北海道/森本 正隆
BSEの発生以降、畜産物ばかりでなく農産物の信頼までもが問われている中で、 北海道農業情報研究会では農畜産物の情報公開をテーマに研究大会を開催した。 基調講演に続き、パネルディスカッションでは、食の自給を守る消費者の立場 から素直な疑問点が投げかけられ、われわれ農業関係者が進むべき方向が明らか になるよう、わかりやすい討論がすすめられた。 基調講演では、中国が生産履歴証明書・残留農薬証明書・一部有機栽培認証書 の三点セットで日本の市場に進出すること、オーストラリア・ニュージーランド・ アメリカ・カナダなどの輸出国も日本市場を目指してトレーサビリティーを確立 すること、それがグローバルスタンダードとなること、その期限がおよそ3年であ ることが示され、「狼は本当にやってくる」の言葉が迫真に満ちていた。 畜産物としては、JA全農安全安心システム認証第1号の宗谷岬肉牛牧場では、す でにかなり進んだトレーサビリティーに取り組んでおり、産地と消費者が合意し た生産基準による肉牛生産が行われている。宗谷岬肉牛牧場の合意された基準は 現在でも非常に高いレベルにあり、飼料自給率は40%と、日本の他の地域では実 現不可能な基準である。また、認証後も配合飼料の変更や抗生物質の使用状況な ど、生産基準の範囲内とはいえ、生産者に不利な情報も開示するなど、試行錯誤 を重ねながら、関係者が現地に集合してシステム構築を図ってきている。 その結果、今回のBSE問題が発生した時も一時的に購買が落ち込んだが、これま での取り組みで培ってきた生協組合員との信頼関係で他の産地の牛肉と比較して 驚異的な回復を実現した。現在では、スライス肉までのトレーサビリティーに取 り組んでいる。 このディスカッションの中で、同じ情報をどこにでも等しく開示するのでなく、 相手の理解度や要望に応じて出すべきだとか、難しいことを考える前に記録する こと「ビール一杯飲む前の記帳」がトレーサビリティーの第一歩など、トレーサ ビリティーに取り組む上での数多くのヒントが明らかになった。
満員で、開催された研究大会 |
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宗谷岬肉牛牧場のホームページでは 生産履歴を一般にも公開している (http://omosiro.souyanet.ne.jp/soyabeef/ansin.htm) |