トピックス

●●●国産牛肉、高値基調で推移●●●

 低等位級の牛肉の卸売価格は11月に入ってからも高値基調で推移している。
11月第1週の平均で、和牛Aー3が1,860円/kg、A−2が1,692円/kg(東京、
速報値)となっている。省令価格も同様に11月第1週からは平成14年度安定上
位価格を約1年ぶりに上回った(図1)。対前年同月比、9月以降は対前々年同
月比でみても卸売価格は上回って推移していることから、BSE確認以前の水準
に戻ったと言える(図2)。

 輸入牛肉の市況は、9月末から約2週間の米国の港湾ストの影響から、上げ気
配ではあったが、国産志向に押されて、品薄感からの高騰は見られなかった。
関東のチルド輸入牛肉現物仲間相場によると手当買いで豪州産輸入牛肉の仲間
相場も全般的に上げ気配になっていたが、現在は落ち着きを取り戻した様子で
ある(表1)。

表1 輸入仲間相場

資料:農畜産業振興事業団調べ
◇図1:牛肉の卸売価格(和去勢、省令、東京)◇
◇図2:牛肉の卸売価格(和去勢、東京、前年比)◇


●●●9月冷凍豚肉輸入量、46.9%の大幅増●●●

 貿易統計(財務省)によると9月の豚肉輸入量は、48,671トン(32.0%)。
ちなみに13年9月の豚肉輸入量は、36,867トン。13年、14年ともに8月1日から
関税緊急措置が発動しており、同じ発動下でありながら大幅な増加となった。

 内訳を見ると、冷蔵品は15,381トン(8.2%)と前年同月よりも1割弱増加し
た一方、冷凍品は、33,250トン(46.9%)と5割弱の増加となっている(図3)。

 また、9月のソーセージの輸入量を見ると2,623トン(95.7%)と大幅に増加
しており、14年4月からの累計では15,796トン(51.3%)と増加傾向にある
(図4)。豚肉の牛肉代替需要は収束を迎えたものの、ソーセージの輸入需要
は引き続き強い様子が伺える。
◇図3:豚肉の冷蔵品、冷凍品別輸入量とCIF◇
◇図4:ソーセージ輸入量の前年同月比の推移◇


●●●自己回帰モデルによる豚出荷頭数の予測について●●●

1 現在、豚の出荷頭数の予測については、農林水産省生産局畜産部食肉鶏卵 
 課において、月別の子豚分娩頭数から哺育・育成、肥育期間等を勘案し、数 
 値の積み上げ方式により、予測されているところである。この方式は合理的 
 であるが、多くのデータの収集を要するので、個人レベルで計算するには難 
 しい。

  この方法とは全く別に、個人レベルで簡便に予測できる、時系列分析法の 
 うちの自己回帰モデルという統計的手法を紹介する。 

2 自己回帰モデルの考え方

 自己回帰モデルは、現実の経済現象をランダムな確率的変動としてとらえ、 
この経済現象に係る時系列データが確率的変動として、相互に影響し合ってい 
るとして、確率過程論に基づく統計モデルである。この統計モデルは、その経 
済現象がどのようなものであるにせよ、その経済構造を一つのブラックボック 
スとしてとらえ、そこから得られる変数のメカニズムによって記述することが 
できるという特徴を持っている。いわば、過去の自己自身の変動によって現在 
を説明するのである。従って、個別具体的な構造の規定要因が作用するメカニ 
ズムが把握されない点には注意が必要である。使用するデータは1種類である。 
ただ、ある程度長時間のデータを採用することが必要である。 

 ここで、時系列データXについて当期の値が過去のXの加重和と純粋にランダ 
ムな部分との和で表せる次のモデルを考える。これを自己回帰モデルという。 

X'=a0+a1.X(−1)+a2.X(−2)+・・・+ak.X(−k)+誤差項・・・・@ 
 (−1は当該期の1期前、−kは当該期のk期前を、a0,a1,a2,・・・・,akはパ 
  ラメータを意味する。)

 このモデルは、データの過去の時系列の法則性を読み取り、将来を予測する 
モデルと言える。 

3 ランダム・データ

 自己回帰モデルの適用に際しては、データの動きがランダムな状況で、定常 
的である(傾向的変化がない)ことが前提となっている。 

 今回は、出荷頭数の前年同月比をとり、これをおおむね定常なデータとして 
捉え、自己回帰モデルを計算する。   

4 情報量基準によるモデルの次数の決定

 定常データから自己回帰モデル@を求めるには、Sk=Σn[X−X']2が最小と 
なるように次数kとパラメータ(a0,a1,a2,・・・・,ak)を定める必要がある。 

