乳業部 乳製品課
主要乳製品の流通消費の実態は、需要者である食品製造業、食品小売業、フー ドサービス等の構造変化が著しいことも相まって不明な点が多い。このため、農 畜産業振興事業団では、社団法人食品需給研究センターに委託し、これら乳製品 の生産流通消費の実態について調査を行った。このうち、主要な業務用乳製品で あるバター、脱脂粉乳について調査結果の概要を紹介することにしたい。
業種別消費量(推計) 平成12年度における国内のバターの推定消費量を8万3,100トン(農畜産業振興 事業団調べの推定出回り量)とし、その業種別および用途別の消費量推計を行っ た。 乳業メーカーのバターの供給量は8万3,100トンで、うち社内消費仕向けが19.4 %、社外販売が80.6%となっている。社外販売量6万7,000トンのうち、需要者に 直接販売されるのは3,500トン(全体の4.2%)に過ぎず、1次卸売が6万2,000トン (同74.6%)を占める。なお、2次卸売を経由するのは2万5,400トン(同30.6%) となっている。1次卸とは主に大手乳業系列販売会社、乳製品卸、大手食品卸であ る。 業種別消費量について見ると、「小売業」が2万3,200トン(全体の27.9%)で 最も多く、次いで「製菓・製パン」が2万2,500トン(27.1%)、「乳業」が1万6 ,100トン(19.4%)、「外食・ホテル」が9,000トン(10.8%)、「加工油脂」が 4,700トン(5.7%)、「調理食品」が2,500トン(3.0%)となっている(図1)。 図1バターの流通ルート(平成12年度推計) 注:乳業のうち、バターを生産していないメーカー。 用途別消費量(推計) 次に、バターの推定消費量8万3,100トンの用途について見ると、「小売業」が 2万3,200トン(27.9%)で最も多く、次いで「菓子・デザート類」が1万1,500ト ン(13.8%)、「パン類」が1万1,200トン(13.5%)、「外食・ホテル」が9,00 0トン(10.8%)、「乳飲料」が4,000トン(4.8%)、「マーガリン類」が4,100 トン(4.9%)、「アイスクリーム類」が3,100トン(3.7%)、「はっ酵乳・乳酸 菌飲料」が3,100トン(3.7%)、「調理食品」が2,600トン(3.1%)となってい る(図2、表1)。 図2 バターの用途(12年度推計) 表1 バターの用途別消費量(12年度推計) 業種別の消費実態 乳業メーカー バターを生産している乳業21社のうち、社内で消費しているのは11社であった。 主な用途は、「乳飲料」が21.1%で最も多く、次いで「乳等を主要原料とする食 品」が18.3%、「はっ酵乳」が11.2%、「アイスクリーム類」が10.9%、以下「 加工乳」が 9.1%、以下「マーガリン類」5.6%、「菓子類・デザート」3.3%の 順であった(表2)。なお、その他の用途が19.9%と比較的多いが、その内訳はチ ーズ製品、クリーミングパウダー、コーヒークリーム等となっている。 アイスクリームメーカー 回答のあったアイスクリームメーカー11社のうち、バターを使用しているのは 9社であった。用途は「アイスクリーム」で、「その他」の内訳はフレッシュクリ ーム等となっている。 はっ酵乳・乳酸菌飲料メーカー 回答のあったはっ酵乳乳酸菌飲料メーカー16社のうち、バターを使用している のは6社であった。主な用途は、「はっ酵乳」「乳酸菌飲料」「菓子・デザート類 」「飲料」となっている。 加工油脂メーカー 回答のあった加工油脂メーカー12社のうち、バターを使用しているのは9社であ った。主な用途は「マーガリン類」「その他」で、内訳はマーガリン、ホイップ クリーム等となっている。 表2 バターの業種別用途内訳 製パン 回答のあった製パン業8社すべてでバターを使用している。主な用途は「パン 類」となっており、食パン、バターロール等の練り込み用に使用されている。 製菓 回答のあった製菓業52社のうち、バターを使用しているのは45社であった。