生産局 畜産部 飼料課 山多 利秋
コーデックス委員会とは 消費者の健康の保護および公正な貿易の実施の確保を目的とした国際的な食品 規格(Codex Alimentarius)の策定のため、国連食糧農業機関(FAO)および世界 保健機関(WHO)合同による食品規格(コーデックス)委員会が設置されている。 Codex Alimentariusは、WTO協定に含まれる「衛生および植物検疫に係る措置に 関する協定(SPS協定)(Agreement on the Application of Sanitary and Phyt osanitary Measures)」や「貿易の技術的障害に関する協定(TBT協定)(Agree ment on Technical Barriers to Trade)」により、科学的な根拠を持ち国際的に 調和された唯一の基準とみなされている。 わが国にとっても Codex Alimentariusの規定する内容は貿易上重要であるとと もに、消費者に軸足を置いた行政を進める上でもますます重要となっている。 動物飼料特別部会の設置 1999年 6月、第23回コーデックス委員会総会において、動物由来食品の消費者 の健康への安全性および品質の確保に資する目的で、適正動物飼養実施規範(Co de on Practice of Good Animal Feeding)を策定するため、動物飼料特別部会( 議長国:デンマーク)の設置が決定された。 本部会は 2003年までの期限付きであり、これまでの開催経緯は以下のとおりで ある。 ・第1回会合 2000年6月 13日〜15日 ・第2回会合 2001年3月 19日〜21日 ・第3回会合 2002年6月 17日〜20日 現在、本規範の検討はステップB(下図参照)にあり、期限を来年に控え検討 が急がれている。 Codex Alimentarius の検討経過 適正動物飼養実施規範案の概要 本規範は全7節より成り、概要は14ページのとおりである。 なお、第3回会合の報告および最新の本規範案の原文(英語)はコーデックス委 員会のホームページ内(ftp://ftp.fao.org/codex/alinorm03/Al03_38e.pdf)に 公開されている。 今後の予定と検討課題 2003年3月24日〜26日、コペンハーゲンにおいて第4回会合が開催されることと なっており、規範案について再度検討する予定である。 なお、これまでの会合において第5節の途中までは検討が進んでいるが、第6節 および第7節については案の作成以来ほとんど検討がされていない状況である。従 って、第4回会合においては、後半の節について優先的に検討が進められる予定で ある。 ・第5節 飼料および飼料原材料の製造、保管および輸送に関して、GMP(Good Manufa cturing Practice)(適正製造基準)の適用を定めている。この中には、交差 汚染防止策(リスクが高い場合は製造ライン、保管および輸送工程の完全分離 )、製品の遡及を可能とする記録の保管、飼料および飼料原材料中の有害物質 の管理等が要件として規定されている。 ・第6節 農場段階での飼料の製造および使用に関して各種の基準が定められている。 まず、家畜の飼料となる牧草、飼料作物および穀類の生産に関して、たい肥、 化学肥料および農薬類による汚染の防止が規定されている。また、飼料の自家 配合に関しては、工場と同様に GMPの適用が求められる。適正な給じおよび畜 舎管理等についても規定されている。 ・第7節 飼料の安全性に係る公式検査方法に関して国際的な整合性を図るため、試料 採取法および分析法の要件を定めている。また、試験の実施に際して GLP(Go od Laboratory Practice)(適正検査基準)の適用を求めており、検査機関に おける対応が必要となる。 適正動物飼養実施規範案(概要) 第1節 序 文 本規範は消費者の健康へのリスクを最小化するため、食品チェーン全体を包括 した飼料安全制度の確立を図るものである。 第2節 目的および範囲 農場における適正な飼養および飼料の適正な製造に関する基準に沿うことによ り、畜産物の安全性を確保させることを目的とする。 放牧、飼料作物生産、水産養殖を含め、家畜に給じされるあらゆるものの製造 および使用を対象とする。 消費者保護のため食品の安全性に係る問題のみを対象とし、それを超えた動物 福祉等の問題は包括しない。 第3節 定 義 飼 料 :家畜に直接給じされるあらゆるもの。 飼料原材料 :飼料添加物を含め、あらゆる飼料の成分となるもの。 飼料添加物 :飼料または畜産物の特性に作用するために意図的に加えられる もの。 薬剤添加飼料:動物薬(治療、予防、診断または生理機能・行動の改善に用い るもの)を含んだ飼料。 有害物質 :飼料および飼料原材料に含まれる、消費者の健康にリスクを与 える汚染物質。 第4節 一般則および要件 飼料および飼料原材料(以下、「飼料等」という。)は有害物質からの汚染の ない状態で得られ、その状態を保持すること。そのため、製造、加工、保管およ び輸送の各場面においてそれぞれ適当な、適正耕作基準(GAP)(Good Agricult ural Practice)、適正製造基準(GMP)、HACCPの原則等に従うこと。 飼料製造者、畜産農家および食品製造者は消費者の健康への危害の可能性とそ のリスクの程度を連携して確認する必要がある。 <飼料原材料> 飼料原材料は安全な原料から得られること。特に飼料添加物の製造者は使用者 が正確に使用するよう明確な情報を与えること。 <表示> 以下の内容について適切に表示すること。