 Skは、残差平方和である。 

kの値を求めるため、赤池情報量基準(AIC)を用いる。AICは、 
AIC=nlogSk+2(k+1)・・・・・A 
で表せる。

 ここで、AICが最小のときのパラメータを採用することになる。 

5 演算

 今回検討する豚の出荷頭数については、農林水産省の「食肉流通統計」のう 
ちの屠殺頭数の月次データ値をもって出荷頭数とし、この前年同月比を使用す 
る。 

(今回のデータ採用期間は、94年10月〜2002年9月までである。) 

 これより、AICが最小となったk=13を採用し、これから各パラメータを決め 
る。  こうして、求められた自己回帰モデル式は以下のとおりである。 
X'=98.507−0.069.X(−1)+0.0.77.X(−2)+0.425.X(−3)+0.123.X 
(−4)+186.X(−5)+0.079.X(−6)+0.041.X(−7)−0.177.X(−8) 
+0.310.X(−9)+0.033.X(−10)+0.175.X(−11)−0.228.X(−12) 
−0.280.X(−13) AIC=222.64

 この求められた予測式X'による前年同月比の推定値と過去の実績値と比較し 
てみると図5のとおりとなる。この式により将来の前年同月比のある程度の予 
測が可能となる。 

予測値

(参考文献) 
1 「計量経済分析の基礎と応用」刈屋武昭監修、日本銀行調査局編 
2 鈴木義一郎「データ解析術」
◇図5:豚出荷頭数前年同月比 実績と予測◇


●●●14年度鶏肉輸入量は、50万トン程度を予測●●●

 平成14年9月30日に全国ブロイラー需給調整会議が開催された。公表された
14年度の鶏肉等需給見通しは表2のとおりである。14年度のブロイラー出荷計
画は、主要3県(岩手、宮崎、鹿児島)の合計がほぼ前年度と同数値と予想さ
れ、これら3県は全体の出荷羽数の53%強を占めるため、前年度比100.5%で推
移すると予測している。一方、14年度の鶏肉輸入量は昨年度を1割程度下回る
50万トン程度、鶏肉調製品は昨年度を大幅に上回り17万1千トンを予測してい
る。国別に見ると、中国からは疾病問題等で年度後半毎月1万トン程度、タイ
産は中国産の代替により年度後半1万6千トン程度が見込まれ、ブラジル産は年
度後半3〜4千トン程度が予測され、米国産は輸入停止措置等で先行き不透明で
あるが、年度計で3万5千トン程度が予測されるとのことであった。

 需給の全体を見ると、需要量では家計消費が前年度を5%弱増加し、加工業
務用はほぼ変わらずで推移し、一方供給量では国内生産量が1%程度増加し、
鶏肉輸入は9%程度減少するものの、調製品は26%も大幅に増加すると予想さ
れ、需給はほぼ拮抗するのではとのことであった。

表2 14年度鶏肉需給見通し(正肉ベース)
資料:全国ブロイラー需給調整会議資料

●●●社団法人日本食鳥協会が「鶏肉表示のガイドライン」を会員に通知●●●

 平成14年3月、鶏肉表示についてJAS法および食品衛生法の表示義務に
違反した企業が問題となり、消費者にわかりにくい表示、消費者に誤認を与え
る表示があることが明白となった。そこで(社)日本食鳥協会は自主ルールと
して「鶏肉表示ガイドライン」を作成し、10月15日付けで会員に通知した。完
全実施は15年2月からとしている。
構成は次のようになっている。

@ 「特別飼育鶏」の定義および表示(無薬鶏、無投薬鶏、と表示しているが、
 ワクチンの投与は行っているため、消費者に誤認を与える恐れがある。)

A 地名を冠した銘柄鶏・地鶏の産地表示(地名を冠した銘柄鶏・地鶏が飼養
 地と一致しない場合は「飼養地」を明記する。)

B 「熟成むね肉」の定義(骨付きのまま数時間冷蔵(熟成)させ、その後解
 体処理されたむね肉をいう。むね肉の消費拡大につながる。)

C 「成鶏肉」および「種鶏肉」の表示

(1)成鶏肉(採卵鶏を原料としたもの)には、「親」を冠とする。
(2)種鶏肉(肉用種の種鶏を原料としたもの)には、「種鶏」を冠とする。

D 流通段階での凍結品の表示(流通段階でやむを得ず保存方法を変更したも
 のは、追加情報として、凍結品等の表示を行い、従前の表示は消さないこと。)

