◎地域便り


農場の顔を「看板」で表現  

北海道/田中義春 


 オホーツク海に面した北海道網走管内雄武町は紋別市から約40キロメートル程
離れた場所に位置している。この町では牧場周辺の環境を整えるため、中山間地
域等直接支払制度を活用し、牧場をPRするための看板を設置した。雄武町の酪農
家を中心に農場の顔である看板を中心とした景観の美化、敷地舗装などに取り組
んでいる。

 事業の実施に当たり、町やJA、興部地区農業改良普及センターが連携し、地域
の人たちと話し合いを重ね計画が作成された。

 その結果、既にオリジナルの看板を設置している農家を除いた98戸が新たに建
てることができた。看板設置の費用は1戸につき17万円前後である。

 看板の選択には、それぞれの家族や地域の中で話し合いを持ち、地域での一体
感を持たせるためにも、価格についての合理化からも数種類の中からそれぞれ統
一したものを選定し、絵や文字、レイアウトを個性あふれるものを選択し、決定
した。

 看板の中には「Welcome」の文字や、「牛横断に注意」などの個性的な表現が
加えられたため、国道238号を通る消費者や観光客が、看板に興味を抱き、看板
を背景に記念写真を撮ったり、看板がきっかけで牧場内に立ち寄ることもあるそ
うである。

 意外なことに、看板には消費者との交流を生み出す力があり、牧場に新たな人
との出会いをもたらしている。このような消費者とのかかわりが消費者の声を聞
くチャンスであり、生産者にとって生産意欲を大いに刺激される機会となってい
る。

 これらの刺激が波及して牧場の周辺では、家族ぐるみで看板周辺の整備や花壇
作りに精力的に取り組み、牧場入口から牛舎まで、または牧場入口から住居まで
をプランターを利用したフラワーロードにしている。

 また、5地区48戸は自宅および牛舎周辺の舗装を実施し、乳質改善に取り組ん
でいる。一方、3地区19戸はスプレアを共同購入して牛舎消毒を行っている。生
産だけでなく、「消費者から見た牛乳」を事業を活用して地域ぐるみで実践して
いる。

 今後、看板に思いを込めて、安全でおいしい牛乳生産や、畜舎内外の環境改善
など、人と牛にやさしい環境作りが期待される。
【道路沿いに設置された看板で
観光客にもアピール】

    
【設置したばかりの看板の下にも
花がいっぱい】

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