◎地域便り
東京都 ●都市と共存する酪農 〜牧場は教室だった〜
東京都/山谷 勝宣
「牛舎から町に出ることで、自らの心も変わっていった」と語るのは、東京都
区内の住宅街で環境問題を克服し、地域から親しまれる酪農経営を営む、東京都
練馬区大泉学園町の小泉與七さん(59歳)。現在、後継者の勝さん(31歳)とと
もに、乳牛40頭を飼育している東京23区内で唯一の酪農家である。
小泉牧場には、近所の子供たちや幼稚園帰りの親子、学校帰りの小学生などが
自由に立ち寄って牛を見ていく。
特に週末は多くの見学者が訪れるが、小泉牧場では、子供に対してだけでなく、
大人に対しても敷居を高くしないことを心がけている。
また、地域の住民たちとの日常的な付き合いを大切にしており、與七さんは地
元の駅前商店連合会の会員として地域の活性化に努めるなど、今ではすっかり地
元の有名人である。
小泉牧場は、5〜6年前からは福祉や教育機関の依頼を受け、知的障害者や心の
病に悩む児童等の受け入れを行っている。
特に、牧場から徒歩5分の練馬区立大泉小学校とは親密な関係にあり、3年前か
ら情緒障害学級「いずみ学級」の子供たちの見学を受け入れていたが、さらに昨
年から3年生の総合的な学習の時間での体験学習を受け入れた。「大泉の自慢さが
し」をテーマに地域巡りをしていた児童たちが、小泉牧場を取り上げたのがきっ
かけだった。
3年生の担任だった2人の教諭は「地域に小泉さんのような人がいて初めて総合
学習が成り立つ」と語る。総合的な学習の時間は、大泉の小泉牧場探検が年間テ
ーマになった。親子での牛舎作業体験や写生会のほか、71人の児童たちが「牛の
生活」「牛のエサ」「よしちさんストーリー」などテーマごとにグループを作り、
順番に牧場を訪れて、小泉さんたちから話を聞いたり、エサやりや乳搾り、ふん
の始末などを年間通して体験した。そして、今年3月8日には、同小近くの区民館
で小泉牧場たんけん発表会「モーモーワールド」が開かれ、児童たちは、牧場で
学んだことを地域の人や保護者等に報告したほか、與七さんに感謝状を贈った。
「小泉さんは、どんな小さな疑問にもいつも笑顔で答えてくれました。子供と同
じ目線で接し、ありのままの酪農を見せてくれた小泉さんに、子供たちは感謝と
尊敬の気持ちを持っています」と両教諭は振り返る。それは同時にこの学習の成
功を意味し、今後も牧場は、子供たちの「教室」になる。
また、このとき作成した絵画が、今年6月に発表された「第29回らくのうこども
ギャラリー」(全国酪農業協同組合連合会主催)において、トップの特選、およ
び秀作に大泉小学校の生徒がそれぞれ選ばれた。
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【笑顔の体験学習】
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【第29回らくのうこどもギャラリー】
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