E 国産銘柄鶏の定義および表示(通常の鶏肉とは異なる差別化を図るための
 ものであり、地鶏は特定JAS規格に準じ、銘柄鶏は飼養地、生産の方法、内
 容量、消費期限等を表示する。)
 

●●●13年の食肉消費構成割合●●●

 この程農林水産省生産局食肉鶏卵課は、平成13年次の食肉消費構成割合を
取りまとめた。畜種により、前年とは大きな違いが見られた。牛肉については、
BSE問題が大きく影響し、さらに家庭での調理機会の減少も加わり家計消費割
合が前年を4ポイントも低下した反面、外食・そうざい向け等その他が前年を3
ポイント上回った。加工向けについては1ポイント上回り、牛肉の加工利用の
難しさを徐々に克服してきているとも考えられる。

 豚肉では、BSEの影響で代替需要があり、消費構成割合が家計消費で前年を1
ポイント上昇し、外食・そうざい向け等その他も1ポイント上昇した反面、ハ
ム・ソーセージやハンバーグ・ハンバーガーの需要の伸び悩みにより加工仕向
けが2ポイント下回った。

 鶏肉については、BSEによる代替需要の影響は試算には表われていない結果
となり、構成割合は家計消費、加工仕向け、外食・そうざい向け等その他いず
れも前年と同じ数値となった。これは年前半に中国産鶏肉等の衛生問題等から
消費が伸びなかったため、9月からのBSE特需が入っても年間では前年並みの構
成比となった。
◇図6:食肉の消費構成割合の推移◇


●●●ヨーグルト市場、健康志向の波に乗る●●●

 乳業各社が製造した「はっ酵乳」の生産量は、「牛乳乳製品統計」(農林水
産省)によると14年度累計(4〜9月)では42万7千kl、前年同期を16.7%と大
幅に上回り、非乳業各社が製造した「はっ酵乳」の生産量(農林水産省委託調
査)も6万7千kl、3.2%とかなりの程度上回った(図7)。

 乳業各社が製造した「乳酸菌飲料」の生産量は、「牛乳乳製品統計」(農林
水産省)によると14年度累計(4〜9月)では10万kl、前年同期を1.1%とわず
かに上回り、非乳業各社が製造した「乳酸菌飲料」の生産量(農林水産省委託
調査)も23万5千kl、8.2%とかなりの程度上回った(図8)。

 POSデータで消費動向を見ると、調査対象の688店舗(9月現在)における千
人当たりの販売数量の対前年同月比は、「はっ酵乳」は20.9%と大幅に上回っ
たが、「乳酸菌飲料」は▲4.4%とやや下回った。「乳酸菌飲料」の生産量と
POSデータの消費動向の乖離は、乳酸菌飲料を主体としている非乳業メーカ
ーが訪問販売を中心に拡大しているためと思われる(図9)。

 ヨーグルト市場はここ2年ほどは停滞していたが、14年3月、テレビの情報番
組の広報効果が火付け役となって健康志向の波に乗り、乳業会社もこの機をと
らえて販促を強化したことから、需要層が確実に拡大している。各タイプごと
にそれぞれ他の商品との競合が避けられない中、ヨーグルトの特性としてのプ
ロバイオティックス(人間の腸に存在し、人体に有用な働きをする乳酸菌)に
よる機能性を重視した市場戦略がより一層強まるとみられている。
◇図7:はっ酵乳生産量(対前年同月増減率、%)◇
◇図8:乳酸菌飲料生産量(対前年増減率、%)◇
◇図9:はっ酵乳・乳酸菌飲料の消費動向(POS)◇


●●●鶏卵卸売価格、相場は堅調に推移●●●

 14年3月までの約2年間、低迷していた鶏卵卸売価格(東京、M)は、4月以降
前年同月を上回る回復基調にあり、9月以降はかなり大きく上回って推移して
いる(図10)。

 例年、学校給食の再開と行楽シーズンで需要が伸びる9月の平均卸売価格は、
197円/Kg(13.2%)。10月は前月とほぼ同価格の196円/Kg(12.6%)と2カ
月連続でかなり堅調な相場となっている。11月に入っても昨年11月13日の相場
は175円/Kgであったのに対し、今年は198円/Kg(13.1%)とかなり大きく値
を上げている。

 これは、採卵鶏は150日齢から産卵を開始し、180〜210日齢で産卵のピーク
を迎えることから、13年12月から14年6月にかけてひなえ付け羽数がおおむね
前年同月を下回って推移していたことが1つの原因と考えられる。

 今後は年末にかけてケーキや鍋物用練り製品、おせち料理用として、需要が
強まる時節を迎えることから、引き続き堅調に推移するものと思われる。
◇図10:鶏卵卸売価格の推移◇


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