乳業部 乳製品課
各食品の消費動向を迅速かつ的確に把握することは、今や小売業や食品製造業 のみならず、農産物の生産者にとっても重要な課題となっている。 しかし、牛乳乳製品については、流通チャンネルや消費者のし好・食生活が変 化・多様化したこともあって、その消費実態が必ずしも明確に把握されていない。 このため、本調査は、牛乳乳製品の消費動向を定点的かつ迅速に把握することを 目的に実施している。 本調査は、日本経済新聞社のPOS情報サービス「NEEDS-SCAN」を基に、農畜産 業振興事業団が社団法人食品需給研究センターに委託して集計・加工したもので ある。当初は、乳製品のみの調査であったが、平成8年度から飲用牛乳等の調査 を加え、12年度からは飲用牛乳等との競合関係があると言われる茶系飲料等も調 査対象に加えた。 本調査は、全国約700店のサンプル店舗におけるレジ通過客1千人当たりの販売 本数および販売量を示したものであり、販売数量の総計を示したものではない点 にご留意いただきたい。 本調査の結果は、この「畜産の情報」において月単位の小売価格や販売数量を 提供しているが、(巻末資料編46〜49および60〜62ページ)、これに加えて週単 位の調査結果についても当事業団発行の「畜産物市況週報」において提供してい るので、併せて参照されたい。
次に、過去5年間の販売数量(=レジ通過客1千人当たりの1リットルパック 販売本数。以下同じ)の推移から目立った動きを紹介する。 表1 飲用牛乳等の販売数量の推移 (レジ通過千人当たり1リットルパックは販売本数) 注1:13年度は4月から12月までの平均値である。 注2:飲用牛乳等の分類は「乳および乳製品の成分規格等に関する省令」に 定める定義に準じる(すべて1リットルパック入り)。 (1)牛乳は無脂乳固形分8.0%以上、乳脂肪分3.0%以上。 (2)低脂肪乳(加工乳)は無脂乳固形分8.0%以上、無脂肪乳を含む。 (3)濃厚加工乳は無脂乳固形分8.0%以上で、乳脂肪分が牛乳より多いもの。 (4)LL牛乳は、滅菌乳で保存期間が長い(2ヵ月)のもの。 (5)白もの乳飲料は、カルシウムやビタミンなどを添加したもの。 (6)部分脱脂乳は、無脂乳固形分8.0%以上、乳脂肪0.5〜3.0%。 ◇図:飲用牛乳等の販売数量の推移 「レジ通過千人当たり販売本数(1リットルパック)◇ まず、飲用牛乳等6種類の合計を見ると、8年度の143.8本から13年度(4〜 12月の平均。以下同じ)には112.2本へと22.0%減少した。この減少の背景とし ては、茶系飲料や炭酸飲料など他飲料との競合が激化したことが挙げられる。ま た、飲用牛乳等の内訳を種類別に見ると、牛乳(22.5%減)および低脂肪乳(48 .0%減)が減少し、白もの乳飲料(17.6%増)と部分脱脂乳(14.7%増)が増 加した。 このうち低脂肪乳は、7〜8年度に消費拡大のピークを迎えた後、漸減傾向に あった中で、12年度に発生した食中毒事故によって大幅に減少し、13年度に入っ ても回復の兆しが見られていない。一方、11年度まで販売数量が順調に伸びた白 もの乳飲料は、12年度に食中毒事故の影響で減少したものの、13年度に入ってか らは回復の兆しを示している。また、12年度まで順調に増加した部分脱脂乳は、 13年度に入って減少している。 飲用牛乳等の種類別の販売数量構成比を見ると、主力商品である牛乳のシェア は、他飲料に押されて8年度の62.8%から11年度に57.2%にまで低下したが、 食中毒事件後の消費者の牛乳回帰志向もあって13年度には62.4%にまで回復した。 一方、8年度に17.7%のシェアを占めていた低脂肪乳は、食中毒事件とその後の 消費者離れにより13年度には11.8%まで大幅に低下した。白もの飲料のシェアは 11年度に21.9%に達したが、12年度には食中毒事件の影響で17.9%に低下した (13年度には19.6%まで回復)。こうした中、販売数量の絶対量は少ないものの、 部分脱脂乳が8年度の2.4%から堅調にシェアを伸ばしている。 「12年度牛乳等の小売価格及び牛乳・乳製品等の消費動向調査」によると飲用 牛乳の購入先は量販店が圧倒的に多く、12年度調査では73.3%をしめ、次に集団 購入(14.8%)、コンビニエンスストア(5.2%)、家庭配達(5.1%)の順とな っている。量販店での購入が減る一方で集団購入が増加傾向にある。
バター(=レジ通過1千人当たり。以下同じ)の販売数量は8年度から11年度 は横ばいから減少傾向で推移し、12年度は年度後半はやや上回ったものの平均す ると1,452グラム(4.2%減)と減少した。13年度(1月〜12月)はさらに減少 し1,267グラム(8.1%減)となった。 季節変動を見るとおおむね冬期に需要が多く、夏期に少ないという明瞭な季節 性がみられる。次にナチュラルチーズの販売数量を見ると、8年度から11年度と 順調に増加したが、12年度は4月〜6月は前年度を上回ったものの7月以降は食 中毒事件の影響により生産が下回ったため、全体としては前年度をやや下回った。 13年度(1月〜12月)は同水準で推移し1,870グラム(0.4%減)となっている。 プロセスチーズの千人当たりの販売数量を見ると、8、9年度と微増傾向であ ったが10年度〜12年度と減少した。13年度(1月〜12月)は4,310グラム(0.6 %増)とほぼ同水準で推移している。 表2 主な乳製品の販売数量の推移 注1:13年度は4月から12月までの平均値である。 注2:マーガリンはファットスプレッドを含む。 注3:生クリーム類は乳脂肪の一部またはすべてを植物性に 置き換えたものを含む。
以上、過去の販売動向から目立った動きを紹介したが、POS情報はカバー範 囲が限られる一方、迅速に動向を把握できるメリットを有しているので、今後も 本調査の結果を随時紹介していきたいと考えている。
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