北海道/福井 文雄
標津町は、北海道の東端知床半島の根元部分に位置する人口6,400人の町。主 な産業は酪農を中心とした農業と秋鮭・ホタテを中心とした水産業である。 酪農は乳用牛約20,000頭が飼育されており、年間の生乳生産量は約9,000万リ ットルで、そのほとんどがチーズの原料として出荷されている。 酪農は生きた牛が相手であるため、1年中家を空けられないのが現実である。 このため昭和49年に標津町農業協同組合青年部が中心となり冠婚葬祭、事故、疾 病時のピンチヒッターとして他の農業者が農作業にあたる仕組みを作ったのが本 町のヘルパー事業の始まりである。 それから27年が経過し、現在は標津町農業協同組合内にヘルパー専任職員5名、 臨時職員10名を要し年間利用延べ日数は1,250日と、標津町農業をサポートする 重要な取組となっている。 近年、本州方面から本町の酪農家に嫁ぐ女性が多く見受けられるようになった。 それにつれ、出産時には一時帰省する例が多くなっている。現在の酪農は機械化 等が進んでいるとはいえ手作業を必要とする部分もあり、そのきめ細かい作業を 農家の若奥さんが担当していることが多い。 このため標津町農業協同組合では平成14年度から「酪農ヘルパー里帰り補助」 と題し、里帰りする酪農家の若奥さんの代わりに酪農家にヘルパーを派遣する事 業を開始した。その内容についてはヘルパー1名を5日間にわたり派遣し、かかっ た利用料(1日1名1万5千円)の半分を農協が補助するものであり、現在まで2戸 の酪農家が利用している。 息子の嫁が本州から嫁いだ酪農家のAさんは「現在の酪農は国際競争の中、コ スト削減が勝負、そんな中このような暖かい思いやりの事業を行ってくれた農協 に大変感謝している。」と語る。また、若奥さんは「この事業ができて私は安心 して里帰りできます。」と言い、利用者は大変感謝している様子である。事業創 設者である標津町農業協同組合佐々木組合長は「本町には本州等遠方から嫁いで きた方が大勢います。遠方から嫁いできた方々が心細い思いをしないように、ま た、時には実家のお父さんお母さんに元気な顔を見せてきなさい。そんな思いで この事業をスタートさせました。」と事業開始のきっかけを語る。 今後、酪農は大規模化せざるを得なくなるものと予想されるが、酪農が大規模 になればなるほど酪農家は経営に追われて、生活のゆとりがなくなる。そんな時、 地域の人々が互いに助け合う基本理念で標津町酪農の未来を支えていけばと地域 の人々は考えている。
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【機械化が進む搾乳作業】 |
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【大型化、効率化が進む牧草収穫】 |