経営局 女性・就農課 藤河 正英
新しく農業を開始する者(新規就農者)を確保・育成することは、わが国の 農業が持続的に発展していく上で、必須となる課題である。 新規就農者は、昭和60年には年間約9.4万人いたが、平成2年には、約1.6万 人まで減少した。 このような状況に対処するため、7年2月に「青年等の就農促進のための資 金の貸付け等に関する特別措置法」が制定され、都道府県や関係団体等に協力 頂きながら新規就農施策の構築を図ってきた。 11年7月に制定された「食料・農業・農村基本法」においても、第25条に新 規就農者向け施策を講ずることが規定されている。 これらの取り組みの結果、新規就農者数は増加に転じ、13年は、約8万人と なっている。
近年、定年後に農業を始める方や、Uターン就農等他産業からの離職就農者 が急増している。その背景として、「自然に囲まれた生活がしたい」、「安全 な食料を生産したい」、「田舎暮らしをしたい」等の理由から、自然と向き合 いながら生産活動をする農業そのものの魅力が再評価されてきており、農業を 職業として考える意識が高まっていることが考えられる。 将来の農業生産の担い手として期待される新規就農青年(39歳以下)は、2 年には年間約4千人であったが、13年は年間約1万2千人まで増加している。い わゆる新規参入者(農業後継者以外の就農者)も、2年の69人から13年には530 人になり、農業法人への就職を希望する人も増加している。 このように、就農の経路や形態の多様化が進んでいる。 ○食料・農業・農村基本法(抄) (人材の育成及び確保) 第25条 国は、効率的かつ安定的な農業経営を担うべき人材の育成及び確保 を図るため、農業者の農業の技術及び経営管理能力の向上、新たに就農しよう とする者に対する農業の技術及び経営方法の習得の促進その他必要な施策を講 ずるものとする。 新規就農者数の推移 資料:農林水産省「農業構造動態調査」、「農業センサス」 注1:「離職就農者」とは、他産業への勤務が主から農業への従事が 主になった人。 注2:平成10年以降は「販売農家のみ」の調査値である。
農業を開始する際には、さまざまな課題を解決しておく必要があるが、特に、 「農業技術や経営管理手法の習得」、「農業経営を開始する際に必要となる機 械施設等を取得するための資金の確保」、「農地等の経営基盤の確保」が重要 となる。 しかしながら、農業外からの新規就農希望者にとっては、これらの課題への 対応は大変な労力が必要となる。 このため、農林水産省では、これから農業を始めようとする方がしばしば直 面するこうした課題に対応しながら、それぞれの経歴や将来の構想を踏まえて、 円滑に就農できるようさまざまな支援を行っている。 就農に向けた段階に応じた施策 まず、農業に対する関心を高めてもらい、新規就農についての検討を始めて いただくまでの「就農啓発段階」では、シンポジウムなどを通じた情報提供や アドバイス・就農相談活動を行う全国段階(全国農業会議所内の全国新規就農 相談センター)や都道府県段階(新規就農相談センター)の新規就農相談窓口 の整備等を行っている。 就農に向けた準備を行っていただく「就農準備段階」では、道府県農業大学 校や就農準備校(民間研修教育施設等)における研修体制の整備、研修を受け るために必要となる経費等を無利子で融資する就農支援資金(就農研修資金、 就農準備資金)の貸付け、農地保有合理化法人や農業委員会等を通じた農地情 報の提供や農地のあっせん等の支援を行っている。 技術を習得し、実際に経営を開始する「経営開始段階」では、農業機械や資 材、農業施設等を導入するために必要となる経費を無利子で融資する就農支援 資金(就農施設等資金)の貸付けを行っている。 また、経営開始後の「就農定着段階」についても、農業改良普及員や指導農 業士等による技術・経営指導を行う等の、経営の安定化や技術の向上に向けた 支援を行っている。 新しく農業を開始するための施策概要 平成14年度補正予算における取り組み 平成14年度補正予算においては、農業に関心を持っていただき、雇用対策の 一環として、新規就農への第1歩を踏み出して頂くためのイベントを行う。 全国農村青少年教育振興会では、広く国民の皆さんに農業の魅力を発見して いただくため「就農シンポジウム2003」を開催することとした。スローフード 協会の副会長ジャコモ・モヨーリ氏が、なぜ今農業なのか、その魅力と可能性 についての講演を行うこととしている。また、具体的に就農に向けたイメージ をつかんでいただくため、全国農業会議所と日本農業法人協会の共催で農業を 仕事にするための総合イベント「新・農業人フェア ’03」を開催する。こち らでは、新規就農者の受け入れを希望する地方自治体関係者や従業員を募集す る農業法人の経営者が一同に会し、就農に向けた相談を行うほか、実際に就農 した方々の体験談の発表等が行われる。
このように、農林水産省では、新規就農の促進に向けたさまざまな施策を実 施している。12年に公表した「農業構造の展望」において、目標とする「効率 的かつ安定的な農業経営」の数を確保するためには、毎年1万3千人から1万5千 人程度の新規就農青年を確保する必要があるとされているが、新規就農者数は、 未だ十分な水準には達していないと考えている。 これからも、新規就農者の確保に向けた積極的な取り組みを推進していきた いと考えている。 <お問い合わせ先> 就農相談や「新・農業人フェア’03」に関することは・・・ 全国新規就農相談センター TEL:03−3507−3088 HP:http://www.nca.or.jp/Be-farmer/ 就農準備校や「就農シンポジウム2003」に関することは・・・ 全国農村青少年教育振興会 TEL:03−3291−5787 HP:http://www.agriworld.or.jp/sinkokai/ 農林水産省「農業を始めたい人を応援します」 HP:http://www.maff.go.jp/soshiki/keiei/jyosei-syunou/hajimetai.htm
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