年度の見通し 14年度は、消費量が前年度並みで推移すると見込まれる中、国内生産量は前年度 並み、輸入はわずかに増加すると見込まれることから、ブロイラーの正肉卸売価格 は、前年度並みないしはわずかに下回ると見込まれる。 14年度の加工食品の小売動向(千人当たり販売金額) カレールーや焼肉のたれ等の食肉関連の加工食品について主要スーパーにおける 販売状況を見ると、13年9月〜10月に販売金額に大きな低下がみられた。11月以降、 多くのものは回復傾向にあるが、コンビーフやジャーキーは、その動きが鈍い傾向 にある。 資料:農林水産省調べ 外食市場の動向 最近の外食市場の動向を見ると、新規出店を含めた全店ベースでは全体的に積極 的な出店傾向がみられることから、売上高は総じて前年を上回っているが、既存店 ベースでは客単価の低下が続いており、売上高は前年を下回って推移している。 このうち、焼肉ファミリーレストランについては、13年4月〜8月は、前年と比べ 客単価が低下傾向で推移するとともに客数も減少したことから、売上高は前年を下 回って推移していたが、その後、BSE発生の影響を受け13年10月には客数が45.3% 減、売上高が46.3%減と大幅に低下した。11月以降、徐々に回復傾向で推移してい るが、郊外型、家族連れをターゲットにしている店舗の回復が遅いこと等から、14 年4月においても客数が24.6%減、売上が23.0%減となっている。 牛丼店を含む和風ファーストフードは、大手チェーン店の安売りによる客単価の 低下が客数の増加につながり、売上高は比較的堅調に推移していたが、10月には客 数の伸びの低下により売上高がマイナスに転じた。その後は、客数が順調に増加し たことから売上は回復傾向にあり、14年2月には売上は前年並みとなった。3月は客 単価の低下により、また4月は昨年より休日が1日少なかったこと等が影響し、それ ぞれ売上は昨年を下回っている。 外食市場の動向(業種別・増減率) 資料:(社)日本フードサービス協会「外食市場動向調査」 注:既存店ベースの数字である
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