★ 農林水産省から


「食を考える月間」を終えて

総合食料局 消費生活課 堀部 敦子


 農林水産省では、平成15年から毎年1月を「食を考える月間」とし、生産者、
食品加工関係者、消費者など各層の方々の参加を得て、「食」について改めて
考えていただくためのさまざまな取組を展開することとなった。第1回目の取
組の一部を紹介する。


「食を考える国民フォーラム」

 1月14日(火)、有楽町朝日ホールにて、「『食を考える月間』創設記念 
食を考える国民フォーラム〜日本人の食を考える〜」が開催された(主催:食
を考える国民会議、ごはん食ネットワーク会議)。

 このフォーラムでは、国士舘大学の原田信男教授およびスローフード協会の
ジャコモ・モヨーリ副会長による基調講演が行われた後、「農場から食卓まで
の安全・安心を考える」と題し、食を考える国民会議の中村靖彦幹事長をコー
ディネーターに、またパネリストとして女優の森尾由美さん、全国消費者団体
連絡会前事務局長の日和佐信子さん、社団法人日本フードサービス協会副会長
の米濱鉦二さん、全国農業協同組合連合会常務理事の宮垣和正さんをお迎えし
てパネルディスカッションが行われた。

 原田教授は、「日本人の食生活はどう変わってきたか−米を中心とした日本
人の食」と題し、特に米を中心とした日本人の食生活の形成とその変遷につい
て、古代から現代まで時代を追って紹介し、モヨーリ副会長は、「スローフー
ドの現代的意味」と題し、最近脚光を浴びているスローフード運動の本来的な
目的や今後の展開方向などについて日本の食材や食文化に対する評価も交えて
わかりやすく解説した。

 また、パネルディスカッションでは、主婦、消費者、食品産業関係者、生産
者それぞれの代表が、今の食生活に関する現状認識、食の安全について、これ
からの食のあり方についての3点をテーマに議論を行った。
【食を考える
国民フォーラムの様子】
 「食」と「農」は本来一体のものであり、お互いの関係を断ち切るべきでは
ないこと、みんなが信頼できる表示のあり方やシステム作りの重要性、また、
子供に対する「食育」の重要性などが提案された。

 ディスカッションの中で、会場の参加者に対しても、食生活の現状認識とし
て食の安全に関する意識についての質問が投げ掛けられ、専用の集計システム
で、瞬時に結果が会場に示されるなど全員参加型の催しを通じて、自らの食に
ついて改めて考え直すきっかけとなった。


農林水産省「消費者の部屋」で特別展示を開催

 1月14日(火)〜31日(金)の3週間にわたり、農林水産省「消費者の部屋」
では、「あなたの食を考える」をテーマにした特別展示を実施した。

 この特別展示では、1週間毎に「『食育』を考える」、「食の安全・安心を
考える」、「トレーサビリティシステムを考える」の3つのテーマを設定し、
来場者が自らの「食」についてさまざまな観点から考えることができる構成と
した。

 会場には期間を通じて約3千人の来場があった。特に第1週「『食育』を考え
る」では、全国各地のお雑煮のパネル展示を見て家庭の味との違いを考える来
場者などが見られ、第2週「食の安全・安心を考える」では、展示された加工
食品の実物を通じて具体的な表示内容を確認したり、農薬の登録に至る安全性
チェックの仕組みに関するパネル展示を熱心に見入る来場者などが見られた。
【九州農政局庁舎に掲げられた垂れ幕】
 また、第3週「トレーサビリティシステムを考える」の週では、今年度農林
水産省の補助事業によりシステムの実証試験を実施している各団体が参加し、
現在開発中のシステムについて実演を含めた紹介を行い、多くの来場者が実際
にシステムを体験した。「普段行く店舗に設置されており関心はあったが、近
づいてやってみるところまではいけなかったので、いい経験ができた。」など、
3週間を通じて来場者の「食」に対する意識の高さを伺わせるものとなった。


各地域においてもさまざまな取組を展開

 「食を考える月間」においては、本省での取組だけでなく、各地域において
もさまざまな取組が繰り広げられた。

 関東農政局では、月間関連行事の一環として、さいたま新都心庁舎のインフ
ォメーションセンターにおいて、特別展示を行った。

 特に、1月31日(金)には、同日開催された「地産地消フェアー」(第7回農
林水産省タウンミーティング、地域食材の試食会)の一環として、深谷ねぎの
トレーサビリティ実演、栄養士による食生活相談コーナー、日常家庭で食べて
いるお米の食味診断をするコーナーなどが設けられ、来場者が自分で食につい
て改めて振り返るきっかけとなった。月間中の来場者は2,000名を超え、大盛
況となった。また、JRさいたま新都心駅前には「1月は『食を考える月間』で
す」という垂れ幕が大きく掲げられ、駅の利用者に対して「月間」をアピール
した。

 北陸農政局では、1月29日(水)、加賀市との共催で、「食と農に関する意
見交換会」を開催した。この意見交換会には、加賀市内の農業者、栄養士、食
生活改善推進員、農協、漁協、土地改良区などの代表者24人が参加し、それぞ
れの立場における食の安全確保の取組や今後の市としての食の安全確保に向け
た推進方策などについて意見交換が行われた。学校給食への食材の利用に関す
る問題点や、安全な農産物、水産物を生産するための取組の紹介などについて
活発な意見交換会が行われた後、地元産の食材を用いた料理の試食などが行わ
れた。

 近畿農政局管内では食品表示を中心とした取組も行われた。独立行政法人農
林水産消費技術センター神戸センターでは、消費者の部屋の特別展示として、
「安全・安心への食品表示に向けて」をテーマに展示が行われた。また、大阪
府では「JAS法(品質表示)シンポジウム 解りやすい食品表示〜食品の表示
について考える〜」が行われ、消費者の関心が高い「JAS法って何?」「正し
い表示は?」「行政はどんな取組をしているの?」等についての基調講演が行
われた後、消費者、事業者、行政の代表者によるパネルディスカッションが行
われ、参加者の食品表示に対する理解を一層深めるものとなった。

 九州農政局は、1月11日(土)〜17日(金)の1週間、九州朝日放送、長崎放
送、熊本放送、大分放送、宮崎放送、南日本放送の6つのラジオ放送局におい
て、毎日2回、「食を考える月間」をPRするためのスポットCM放送を実施した。
また、庁舎には「年の初めに『食』について考えてみませんか」をキャッチコ
ピーとした垂れ幕が飾られ、熊本城を訪れる観光客にも月間をアピールした。

 これらのように、「食を考える月間」初年度の取組は、各地域においてさま
ざまな工夫の下、積極的に展開され、全体として国民が広く「食」について考
えるためのきっかけづくりとなった。

 「食を考える月間」は、「食育」の取組を推進していくに当たり、特に年の
初めの月である1月に、国民各層の方々が食材や食品の生産・加工・流通・消
費といったさまざまな立場から「食」について改めて考えていただくためのも
のである。この「食を考える月間」を契機として、1年を通じて「食」につい
て広く関心を持ち、考えていただくことが重要であり、農林水産省としては、
国民一人ひとりが豊かで安心できる食生活を実現することができるよう、今後
とも全国レベルや地域レベルのさまざまな取組を推進していくこととしている。

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