愛知県/加藤 篤幸
ブロイラーにはない地元名産の名古屋コーチン本来の味を引き出すために、種 鶏の厳選から肥育生産、食鶏処理・販売までを一貫して行っている有限会社稲垣 種鶏場の稲垣社長は、「一貫経営により得られた鶏群の改良や飼養方法などを世 界に向けて情報発信し、コーチンの普及・イメージアップを図りたい。」と熱く 語る。 稲垣さんは名古屋市に隣接する春日井市で、昭和28年に白色レグホン専門ふ化 場として鶏群の改良に取り組み始め、45年からは外国系ブロイラーふ化業に移行 したが、消費者のブロイラーの味に対する不満が出始めた中、60年から純系名古 屋種の一貫生産販売経営に転換、平成5年に有限会社稲垣種鶏場を設立した。 良いヒナを作ることが仕上がりを左右するため、ふ化には社長自らが目を光ら す。こうして、自社生産の良い種卵から生まれた、旨味成分のイノシン酸を多く 含む雌だけを肥育している。 肥育時も薄飼いにして、鶏がしっかりと運動ができるようにしており、物音に 敏感で密集事故を起こしやすいコーチンの性質から、昼間はラジオ放送を流して 音へのストレスを少なくする配慮も怠らない。肉の臭みを出さないため、飼料の たん白質源、油脂は植物性のものだけを使い、鶏の健康維持のためにビタミン・ ミネラルも添加している。平飼いと粗食によって、しっかりとしまった臭みのな い肉に仕上げている。 仕上がった鶏は、農場に併設される食鶏処理場で処理し、契約料理店3分の1、 直売所3分の1、宅配3分の1により全量を自家販売している。出荷契約に当たって は購買者に必ず農場を見てもらい、こだわりを持って生産された商品であること を納得してもらっている。消費者に鶏の姿を見てもらえるよう農場の入口に開い た直売所では、カウンター型の冷蔵ケースで肉と種卵の一部を有精卵として対面 販売している。直売所は、消費者の反応を直接聞くことができるアンテナショッ プの役割も果たしており、食べた感想や、消費者が欲しがっている情報などを、 購入客とのやりとりの中で得て、生産・商品・サービスにフィードバックしてい る。また、「かしわ」のイメージにより、自家消費用だけでなく宅配便を利用し た贈答用としての需要も多い。 将来は、「直営のレストラン経営にも取り組みたい。」とあくまでコーチンの 普及・イメージアップに前向きだ。
直売所での稲垣社長 |
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農場に併設される食鶏処理場 |