鹿児島県/田畑 豊範
与論町は鹿児島県の最南端に位置し、鹿児島県本土より南へ563キロメートル、 南方海上28キロメートルには沖縄本島を望むことができる。 与論町和牛改良組合は、昭和59年にセリ市場の新設と共に従来からの和牛振興 会を解散し新たに発足した。 総面積2,045ヘクタール、耕地面積1,050ヘクタールというこの小さな島でサト ウキビを主体とした営農体系に、収益性の高い牛生産部門を積極的に組み入れて もらうため、組合員一丸となって牛生産部門の振興を図ってきた。発足当時の飼 養頭数はわずか1,377頭だったが平成2年には2,000頭、5年には3,000頭を超え、1 1年には4,000頭、14年には4,530頭を数えるようになった。 与論町が和牛産地として成長していった背景として、次の5つのことが挙げら れる。 ・台風常襲地で夏作が定着しにくく災害に強い和牛生産が定着しやすかったこと。 ・主幹作目であるサトウキビとの組み合わせがしやすかったこと。(梢頭部を粗 飼料として利用) ・労働時間に偏りが少なく、兼業および複合経営で取り組みやすかったこと。 ・2ヵ月に1度セリ市が開催され通年の資金繰りがしやすかったこと。 ・他地域に比べUターン志向が強い地域であり、取り組みやすい品目として牛が 飼われたこと。 以上のような背景の中で和牛改良組合という組織が、なくてはならない働きを し今日の成果を上げている。 その中で特に、地域のけん引役として青年部による収益性の高い畜産経営の実 践や、共同作業受託等による高齢者への支援などが精力的に行われ、持続的な肉 用牛子牛の産地育成がなされ、飼養頭数の維持拡大につながってきた。 総飼養頭数5,000頭を目前にした今、自然との共存が一番の課題であり畜産業 のふん尿処理の問題は、畜産業そのものの根幹をも揺るがしかねない。 ヨロン島は日本有数の観光地であり、今後和牛生産を振興していく上で観光産 業との共存は必要不可欠な重要課題である。 環境保全型農業の実践を目指したい肥舎や尿溜の整備を図りながら、自然環境 に優しい畜産の実践を目指していこうと組合員一同、話し合っているところであ る。
【共同作業による飼料作り】 |
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【この美しい海とともに】 |