鹿児島県/農政部 畜産課
はじめに 鹿児島県では、県の酪農および肉用牛生産の振興を図るため、平成13年3月、 「鹿児島県酪農・肉用牛生産近代化計画」を策定・公表した。 本計画は、国が策定した「食料・農業・農村基本計画」および「酪農及び肉用 牛生産の近代化を図るための基本方針」等の基本理念を踏まえ、また、21世紀に おける農業・農村の展開方向と施策の基本方向を明らかにするために本県が13年 3月に公表した「かごしま農業・農村ビジョン21」との整合性を取りつつ、本県 における酪農および肉用牛生産の振興のマスタープランとして策定された。 本年度からは、本計画に掲げられた数値目標および経営指標等の実現に向け、 各般の事業の実施や指導を通じ、生産者、関係団体および市町村等が一体となっ た取り組みを推進しているところである。 なお、市町村の酪肉近代化計画については、県内96市町村のうち91市町村(う ち58市町村は肉用牛計画のみ)が策定している。 計画の概要 1 酪農・肉用牛生産の展開方向 (1)酪農 生産コストの低い経営の安定した酪農経営体を育成するため、飼養頭数規模の 拡大、省力飼養管理システムの導入、防暑対策の徹底、受精卵移植を活用した乳 用牛群の改良・増殖等を推進する。また、消費者ニーズに対応するため、衛生管 理技術の向上による高品質生乳の生産を推進する。 (2)肉用牛生産 肉用牛生産基盤の拡大・強化および生産コストの低減を図るため、本県農業の 基幹作物として位置付け、地域条件に適合した他作物との複合経営体を中心に子 牛の発育段階別の分業管理型の大規模経営体の育成を推進し、経営・地域内の一 貫生産体制を構築するとともに、受精卵移植等を活用した新たな改良手法により、 本県肉用牛の特色である早熟・早肥・飼い易さを生かした優良な種雄牛・繁殖雌 牛の作出・増殖を推進する。 また、商品価値の向上を図るため、統一された生産技術による高品質・斉一化 に努めるとともに、消費者に対する積極的なPR活動により、「鹿児島黒牛」の ブランド化を推進する。 2 ゆとりある生産性の高い経営体の育成 ゆとりある生産性の高い経営体の育成を図るため、担い手の高齢化、後継者不 足および労働過重等に対応した生産支援組織の育成・再編を進めるとともに、耕 種農家との連携強化・耕作放棄地等の利用による自給飼料基盤の強化および野草 ・稲わら等の低・未利用資源の利用促進による飼料自給率の向上を推進する。 また、肉用牛繁殖経営については、早期離乳によるほ乳期・育成期を分離した 分業型生産システムの導入、ほ乳ロボットの導入による省力管理、分娩間隔の短 縮等に努めることとし、肥育牛経営については、規模拡大を基本に、飼料給与方 法の改善、個体能力・出荷適期の的確な把握による肥育期間の短縮等に努めるも のとする。 3 環境問題への適切な対応 環境にやさしい資源循環型畜産経営を実現するため、周辺環境との調和を図り つつ、地域の実情に応じた家畜排せつ物処理・利用施設の計画的な整備、耕畜連 携体制の整備による良質たい肥の広域利用の促進および環境アドバイザーの育成 ・活用等を推進する。 4 流通・加工の合理化 肉用牛および牛肉については、流通コストの低減および適正な価格形成を図る ため、家畜市場の機能強化・再編整備および食肉処理施設のHACCPに対応した処 理体制の確立・再編整備を促進する。 表1 乳牛の飼養戸数・頭数および生乳生産量 表2 肉用牛の飼養戸数・頭数 表3 飼料作物の作付面積および飼料自給率