生産局 畜産部 畜産技術課 大森 正敏
インターブル(International Bull Evaluation Service:国際種雄牛評価サ ービス)とは、乳用牛の遺伝的能力の国際的な比較を促進することを目的に、19 83(昭和58)年にICAR(家畜の能力検定に関する国際委員会)の小委員会として設 立された組織であり、1997(平成9)年からMACE(Multiple-trait Across Countr y Evaluation:多国間評価法)法により種雄牛の国際能力評価を行っている(本部 :スウェーデン)。 インターブルが国際能力評価を行うようになったのは、1970年代以降に凍結精 液等遺伝資源の国際間流通が盛んとなったことに端を発し、海外の種雄牛が自国 でどの程度の働きをするのか、自国の改良に貢献する海外種雄牛はどの種雄牛な のかを知る必要が生じてきたことによる。
わが国における海外種雄牛の精液は根強い舶来志向等から、国内で種雄牛を作 出しているにも関わらず、輸入本数は増加している。特に最近は、国内で利用さ れるホルスタイン種凍結精液の約25%を占め、何億円もの代金が酪農家から海外 に支払われている。 このような国内状況の中で平成13年9月から関係者による検討を重ね、わが国 はインターブルに参加することを決定し、今後、インターブル事務局での試行結 果に問題がなければ15年2月から本格的に国際評価に参加することとなる。つま り、国内の種雄牛評価と同じ土俵で海外の全種雄牛の評価成績を手にすることが できることとなるのである。
インターブルに参加することによって、@国産・海外産候補種雄牛の効率的な 生産・選定が可能となり、現状よりもより優良な国産検定済種雄牛の作出が期待 できること、Aより適切に輸入精液や海外の雌牛が導入できること等から、わが 国乳用牛の改良体制がより強化されることが期待できる。 しかしながら、一見良いことずくめに思えるインターブルへの参加が、情報を うまく利用した海外遺伝資源の販売圧力に拍車をかける可能性がある。また、日 本は海外に比べ改良集団が小さいために遺伝的レベルが同程度でも、上位牛だけ を見た場合には改良集団の大きな海外に比べて不利であることは明らかであり、 その事によってさらに舶来偏重となる可能性も否定できない。強化するつもりが 逆に日本の改良体制を崩解させかねない。 こういった不安・恐れを抱きつつそれでもあえてわが国はインターブルに参加 することを決定した。国際競争が激烈を極めている乳用牛改良の世界で、今、積 極的に打って出ないと二度と日の目を見ることはない。インターブルへの参加を 契機に酪農家、関係団体が一丸となって牛群検定、後代検定、血統登録事業を支 え、休むことなく改良を進めることがわが国酪農にとって重要なことである。 より詳細なインターブルに関する情報については、家畜改良センターのホームペ ージ(http://www.nlbc.go.jp/interbull/)または、インターブルホームページ (http://www-interbull.slu.se/)を参照頂きたい。
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