◎地域便り


愛知県 ●名古屋コーチンの種卵生産から鶏肉販売までの一貫経営

愛知県/加藤 篤幸


 ブロイラーにはない地元名産の名古屋コーチン本来の味を引き出すために、種
鶏の厳選から肥育生産、食鶏処理・販売までを一貫して行っている有限会社稲垣
種鶏場の稲垣社長は、「一貫経営により得られた鶏群の改良や飼養方法などを世
界に向けて情報発信し、コーチンの普及・イメージアップを図りたい。」と熱く
語る。

 稲垣さんは名古屋市に隣接する春日井市で、昭和28年に白色レグホン専門ふ化
場として鶏群の改良に取り組み始め、45年からは外国系ブロイラーふ化業に移行
したが、消費者のブロイラーの味に対する不満が出始めた中、60年から純系名古
屋種の一貫生産販売経営に転換、平成5年に有限会社稲垣種鶏場を設立した。

 良いヒナを作ることが仕上がりを左右するため、ふ化には社長自らが目を光ら
す。こうして、自社生産の良い種卵から生まれた、旨味成分のイノシン酸を多く
含む雌だけを肥育している。

 肥育時も薄飼いにして、鶏がしっかりと運動ができるようにしており、物音に
敏感で密集事故を起こしやすいコーチンの性質から、昼間はラジオ放送を流して
音へのストレスを少なくする配慮も怠らない。肉の臭みを出さないため、飼料の
たん白質源、油脂は植物性のものだけを使い、鶏の健康維持のためにビタミン・
ミネラルも添加している。平飼いと粗食によって、しっかりとしまった臭みのな
い肉に仕上げている。

 仕上がった鶏は、農場に併設される食鶏処理場で処理し、契約料理店3分の1、
直売所3分の1、宅配3分の1により全量を自家販売している。出荷契約に当たって
は購買者に必ず農場を見てもらい、こだわりを持って生産された商品であること
を納得してもらっている。消費者に鶏の姿を見てもらえるよう農場の入口に開い
た直売所では、カウンター型の冷蔵ケースで肉と種卵の一部を有精卵として対面
販売している。直売所は、消費者の反応を直接聞くことができるアンテナショッ
プの役割も果たしており、食べた感想や、消費者が欲しがっている情報などを、
購入客とのやりとりの中で得て、生産・商品・サービスにフィードバックしてい
る。また、「かしわ」のイメージにより、自家消費用だけでなく宅配便を利用し
た贈答用としての需要も多い。

 将来は、「直営のレストラン経営にも取り組みたい。」とあくまでコーチンの
普及・イメージアップに前向きだ。
 

直売所での稲垣社長
     
農場に併設される食鶏処理場

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