主 な用途は「菓子類」が78.6%を占め、その他「アイスクリーム類」「パン類」と なっている。「菓子類」の内訳はケーキ類、焼き菓子、パイ、クッキー、ビスケ ット、サブレ、カステラ、キャンディ等となっている。 調理食品 回答のあった調理食品メーカー13社のうち、バターを使用しているのは10社で あった。主な用途は「調理食品」で、内訳は、ホワイトソース、デミグラスソー ス、コーンスープ、ミートソース、コロッケ、総菜等となっている。 外食産業 回答のあった外食産業29社のうち、バターを使用しているのは26社であった。 主な用途は「パン類」「調理用」「菓子・デザート類」となっている。外食では 調理用からデザート、パン練り込み用、トースト用等と用途が広い。 ホテル 回答のあったホテル65社すべてがバターを使用している。主な用途は「調理用 」が最も多く、次いで「パン用」「菓子・デザート類」となっている。 今後(直近2〜3年)の需要見通し バターの供給サイドから見た今後の需要見通しは、おおむね横ばいからやや減 少と予測している。輸入調製品の減少にもかかわらず需要の伸びは期待できない とみているようである。 一方、需要者の今後の消費見通しはおおむね横ばいとなっているものの、業 種、企業により差違がみられる。製パンでは横ばいとなっているが製菓、外食、 ホテルではやや増加と見通している。
業種別消費量(推計) 平成12年度における国内の脱脂粉乳の推定消費量を18万8,900トン(農畜産業 振興事業団調べの推定出回り量)とし、その業種別および用途別の消費量推計を 行った。 脱脂粉乳の流通経路と業種別消費量(推計)を図3、表3に示した。乳業メーカ ー等の脱脂粉乳(農畜産業振興事業団売り渡しの輸入脱脂粉乳を含む)の推定供 給量は18万8,900トンで、うち乳業メーカーの社外販売が54.0%、社内消費仕向が 46.0%となっている。社外販売量10万2,000トンのうち、需要者に直接販売される のは1万2,600トン(全体の6.7%)であり、一次卸売が8万9,400トン(同47.3%) となっている。なお、二次卸売を経由するのは1万8,800トン(同10.0%)となっ ている。一次卸売とは主に大手乳業系列販売会社、乳製品卸、大手食品卸である。 業種別消費量について見ると、「乳業(脱脂粉乳を生産している)」が8万6,9 00トン(構成比46.0%)で最も多く、次いで「はっ酵乳・乳酸菌飲料」が2万7,2 00トン(14.4%)、「製菓・製パン」が1万9,800トン(10.5%)、「飲料メーカ ー」が1万2,700トン(6.7%)、「乳業(脱脂粉乳を生産していない)・アイスク リーム」が1万8,500トン(9.8%)、「加工油脂」が1万100トン(5.3%)となっ ている。 国産脱粉17万9,300トンと輸入脱粉9,600トンの内訳は、表3に示したとおりで ある。国産脱脂粉乳は「乳業」が44.7%で、以下「はっ酵乳・乳酸菌飲料」14. 6%、「製菓・製パン」10.9%、「乳業(脱脂粉乳を生産していない)・アイス クリーム」10.0%となっている。輸入脱脂粉乳は「乳業」が69.8%を占め、以下 「乳業(脱脂粉乳を生産していない)・アイスクリーム」6.3%、「はっ酵乳・ 乳酸菌飲料」10.4%、「飲料メーカー」9.4%となっている。 図3脱脂粉乳の流通ルート(平成12年度推計) 注:乳業のうち、脱脂粉乳を生産していないメーカー。 表3 脱脂粉乳の業種別消費量(12年度推計) 用途別消費量(推計) 次に、脱脂粉乳の推定消費量18万8,900トンの用途について見ると、「はっ酵 乳・乳酸菌飲料」が5万8,800トン(構成比31.1%)で最も多く、次いで「乳飲料 」が3万6,600トン(19.4%)、「加工乳」が1万6,200トン(8.6%)、「飲料」 が1万3,700トン(7.3%)、「パン類」が1万1,900トン(6.3%)、「菓子・デザ ート類」が8,500トン(4.5%)、「アイスクリーム類」が7,900トン(4.2%)、 「マーガリン類」5,200トン(2.8%)となっている(図4、表4)。