◎地域便り


青森県 ●工夫した公共牧場を核とする耕畜連携による肉用牛の振興−車力村の事例−

青森県/豊澤 直子


 車力村の畜産農家は20戸で、このうち16戸が黒毛和種繁殖雌牛193頭を飼養
する繁殖経営農家であり、全戸が車力村畜産振興協議会で運営管理する村営屏
風山牧場を利用している。

 家畜保健衛生所では人工授精普及による改良促進を図ることとし、平成4年
から放牧場内での発情同期化による人工授精を指導してきたところ、これを契
機に、人工授精師免許の取得(村内7名の人工授精師誕生)や繁殖基礎牛とし
て県外から優良牛の導入が図られるなど改良意欲が高まってきた。

 これらを背景に人工授精普及率100パーセント、肉用牛繁殖経営の確立を目
標に掲げ、畜産基地建設事業(H5〜9年草地造成面積88ヘクタール)により、
パドックを中心に牧区を放射線状に配置し、人工授精、放牧衛生対策等作業し
やすい放牧場が整備された。

 放牧場では、5月から7月までの毎日、農家と人工授精師の2人が1組となった
班を構成し、交代で朝と夕方の2回発情を確認し、人工授精を実施し、その普
及率も11年度には100パーセントに達した。家畜保健衛生所等が開催する講習
会にも多数の農家が意欲的に参加し、生産意欲や技術の向上が図られるととも
に、分娩後の人工授精回数の減少や受胎率の飛躍的な向上も認められている。

 平成13年4月には、全国和牛登録協会から「和牛改良組合」の認定を受け、
若手を中心に国際化や産地間競争に打ち勝つ生産地として更なる飛躍を目指し
ているところである。

 BSE発生後の子牛価格の低迷が続いた時期にも、肉用牛の生産意欲は衰える
ことはなく、規模拡大を希望する6戸がその牛舎を放牧場敷地内に移転させる
など、安心して飼養管理できる環境の整備も進んでいる。

 また、各畜舎から排出されるふん尿は、地元の野菜振興会との連携による良
質たいきゅう肥の生産、流通を進めるため、牧場内に設置しているたい肥セン
ターで一元的に処理され、地域循環型農家として、村内野菜農家を中心に、有
機や減農薬・減化学肥料栽培等環境にも配慮した生産が展開されている。
【村営屏風山牧場、農家と人工
授精師2人一組で確実に技術向
上を図る】
人工授精普及率

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