◎調査・報告


酪農ヘルパー養成研修の現状と今後の方向

社団法人 酪農ヘルパー全国協会  専務理事 星井静一




はじめに

 酪農ヘルパー事業は、酪農家の休日確保、労働時間短縮に対する強いニーズ
を支えにして、全国各地域に酪農ヘルパー利用組合が組織化され、ここ10年来
の地道な活動により今では広く普及し、酪農家にとって無くてはならない経営
支援組織になってきた。平成13年8月現在の全国の組織状況を見ると、利用組
合数は385組合で、利用組合活動範囲内にある酪農家数は2万8,807戸、うち利
用組合参加戸数は1万9,260戸となっている。そして12年度における酪農ヘルパ
ーの総利用日数は22万8,000日に達し、利用農家1戸当たりの平均利用日数は前
年度より増えて14.13日(11年度12.85日)になっている。

 このような酪農ヘルパー事業の伸展は、利用組合の熱心な事業展開および関
係機関、関係団体の一丸となった支援によるところが大きいが、忘れてならな
いのは、実際に酪農ヘルパー作業を行うヘルパー要員の働きである。13年8月
現在で、2,628人の要員、うち専任ヘルパー1,216人(うち女性233人)、臨時
ヘルパー1,412人を擁している。

 酪農家が留守のとき、その代わりをする酪農ヘルパーは、酪農家に信頼され
る知識と技術を持ち、確実に酪農作業をこなせる技能が必要である。酪農家の
家畜飼養管理技術の高度化や牛舎施設の機械化が進み、また、地域の要望を受
けて酪農ヘルパー対象業務を拡大する利用組合が増えつつある(第1表)中、
酪農ヘルパーを志向してくる若者(毎年180〜200人程度が新規採用ヘルパー)
は、酪農後継者あり、非農家出身者ありと、育ちも経歴も色々で、これらの者
を一人前の技術に優れた意欲ある酪農ヘルパーに育てあげる養成研修の役割は、
酪農ヘルパー事業の円滑な運営上極めて重要である。

 そこで社団法人酪農ヘルパー全国協会(以下「全国協会」という。)が助成
または実施してきた酪農ヘルパー養成研修の現状と今後の方向について報告す
る。

第1表 搾乳・飼養管理以外の作業の実施状況(平成13年8月1日時点)

(注)( )内は、全利用組合に対する割合。その他は登録、去勢、助産等。


酪農ヘルパー養成研修の実施経過

 全国協会は、3年度から、酪農家に信頼される優秀な酪農ヘルパーを養成す
るため、「酪農ヘルパー専門技術員養成研修」(以下「全国研修」、期間1カ
月)を実施してきた。

 この間、全国研修で習得する知識と技術に加え、実践的技術の習得も重要で
あることを踏まえ、6年度から、利用組合における養成研修修了者に対する実
践研修(期間6カ月以内)を推進してきた。

 さらに、12年度には実践研修に対する助成始業の拡充(期間1年以内)を受
け、酪農ヘルパーの学歴や経歴の多様化等を考慮して養成研修のコース、カリ
キュラムの見直しを行い、従来からの全国研修に加えて特別研修(Aコース:
期間2週間、Bコース:期間1週間)を新設した。

 以上は、新人ヘルパーに対する養成研修実施の経過であるが、酪農ヘルパー
の就業後のフォローアップ研修については、都道府県団体が管内酪農ヘルパー
の技術向上研修(1〜2日程度)を開催するよう指導しているが、管内事情等か
ら実施できない団体もあり、8年度から全国協会において就業2年以上のヘルパ
ーを対象とした中堅技術研修(1週間)を実施してきた。また、12年度からは
海外酪農ヘルパー事情を学ぶ海外研修を行っている。

 なお、酪農ヘルパー就業以前における酪農技術習得とヘルパー適性診断の重
要性に鑑みて、全国協会は、10年度から農業大学校等に就学する酪農ヘルパー
内定学生に対する就学資金交付(期間2年間)および酪農ヘルパー要員確保の
ための酪農体験実習(期間1週間〜1年以内)を行っている。


養成研修の実施状況

 このようにして行っている養成研修については、@酪農ヘルパー就業前の酪
農体験等、A新人ヘルパーのための養成研修、B就業中のフォローアップ研修
に大別されるが、AおよびBの実績を整理すると、第2表のとおりである。

第2表 酪農ヘルパー専門技術員養成研修事業コース別実施状況


 ここで、全国協会が実施した新人ヘルパーのための養成研修について見ると、
3年度からこれまでに985人の研修修了者を送り出している。13年度の実績では、
全国研修・特別研修合わせて135人となり、3年度の約4倍にも増加しているが、
特別研修コース開設等養成研修の見直しによるところが大きく、特別研修受講
者が過半を占めている。なお、養成研修実施場所については、第3表のとおり
で、多くの関係機関のご協力があって全国協会の養成研修が成り立っているの
である。

第3表 平成13年度研修施設別酪農ヘルパー養成研修開催実績

( )内は12年度開催実績

 これまでに養成研修を受講した新人ヘルパーの記録を整理して見ると、男女
別では、受講者は男性の方が多いが、女性も年々増えてきて、13年度には40人
(全体の29.6%)の受講となっている。また、受講者の出身別では、非農家出
身者が半数を超え、特に、13年度には95人と全体の70%を占めている(第1図)。
このデータが示すように酪農ヘルパーの分野にも女性の進出が進み、非農家出
身者に対して農村での就業機会を創設していることが分かる。

