◎地域便り


三重県 ●ブランド「松阪牛」のトレーサビリティシステムが稼動

三重県/谷口 佐富


 松阪牛は全国に誇る特産品として確固たる地位を築いており、本県のイメージ
を形成する大きな資産となっている。

 松阪牛は、従来から地元の肉牛生産者や流通業者などでつくる任意の関係団体
が「本県の宮川と雲出川の間の地域で飼育された黒毛和種雌牛で、肉質が最良(A
5、B5:松坂肉牛協会基準)のものという定義を定め、独自の耳標で管理を行って
きた。

 しかし、BSEや食肉の偽装表示問題の発生で、@全国統一耳標の装着義務で新た
な管理が必要となったことA松阪牛の偽装表示が発生したことB肉質規格A4以下
は松阪牛の誤解を招く表現で販売されていたことC生産地域が曖昧であったこと
から、関係団体の協議により生産地域を明確にし、松阪牛の生産履歴がわかる個
体識別管理システムの構築に取り組んだ。

 当システムは、国の個体識別番号の情報(牛の生年月日、性別、品種等)に加
えて、個体情報(牛の血統、出生地等)、農家情報(肥育日数、飼料等)、と畜
出荷情報(肉質、購買者氏名等)等生産から出荷に係る一連の情報を上乗せし、
関係団体から委託をうけた三重県松阪食肉公社がデータの管理を行っている。公
社は有料で、松阪牛証明書や店頭の肉に貼るシールを発行し、消費者は、シール
の番号で公社のホームページから牛や肥育農家のデータを検索することができる。

 松阪牛のほとんどは県外(兵庫県、九州地方等)から導入された素牛であり、
公社の職員が6カ月に1回の割合ですべての生産農家を巡回し、基本となるデータ
のチェックを行っている。9月末現在のシステム加入農家戸数は109戸(登録頭数
約1,900頭)となっている。また、偽装防止のため、と殺解体されるすべての牛に
ついて、DNA鑑定用の検査材料を冷凍保存している。

 このシステムは、平成14年8月19日から稼動しているが、情報開示により、松阪
牛の東京食肉市場における平均取引価格はBSE発生以前(平均2,800円/kg)の2〜
3倍に高騰している(平成14年9月上旬現在)。生産地では消費者の安心と手ごろ
な値段が両立するよう、肥育頭数の拡大策等早急な検討を行う必要があると考え
ている。

 県内には、松阪牛生産地以外にも、伊賀牛、鈴鹿山麓牛など高級牛肉を生産す
る地域があり、これらの地域から生産される牛肉についても、今年度内に生産履
歴が確認できる牛肉の安全安心システムを構築し、県内産牛肉の競争力の維持強
化を図っていきたいと考えている。

※ 三重県松阪食肉公社ホームページアドレス http://www.mie-msk.co.jp/


 システムの流れ図






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