長崎県/峰 靖彦
長崎県対馬は九州と朝鮮半島の間に位置し、韓国までの最短距離が50キロメー トルという国境の島で、平坦地に乏しくみどりの多い急峻な山間に「対馬あか牛」 は育っている。 対馬では、古くから農耕用として牛は飼育されてきたが、近年農業の機械化と ともに肉用としての飼養が主となり、昭和61年からは肥育も開始された。 このように、対馬ではあか牛の姿が散見されるにもかかわらず、と畜場がない ため肥育牛は福岡へ出荷され、肉として島内に流通していなかった。「対馬あか 牛」の肉の小売りや飲食店での取り扱いが出来れば地産地消はもとより、島の新 たな特産品としても期待できると産直に取り組むこととした。平成13年9月に取 り組みを開始したが、BSE騒動でしばらく動きがとれない状況にあった。13年12 月、今こそ島の特性を活かし生産者の顔が見える安全、安心の牛肉を販売するた めにも地元産の牛肉が必要との思いから、販売を開始した。 消費者には「脂身が少ない安全、安心、ヘルシーな牛肉」と好評である。また、 当初から販売に携わっている販売店の店長も「対馬あか牛は地域に密着した牛肉 なので、自信を持って売ることができる。今後、販売量も増やしていきたい。」 と力強く語っている。現在、スーパーでの販売も4カ所に増え、4月からは飲食店 での取り扱いも開始された。 今後の課題は、「対馬あか牛」の需要に見合った供給量を確保できるかにあり、 以下の問題点を解決する必要がある。 @ 島内2カ所の肥育施設が肥育頭数100 頭弱と小規模のため、安定した肥育牛 の供給に問題がある。 A 島という立地条件から1頭当たりの輸送コストを削減する必要があり、頭数 がまとまってから出荷を行うため出荷間隔が不定期となりがちである。 対馬の肉用牛飼養頭数は、飼養者の高齢化と子牛価格の低迷等から減少し、66 2頭(平成14年4月1日現在、県畜産課調べ)と危機的状況にある。 今後は、島内肥育頭数を150頭規模まで回復させ、年間120頭出荷される肥育牛 をすべて島内で消費する体制を確立する。このことにより、肥育農家の経営を安 定させるとともに子牛市場の価格と繁殖経営の安定を目指し、「対馬あか牛」の 増頭へとつなげていく計画である。
【日高店長と「対馬あか牛」販売風景】 |
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対馬のみどりあふれる自然の 中で育てた対馬あか牛です 【生産者の写真を販売店に掲示している】 |