◇第1図:受講者の出身と就農希望◇

 また、受講者の中で今後就農希望のある者(新規就農希望者および酪農後継
予定者)については年々増加する傾向にあり、13年度には受講生全体の50%に
達している。このような就農希望者の増加は、就農前の酪農知識・技術習得の
場として酪農ヘルパー制度が役立つことが知られるようになってきたことの現
れであろうが、酪農の担い手養成確保の上からも、酪農ヘルパー養成研修の役
割には大きいものがある。
 なお、受講者の年齢や前歴等を見ると、平均年齢は、22.6歳となり、年々若
齢化の傾向がみられたが、近年では12年度、13年度(24.4歳)と平均年齢が高
くなっている。これは、農場実習生等の酪農経験者や農外就業者の採用が増え
てきていることによると考えられる。なお、これまでの受講者全体では、農業
系学校卒業者が多いが、最近では、農業系以外の学歴を持つ者の割合が高くな
っており、経済界の長引く不況の影響もあろうが、酪農ヘルパーが職業選択肢
の1つとして広く社会に認知されてきたことを示すものであろう(第2図)。

◇第2図:受講者の学歴 (13年度)◇


酪農ヘルパー養成研修の見直し

 全国協会が実施する養成研修は、12年度の見直しにより受講者は増加してき
ているが、利用組合等からは実践研修の拡充に伴い、養成研修については知識
を中心とし、実技実習については選択の幅を広げて欲しいとの要望が高まり、
さらに、酪農主産地では新規採用者の増加もあり、養成研修と実践研修を計画
的に行うために地元で養成研修を開催したいとの要望が強くなった。

 このような要望を踏まえ、14年度からより効率的かつより多くの新人ヘルパ
ーが受講できる研修とすべく養成研修のコース等を再度見直しすることとした
(第4表)。

第4表 酪農ヘルパー養成研修

(注1)4施設とは、ホクレン研修牧場、(財)蔵王酪農センター、全酪連教育研
   修センター、(財)中国四国酪農大学校。指定施設とは、国または都道府
   県等の研修施設で当協会会長が指定した施設。特別研修を実施するその
   他施設については「見直しの概要」のB参照。

(注2)受講資格を有する対象者以外で、全国協会会長が特別に参加を認め、
   全国研修修了した者に対しても、専門技術員の認定は行う。


見直しの概要

@ 養成研修は、就業後1年以内の専任ヘルパーを対象とする全国研修および
 特別研修と就業後おおむね2年以上の専任ヘルパーを対象とする中堅技術研
 修とし、受講者の参集範囲はいずれも全国とする。

A 全国研修および特別研修の受講資格については廃止する。(研修生を派遣
 する利用組合が、受講者の学歴・経歴、技術取得状況を勘案して、適当なコ
 ースを選択するものとする。)

B 全国研修は4施設、特別研修は4施設および指定施設で開催する。

  ただし、特別研修については、研修の内容等について全国協会会長が必要
 かつ適当と認めた場合、その他の施設でも開催する。

C 全国研修は、原則として、講義40時間、実技実習40時間とし、研修期間は
 2週間とする。実技実習は研修施設で行うものとする。

  ただし、研修生を派遣する利用組合等関係者の要望に応じ、開催によって
 は研修内容の拡充(時間数増、農家実習等)、研修期間の延長を行う。

D 特別研修は、原則として講義30時間、研修期間1週間とする。

  ただし、研修生を派遣する利用組合等関係者の要望に応じ、開催によって
 は研修内容の拡充(時間数増、実技実習等)、研修期間の延長を行う。(要
 望があれば、実践研修と並行した1日3時間、10日間での実施等も検討する。)

E 中堅技術研修の開催施設、講義、受講資格等は従来通りとする。


その他

@ 全国研修および特別研修の修了者は、酪農ヘルパー研修特別助成金(1カ
 月75,000円以内、12カ月以内)の交付対象とする。

A 全国研修の受講者については、技術修得資金(75,000円以内)の給付対象
 とする。(特別研修の受講者は従来通り対象外。)

B 全国研修の修了者は、修了時に酪農ヘルパー専門技術員として認定する。
 特別研修の修了者については、実践研修の修了後に酪農ヘルパー専門技術員
 として認定する。


おわりに

 これからの酪農は意欲ある担い手がますます必要となり、若い酪農後継者や
新規就農希望者をどう育てていくか大きな課題である。また、酪農を支える酪
農ヘルパーばかりでなく、コントラクター従事者、さらには、多頭飼養牧場の
常時従業者などでも優れた人材の養成は急務である。

 13年度ニュージーランドへ酪農ヘルパー海外研修を行ったわけだが、ニュー
ジーランドにおいてはシェアミルカーや酪農家養成のために、現場での実践研
修と研修施設での講義を組み合わせ、繁殖、飼養管理、搾乳など多岐にわたる
酪農技術を順次習得して酪農技術資格取得がとれるプログラムが用意されてい
る。

 今後、このような制度も参考にしつつ研修施設で行う養成研修と利用組合が
現地で行う実践研修および酪農体験実習等の連携をより一層密にして人材育成
の効果を上げていきたいと考えているが、その場合、酪農を目指す若者が就業
分野を越えて共通的に必要な酪農技術の習得ができ、自らの適性を見極めなが
ら進路を選択していける総合的な酪農技術習得制度の構築ができないかと思う
のである。

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