鳥取県八頭農業改良普及所/遠藤 寿英
鳥取県東部の山間地に位置する智頭町の大原秀之さん(43歳)は、亡き父、 孟氏の後を継いで2年前から和牛繁殖経営に取り組み始めた。 造園業を自営している大原さんは早朝から夜遅くまで出かけることも多いた め、牛舎にはなるべく労力を使わず、手間もかからないような仕組みを積極的 に取り入れ、徹底的な省力管理を行っている。 週に1回は手作業で交換していた敷料を長持ちさせ交換頻度を少なくするこ と、労力を使わず簡単に敷料交換することが大原さんの目標であった。このた め、大原さんは工夫を重ね、杉やヒノキの間伐材を組み合わせた「すのこ」の 上に、もみ殻と半年ほど寝かせて軟らかくした杉の樹皮とを混合した独自の敷 料を使用する方法を開発した。 牛床のサイズに合わせた縦横3mの「すのこ」は、牛の重さに耐えられるよう、 直径8〜15cmの間伐材を横に20数本つなぎ合わせたもので、牛舎床面に間隔を あけて並べた丸太2本の上に載せて使用する。このすのこにより床面に空間を 作ることで良好な通気性が保たれ、月に一度の交換で済むほど敷料が長持ちす るようになった。 敷料交換の時は、牛舎天井に取付けたつり上げ機で「すのこ」ごと持ち上げ、 レールを使用してトラックの荷台に載せる。このため、すのこは風呂のふたの ように左右に折れ曲がる構造にしてあり、つり上げると凹型になる。すのこご とトラックで搬出した使用済み敷料はたい肥舎で処理、すのこは回収するので 繰り返し使用できる。大原さんは杉皮による消臭効果も期待している。 同町は林業が盛んであり、間伐材や樹皮は町内で簡単に入手できることから 地域の資源を有効に活用した事例といえる。 省力化を図りながら低コストで増頭することが課題であった大原さんは、町 の和牛部会で京都府の水田放牧の事例を視察、健康な放牧牛を見て取り組むこ とにした。県の単独補助事業を活用し、牛舎に隣接する水田、約20アールの外 周に間伐材を利用した木製牧柵と電気柵とを二重に設置し、牧草はオーチャー ドグラス主体の混播にした。 春から秋には水田放牧を活用してなるべく夜間だけ牛舎を利用し、汚れた敷 料は「すのこ」ごと一ぺんに交換するなど、大原さんは日々の創意工夫を上手 に組み合わせ、省力管理を実践している。
【広々とした水田放牧(間伐材 で工夫を取り入れている)】 |
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【すのこイメージ図】 |