・飼料の対象畜種または種類 ・飼料の目的 ・飼料原材料の一覧(配合割合順。添加物を含む。) ・製造または中間業者の連絡先 ・登録番号(その制度がある場合。) ・使用上の指示および注意 ・ロット番号 ・製造年月日 ・有効期限または使用期限 |
<トレーサビリティーおよび記録保管> なんらかの消費者の健康へのリスクが明らかとなった際、原料または製品の追 跡が可能なよう、飼料等の製造、流通および使用に関して適切な記録を保管する こと。 飼料製造者は原材料の譲受けの年月日および相手、飼料の加工工程および譲渡 しの相手について記録すること。さらに、以下の事項等について記録すること。
・在庫目録 ・飼料の処方 ・混合表 ・製造日報 ・苦情の綴り ・製造エラーおよびその対処 ・分析結果並びに異状時の調査 ・返品、回収品の廃棄記録 ・洗浄資材、回収材料の廃棄記録 ・混合器、計量器の検証結果 |
リスクの高い原材料で、原産地、原料動物種、入荷前の加工工程等に関して特 定する必要があるようなものは、調達後ロットを識別して取り扱うこと。 <検査および管理> 製造者等は飼料等が基準に適合するよう自己管理を行うこと。さらに、公的な 規制計画により飼料等が適正に製造、使用等されていることを確認する必要があ る。飼料等が基準に適合することを確認する検査体制は、科学的・国際的に認め られた手法によるリスク評価に基づき行われるべきである。 <飼料に関連する健康危害> 飼料等に含まれる有害物質の濃度は、それによって畜産物に問題を生じないよ う最低限の安全基準を満たすこと。飼料中の有害物質の残留基準値を定めるに当 たり、食品における残留基準値はその検討に有用である。 飼料添加物および薬剤添加飼料に用いる動物薬は、安全性を評価されたものを 定められた条件で使用すること。公衆の健康への安全性評価がなされていない成 長促進用抗生物質は使用しないこと。 飼料等は、その使用により消費者の健康への許容できないリスクを示さないこ と。 有害物質に汚染された飼料等は、販売および使用されてはならない。また、希 釈等により有害物質の濃度を操作する手法は、食品の安全性への影響に照らして 評価すること。 第5節 飼料等の製造、保管および流通 飼料等の安全性および適切性に係る責任は、農家も含め全ての飼料チェーンの 従事者にあり、適用される法的規制を遵守すること。 食品に生じ得る危害を管理するため、特に以下の事項について確実に実施する ことにより GAP、GMPまたは HACCPの原則を効果的に実行すること。
・操作、清掃の容易な施設の構築 ・化学肥料、農薬等の隔離 ・従業員の教育 ・水道水の衛生基準適合 ・装置の洗浄後の乾燥 ・結露防止 ・下水、排水等による汚染防止 ・病害虫管理 ・有害物質管理 ・計量器の適切性 ・混合器の適切性 ・製造順位、洗浄等またはラインの完全分離による交差汚染の防止 ・記録保管 ・迅速かつ適切な配送および使用 ・製品の適切な包装 ・輸送、保管用容器の清掃 ・熱処理、薬剤等による病原体管理 ・品質低下を防止する適切な保管および輸送 |
第6節 農場における飼料の製造および使用 農場における飼料の製造も、工業レベルと同様 GMPに沿って行うこと。 <飼料農作> 牧草、穀類および飼料作物の生産においては、以下のような GAPに沿うことに より、食品チェーンへの汚染のリスクを最小化すること。 ・牧草地にたい肥を施肥する場合には、生物学的汚染を最小化するため、施肥と 放牧との間に十分な間隔を設けること。 ・化学肥料は適正に保管および施用し、化学的な汚染を最小化すること。 ・農薬は登録を受けたもの、できれば HACCPの原則に従い製造されたものを適正 に使用し、作物引いては畜産物への残留を最小化すること。 ・工業地帯の近傍等、大気および地下水を通じて畜産物に汚染を生じ得るような 場所を農地に選択しないこと。同様に灌漑水は汚染されていないこと。 <飼料製造> 農場において飼料を混合する場合、特に動物薬の休薬期間等に影響しないよう、 交差汚染の可能性を最小化する方法で混合すること。 先入れ先出しにより飼料等の劣化を防ぐこと。保管施設は清潔に保ち、病害虫 管理対策を実施すること。 原材料の譲受け、製造記録等、飼料に関する適切な記録を保管すること。 <適正飼養> 飼料の配送および給じの間に汚染させないこと。 飼料の使用上の指示に従って使用し、与える家畜を誤らないこと。薬剤添加飼 料については給与の記録をし、与えた家畜を識別し、休薬期間を守ること。 畜舎は清潔に保つこと。病害虫管理対策を実施すること。 第7節 分析および試料採取法 <試料採取> 検査当局は、検査する製品または汚染物質にそれぞれ対応した、ロットを代表 する試料を得るよう定められた試料採取法を用いること。 <分析> 国際機関等により策定された公定分析法または科学的に是認された他の方法に より分析すること。分析は公的なまたは公式に認可された試験室において GLP( 適正検査基準)を適用して実施すること。
元のページに戻る