◎今月の話題


畜産の新しい発展を期して

畜産業振興事業団 理事長 山本 徹






 平成14年を迎え、新春のお慶びを申し上げます。

 バブル経済崩壊後、日本経済は停滞を続け、経済・社会の不透明感や持続的な  
物価下落によるデフレ傾向等が国民の先行きに対する不安をもたらすなど、わが  
国の経済はかつてない停滞の中にあり、昨年は、21世紀の幕開けとしては必ずし  
も明るいものではありませんでした。 

 こうした中、農林水産省では食料・農業・農村基本法を基本理念とした農業構  
造改革と消費者ニーズに即した国内生産の増大を図ることとし、農業の持続的発  
展や自給率の向上に向け各般の施策を講じております。畜産につきましても経営  
の体質強化や生産者が意欲をもって生産に取り組めるような生産基盤の充実強化、  
環境対策に加え、適切な経営安定対策、流通・消費拡大対策等総合的な対策を講  
じてきているところであります。 

 昨年一年を振り返りますと、さまざまな出来事がありました。9月11日のニュ  
ーヨーク世界貿易センター爆破テロ事件とこの爆破テロに端を発しアフガン空爆、  
米国内の炭疽菌テロ、そして、日本の畜産については何といっても時を同じくし  
て確認されたBSE(牛海綿状脳症)の発生であります。わが国初のBSEに対し政府  
は複数の法律に基づき9月18日、反すう動物に肉骨粉を与えることの禁止、10月  
4日、肉骨粉の輸入の停止、10月15日、肉骨粉等の家畜への給与の全面禁止(豚、  
馬由来の血粉等の豚・鶏への給与については11月1日に解除)、10月18日、食肉  
処理場での出荷牛全頭に対するBSE検査の導入(全頭検査)、等次々とBSE対策が  
講じられてきたところであります。 

 また、BSE関連の緊急対策としてサーベランス(監視体制)強化やトレーサビ  
リティ(追跡可能性)の確立などのBSE清浄化対策、BSE新検査体制下での食肉処  
理・流通体制の整備、生産農家および関連業界の経営等の安定対策、肉骨粉の焼  
却処理等さまざまな対策を実施しております。さらに、昭和50年度に牛肉が「畜  
安法」に基づく指定食肉となって以来、初めて、指定助成対象事業による牛肉の  
調整保管事業が実施されています。また、全頭検査実施以前にと畜解体された牛  
肉の市場隔離およびその隔離牛肉の焼却処分ならびに一連の消費対策により卸売  
価格の早急な回復に努めています。このように生産・流通・消費の各段階におけ  
る課題の解決に向け、行政と関係団体が一体となって努力しているところです。 

 この一連の出来事を教訓に消費者に安全・安心な畜産物を提供する重要性を改  
めて強く認識いたしました。ひとむかし前に比べて食と農の間には食品製造業、  
食品流通業、外食産業等の食品産業が介在し、消費者と農家の間が遠くなった感  
は否めません。これを契機に食と農を近づけ、正しく理解しあう努力の必要性を  
痛感したところです。このような努力の積み重ねによりBSEに対する風評被害も  
払拭できるのではと考えます。牛の個体識別システムを本年度中に確立させ、こ  
れを基に今後その牛の誕生から育成過程・流通経路を管理・追跡できるトレーサ  
ビリティの体制を整備していかなければと考えております。 

 日本が世界一の長寿国になった要因は、食肉などの動物性食品を多く摂取する  
豊かな食生活への改善と、従来の日本食に動物性食品を加えたバランスの良い食  
生活に変化したことにあると言えます。 

 畜産物は食生活にとってなくてはならないものであることを肝に命じ、さまざ  
まな施策と正確かつ迅速な情報提供を通じて何としても日本の畜産を守り、振興  
していく決意であることを年頭に当たり申し上げておきたいと思います。 

 本年は昨年に打ち出されたBSE対策がより具体的に効果を現わし、牛肉の消費  
が平年ベースに回復し,さらに拡大することを祈念するとともに、新しい食料・  
農業・農村基本法に沿った21世紀型の畜産業の発展のため、役職員一同心を新た  
に努力してまいる所存であります。 

 本年もご指導ご協力賜りますようお願い申し上げる次第です。

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