新潟県/企画情報部
西蒲原郡岩室村の有限会社フジタファームは搾乳牛100頭、育成牛35頭を擁す る農業生産法人。その代表取締役・藤田毅さん(44歳)はもう1つの農業生産法 人有限会社米工房(阿部公男代表取締役)にも参画している。 平成13年、米工房では主食用水稲21ヘクタールのほかに稲発酵粗飼料を20ヘク タール作付け、その全量をフジタファームに納入した。 フジタファームの1頭当たりの搾乳量は年間8500キログラム程度と抑え目だが、 これは事故率の低下を図るためである。牛についてはとにかく無理をさせず、フ リーストールの牛舎にもまだ余裕を残しながら、粗飼料を中心に飼育している。 それ故にえさとなると、長年付き合ってきた商社でも言いなりにならない。カナ ダからのチモシー、アメリカからのアルファについても購入に際しては現地に出 掛け、採草の場所に至るまで指定した上で契約した。その量は年間で500トン。 しかし、どんなにコストを抑えようとしても限界がある。そこで稲発酵粗飼料の 導入を決断したのだが、ここからが2つの農業生産法人をまたに掛けるようにし ての一人二役。まず、移植は4ヘクタールぐらいに抑え、直播を16ヘクタールに して稲発酵粗飼料生産のコスト低減を図った。これは米工房経営陣としての仕事 だ。一方、フジタファーム代表として意を砕くのは牛ふんたい肥の生産である。 米工房が抱える水田の多くは有機質が貧弱な状態で、良質なたい肥をたっぷりと 入れないことにはおいしい米づくりは望めなかった。だが、預かって10年もする と地力は著しく回復し、化学肥料を全く必要としないまでになる。こうしたたい 肥投入は「米工房にとっての将来財産」。米価低落が続く時代にあってもそれな りの価格で直販できるのは他でもない、良質たい肥を生産の出発点にしているか らだ。稲発酵粗飼料については「まだまだ改良の余地が残されている」と思う。 栄養価は牧草の方に若干ではあるが軍配が上がる。しかし牛の嗜好性の高いのは 最大のメリットであろう。要は組み合わせだ。アルファルファ等と併せて給じす ることで、無脂固形分の高い生乳をつくり、それが独自の乳製品製造につながっ ていくことが期待される。 フジタファームの牛舎と米工房の事務所は路地を挟んでの向かい合わせ。直販 米を受け取りにきた宅急便の青年が言った。「牛が近くにいると有機米という感 じがしますね」と。藤田さんは思わずニッコリとうなずいた。
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【乳牛を飼養する畜舎の中で】 |
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【飼料用稲を栽培する水田】 |