宮崎県/農政水産部畜産課
はじめに 宮崎県においては、本県の酪農および肉用牛生産の振興を図るために、「宮崎 県酪農・肉用牛生産近代化計画」を平成13年3月に作成し、公表した。 本計画は、11年7月16日に施行された「食料・農業・農村基本法」の基本理念 を踏まえ、第5次宮崎県農業・農村振興長期計画等との整合性を保ちながら、個 々の経営体の主体的な努力を基本として、関係機関・団体が一丸となって「土・ 草・牛」という生産要素が調和する土地基盤に立脚した足腰の強い産業としての 育成を図るとともに、消費者ニーズに対応した安心・安全で高品質な牛乳・乳製 品および牛肉を安定的に供給するなど、生産から流通段階の各部門が連携を一層 強化し、資源循環型酪農および肉用牛生産の振興と、生産から流通までを含めた 効率化・合理化を総合的に推進するものである。 酪農および肉用牛生産の近代化に関する方針 1酪農 生乳の計画生産を基本として、自給飼料の活用や家畜排せつ物の適正な処理を 図るための土地基盤の確保、経営規模の拡大および省力的な飼養管理技術の導入 等によるゆとりある生産性の高い経営体を創出する。 また、経営の実態に応じた黒毛和種の受精卵活用や交雑種生産への取り組み、 防暑対策の強化等による生乳需要期の生産量の確保に努め、経営基盤の強化を図 るとともに、消費者ニーズに対応した牛乳・乳製品の生産および消費拡大等を推 進する。 2肉用牛 中核的な経営体の育成、ヘルパー組織等の育成・強化、山間地域における肉用 牛支援システムの構築を図りながら、改良の促進、飼養管理等の改善に努め、太 りやすく、飼いやすく、肉質が良い「宮崎牛」の生産拡大を目指す。 また、衛生面で高度に整備された産地食肉処理施設を中心とした一元集荷・多 元販売体制を強化し、「宮崎牛」の一層の販売力強化を図る。 〔繁殖経営〕 自給粗飼料を最大限に活用した適切な飼養管理と家畜排せつ物の経営内利用を 基本に生産条件の整備を図り、分娩間隔の短縮、早期出荷等の推進により生産コ ストの低減に努める。 〔肥育経営〕 耕種農家との連携を図り、国産稲わらの活用や家畜排せつ物の経営内、経営外 利用を基本に生産条件の整備を図り、増体性の改善や合理的な生産技術の導入を 推進し、生産コストの低減と肉質の斉一性の向上に努める。 3飼料作物生産 転作田や水田裏での作付け拡大を始め、飼料生産基盤の整備、飼料生産の組織 化および外部化の推進、畜産農家への農用地の利用権の集積等を図るとともに、 天候に左右されにくい飼料生産技術の導入や貯蔵施設の整備等を推進することに より、飼料増産と有効活用を目指す。 4衛生対策 生産者の家畜衛生意識の高揚、衛生管理指導の強化および検査体制の整備等に より、予防衛生対策の充実強化を図るとともに、海外から侵入する恐れのある伝 染病に対する危機管理体制の強化を図る。 また、安全性を求める消費者ニーズに対応して、HACCP手法を取り入れた牛乳 乳製品および食肉処理の推進、生産段階におけるHACCP手法の開発・普及、動物 用医薬品および飼料添加剤の適正使用の徹底等により、畜産物の安全性の確保を 図る。 生乳の生産数量の目標ならびに乳牛および肉用牛の飼養頭数の目標 1生乳の生産数量 ◇現状(10年度) 126,303トン ※経産牛1頭当たり年間搾乳量 6,864s ◆目標(22年度) 143,500トン ※伸び率:113.6% ※経産牛1頭当たり年間搾乳量 8,300sあ 2乳牛の飼養頭数 ◇現状(10年度) 24,200頭 (うち、成牛18,600頭) ◆目標(22年度) 24,000頭 (うち、成牛18,200頭) ※伸び率:99.2%(うち、成牛97.8%) 3肉用牛の飼養頭数 ◇現状(10年度) 245,400頭 (うち、繁殖雌牛92,500頭) ◆目標(22年度) 292,000頭 (うち、繁殖雌牛103,000頭) ※伸び率:119.0% (うち、繁殖雌牛111.4%) 近代的な酪農経営方式および肉用牛経営方式の指標 1酪農経営方式(2タイプ) 2肉用牛経営方式(7タイプ) ○繁殖経営 ○肥育経営(肉専用種) ○肥育経営(乳用種) ○繁殖肥育一貫経営 