国産脱粉17万 9,300トンと輸入脱粉 9,600トンの内訳は表4に示したとおりである。国産脱脂粉 乳は「はっ酵乳・乳酸菌飲料」30.9%、「乳飲料」18.9%、「加工乳」8.5%。 輸入脱粉は「はっ酵乳・乳酸菌飲料」35.4%、「乳飲料」29.2%、「アイスクリ ーム類」16.7%、「加工乳」9.4%で多く使用されている。 図4 脱脂粉乳の用途(12年度推計) 表4 脱脂粉乳の用途別消費量(12年度推計) 業種別の消費実態(国産脱脂粉乳) 乳業メーカー 脱脂粉乳を生産している17社のうち、国産脱脂粉乳を社内消費しているのは15 社であった。主な用途について見ると、「乳飲料」が36.4%で最も多く、次いで 「はっ酵乳・乳酸菌飲料」が29.8%、「加工乳」が14.6%となっており、この3つ が主な用途となっている(表5)。なお、「その他」の用途は、クリーミングパウ ダー、加工食品等となっている。 アイスクリームメーカー 回答のあったアイスクリームメーカー11社のうち、10社が国産脱脂粉乳を使用 している。主な用途は「アイスクリーム類」が46.5%、「その他」が43.7%とな っている。内訳はアイスクリーム、冷凍ケーキ、チョコレート、はっ酵乳、飲料 等となっている。 はっ酵乳・乳酸菌飲料メーカー 回答のあったはっ酵乳・乳酸菌飲料メーカー16社すべてが国産脱脂粉乳を使用 している。主な用途は「はっ酵乳」が53.2%、「乳酸菌飲料」が38.2%となって いる。 加工油脂メーカー 回答のあった加工油脂メーカー12社のうち、10社が国産脱脂粉乳を使用してい る。用途は「マーガリン類」が99.0%、「その他」が1.0%となっている。 製パン 回答のあった製パン業8社のすべてが国産脱脂粉乳を使用している。主な用途 は「パン類」で練り混み用となっている。 製菓 回答のあった製菓業52社のうち、国産脱脂粉乳を使用しているのは26社であっ た。主な用途は「アイスクリーム類」が47.4%、「菓子・デザート類」が36.4%、 「パン類」が16.1%となっている。具体的な内訳はビスケット、クッキー、クラ ッカー、チョコレート、食パン、アイスクリーム、カスタードクリーム等となっ ている。 飲料メーカー 回答のあった飲料メーカー7社のうち、6社が国産脱脂粉乳を使用している。主 な用途は「飲料」となっている。これらの具体的な用途は、缶コーヒー、缶入り 乳飲料、清涼飲料、紅茶飲料、缶入りスープ等となっている。 調理食品 回答のあった調理食品メーカー13社のうち、国産脱脂粉乳を使用しているのは 9社であった。主な用途は「調理食品」31.4%および「その他」68.6%で、その 内訳はコロッケ、ハンバーグ、グラタン等調理済み食品、デザート類、ベビーフ ード等用途は幅広い。 今後(直近2〜3年)の需要見通し 国産脱脂粉乳の供給サイドから見た今後の需要見通しは、やや減少と予測して いる。一方、需要者の今後の消費見通しは、おおむねやや増加と予想しているも のの、企業によって差異がみられる。特に、はっ酵乳、製菓、飲料では堅調な見 通しとなっている。 輸入脱脂粉乳の供給サイドから見た今後の需要見通しは、回答企業により差異 があるがおおむねやや減少と予測している。 一方、需要者の今後の消費見通しは、おおむね横ばいと予想しているものの、 企業によって差異がみられる。アイスクリーム、はっ酵乳、製菓では堅調な見通 しとなっている。 表5 国産脱脂粉乳の業種別用途内訳 お詫びと訂正 本誌8月号(平成14年7月25日発行)掲載の「事業団から」の別表1(45頁〜48 頁)におきまして、市町村名に誤りがありましたことをお詫びし、下記のとおり 訂正いたします。
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