◎地域便り


北海道 ●「想いやり牛乳」という特別牛乳を販売

北海道/馬渕 富美子


 「うちの牛乳は、加熱殺菌をしない搾ったままの生の牛乳です」と語るのは、
北海道中札内村の有限会社中札内村レディースファームの長谷川竹彦社長(48
歳)。平成3年に、妻の雅子さんとともに中札内村に新規就農した。同ファー
ムは43頭の経産牛、47頭の育成牛を飼養。搾乳作業をはじめ、飼料給与などの
作業は長谷川社長と5人の女性スタッフで行われている。「最近は農業をやり
たいという女性が増えていますが、現実的には不可能。しかし、酪農は女性が
一生をかけられる仕事。生き物の観察・育成・出産・搾乳・ほ乳といった牛の
世話は、男性よりも女性の方が細やかなところまで行き届く。中札内村レディ
ースファームでは、女性スタッフだけで酪農ができる実績を作っていきたい」
とのこと。

 「おなかを壊す」とまったく牛乳を飲めなかった知人が「ここの牛乳なら大
丈夫」とおいしそうに飲んでくれた。以来、うちでは「殺菌の必要はない」が
信念となり、平成14年4月から「想いやり牛乳」という特別牛乳を販売開始。
牛乳・乳製品は通常、加熱殺菌されるのが常識である。しかし、中札内村レデ
ィースファームで生産される生乳には大腸菌など有害な菌が含まれていないた
め、殺菌する必要がない。同ファームでは無殺菌牛乳を製造するために、徹底
した衛生管理を施している。牛のベットには細菌が繁殖しにくい砂を使い、ふ
ん尿の除去も1日4時間を掛けている。搾乳室も1日3時間掛けて洗浄している。
さらに、瓶詰めされた製品は出荷前に毎日、工場内の検査室で大腸菌の有無を
調べており、仮に細菌が混入した場合、消費者の手元には渡らない仕組みにな
っている。

 長谷川社長は「牛乳を生産してくれる牛の健康を第一に考えた飼育方法をし
ています。牛が自ら搾乳室に入るまで決して追いません。牛にストレスをかけ
ないことで免疫力が高まり、殺菌が要らない牛乳ができるのです。牛が何をし
て欲しいか、今どのような状態なのかを把握して世話をするようにしています。
それはスタッフ同士、お客様に対しても同じ、相手の立場に立って物事を考え
てあげる思いやりが品質の良い製品を作る基本ではないでしょうか。」と語っ
てくれた。

 そんな思いで出来上がった「想いやり牛乳」。毎日、社長かスタッフが村内
や帯広市内の一部地域に宅配。その他、牛乳販売業に委託したり、帯広市内の
菓子店や村内の道の駅で想いやり牛乳を販売、夏はソフトクリームの販売も行
っている。「想いやり牛乳」は現在、日量400本の生産だが、札幌市や近郊市
町にも宅配しており、今後は釧路市などにも進出予定で増産の見込みである。
【快適な環境で
のんびり反すうする牛】

    
【想いやり牛乳】

元のページに戻る