乳牛及び肉用牛の飼養規模の拡大に関する事項 1乳牛 (1)乳牛の飼養規模 ◇現在(10年度):39.7頭 ◆目標(22年度):55.8頭 (2)飼養規模拡大のための措置 ・ヘルパー制度の普及・定着等によるゆとりある酪農の推進 ・生乳生産枠の流動化等による意欲ある経営体の育成 ・飼養管理作業の省力化と飼養管理技術の向上 ・飼料基盤の確保および飼料自給率の向上 ・公共育成牧場の強化育成 ・性判別受精卵など新技術の活用推進 2肉用牛 (1)肉用牛の飼養規模 ◇現在(10年度):16.6頭 ◆目標(22年度):27.3頭 (2)飼養規模拡大のための措置 ・意欲ある担い手の育成 ・粗飼料の生産・利用の合理化および飼料自給率の向上 ・生産および経営管理技術の改善 ・新技術や効率的な生産方式の導入 ・肉用牛の導入および低コスト施設等の整備の推進 ・山間農業地域における生産支援システムの構築 ・経営管理能力の向上 飼料の自給度の向上に関する事項 1飼料の需要見込量と供給計画 (1)飼料作物作付等面積 ◇現状(10年度)32,175ヘクタール ◆目標(22年度)37,485ヘクタール (2)飼料自給率 ◇現状(10年度):46% ◆目標(22年度):53% 2飼料基盤の確保 ・飼料基盤の造成・整備 ・酪農および肉用牛経営への土地利用集積 ・山林原野および農場副産物等の有効利用 ・飼料の生産性および利用率の向上 集乳および乳業の合理化ならびに肉用牛および 牛肉の流通の合理化に関する事項 1生乳流通の合理化 ・九州生乳販売農業協同組合連合会の機能強化や集送乳施設・ローリー等の整 備による集送乳の合理化 ・酪農家と一体となった組織的な取り組みによる乳質改善および新たな乳成分 取引の普及・定着 2乳業の合理化 ・乳業再編宮崎県ビジョンに沿った乳業施設の合理化 ・九州生乳販売農業協同組合連合会による生乳需給調整機能の整備および県内 既存施設の有効活用による余乳処理の合理化 ・牛乳普及協会を中心に関係者が一体となった牛乳・乳製品の消費拡大の推進 3肉用牛および牛肉の流通の合理化 ・家畜市場の機能の高度化による効率的な取引の推進 ・宮崎県食肉処理流通合理化計画に基づく衛生的で合理的な食肉処理施設整備 の推進 ・県内外への積極的なPRによる宮崎県産牛肉の消費拡大の推進 その他酪農経営および肉用牛生産の近代化を図るために必要な事項 1家畜の改良増殖および新技術・効率的な生産方式の開発・普及 ・家畜改良増殖目標に沿った能力の高い乳用雌牛群の整備 ・優秀種雄牛の造成(産肉能力検定の充実、育種価の活用、受精卵移植技術の 活用等) ・飼養方式(フリーストール、ミルキングパーラー、搾乳ロボット)に適応し た牛群の斉一化 ・受精卵の性判別や核移植技術の実用化、マーカーアシスト選抜の開発 2経営・技術指導 ・経営感覚に優れた畜産経営者の育成・経営体の法人化の推進 ・経営改善指導の徹底 ・生産・流通・販売等の情報システムづくりの推進 3畜産経営支援組織の育成 ・ヘルパー組織やコントラクターの育成および活用の推進 ・地域営農活動の組織化 ・共同利用施設や機械銀行等の充実強化による効率的な機械施設の利用の推進 4家畜衛生および畜産物の安全性の確保 (1)家畜衛生 ・生産衛生管理体制の整備充実 ・伝染病まん延防止対策の強化 ・伝染性疾病発生予察等の実施を含めた監視体制の強化と危機管理体制の構築 (2)畜産物の安全性確保 ・牛乳乳製品工場および食肉処理場でのHACCP手法の推進 ・農場段階でのHACCP手法の開発・普及 ・動物用医薬品および飼料添加剤の適正使用の徹底 5環境保全への適切な対応 ・家畜排せつ物処理利用施設の計画的な整備 ・耕畜連携によるたい肥等の利用促進 ・低コスト排せつ物処理技術の開発・普及 ・畜産環境アドバイザーの育成と指導体制の強化 6その他必要な事項 ・畜産試験場、優良家畜受精卵センター等試験研究機関の充実と新技術の開発 促進 ・生産者と消費者のパートナーシップの構築、女性の役割評価と参画の促進
【資源循環型農業を基本として 安全・安心で高品質な 「宮崎牛」の生産】 |