熊本県/地内 正嗣
熊本県天草地域では、子牛生産者の顔写真と給与飼料を表示した生産者カー ドを作成し、子牛市場にて、購買者に配布している。 天草は県内では古くからの黒毛和種の産地で、ほとんどの肉用牛農家は繁殖 経営であるが、BSE問題や牛肉の産地偽装等による消費者の牛肉離れに伴い、 子牛価格が低迷したことから、肉用牛農家は今後の経営に対して不安になって いた。 そのため、天草農業活性化協議会畜産部会(市町、JA、天草畜産農業協同組 合、天草家畜保健衛生所、天草農業改良普及センター等が部会員)では、天草 の畜産農家と畜産関係機関が一丸となって天草黒牛の「安全」、「安心」のPR を行うことで少しでも消費者の信頼回復に役立てようと、生産者カード作成に 取り組んだ。作成に当たっては、先ず、天草家畜保健衛生所が主体となり、班 編制を組むことにより1カ月間で約800戸の畜産農家すべてを巡回し、生産者の 顔写真撮影と給与飼料の聞き取りを行った。 生産者カードの内容は、生産者の顔写真と一緒に生産者の住所、氏名、子牛 番号、子牛の生年月日も明記し、その上で出荷までに与えた粗飼料と濃厚飼料 の種類を書き込み、さらに「熊本県天草産の黒毛和種です。私たちが手塩にか けて育てました。」と宣言した文書を入れたものをカラー印刷し、ラミネート 加工を施した。併せて、天草の全畜産農家の顔写真が明記されたポスターも作 成し活用している。 生産者カードは、平成14年3月の子牛市場から購買者に配布を行い、好評を 得てきているが、この取り組みで何よりも天草の畜産農家および畜産関係機関 が「安全・安心な商品づくりが大切!」という気持ちになったことが一番の収 穫だった。 天草独自で実施した消費者向けのアンケートでも一番多かったのが、産地お よび安全性を表示した牛肉販売という結果だったため、生産者カードの取り組 みは、消費者の不安解消と併せて天草黒牛のブランド化、並びに地産地消への 取り組みにもつながると期待を寄せている。 現段階では子牛の購買者向けだけではあるが、将来的に店頭販売の牛肉に対 して繁殖農家→肥育農家→消費者と牛肉の生産履歴が目に見えるようなシステ ムができるように、現在管内のAコープ等に少しずつではあるが試験的に生産 者カード展示を行い、消費者の希望に応じてカード内容および取り組み手法等 を改善しながら、消費者の不安がなくなるように努力していきたいと考えてい る。
今回作成した生産者カード |
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子牛の頭上にかかげられた生産者カード |