●●●子牛価格の推移●●●
1月の東京における枝肉卸売価格は12月に続き、ほとんどの規格で値を下げ
た。今年度の枝肉卸売価格は11月を天井に12月、1月と2カ月連続で値を下げて
いる。
1月の全国の子牛の市場価格は、黒毛和種、褐毛和種、ホルスタイン種、交
雑種で前月に比べ値を下げた。前月比は黒毛和種7.0%減、褐毛和種11.7%減、
ホルスタイン種25.2%減、交雑種10.2%減となった(図1)。
1月の子牛価格は12月の枝肉卸売価格の急落を反映したものと思われる(図2)。
2月の枝肉卸売価格はほとんどの規格で1月の価格を上回っている(東京、速
報値)。3月には行事、行楽が重なり牛肉の需要が増加する時期、これに伴う
子牛価格の上昇を期待する。
●●●輸入生体牛の内訳●●●
このほど公表された平成13年動物検疫年報の概況によると生体牛の輸入は対
前年比約3割の伸びがあった。この内訳は乳用繁殖用4.3%、肥育用95.1%、と
畜場直行用0.6%である。輸入生体牛のほとんどが肉用牛であり、その約94%
はオーストラリアからである(図3)。
生体輸入牛の輸送方法は、航空貨物13.1%、船舶貨物が86.9%の割合になっ
ている。また乳用繁殖用、と畜場直行牛は100.0%航空貨物扱いで輸入されて
おり、輸送期間中のストレスが少ないよう配慮されていることが伺われる。現
在、産業動物の生体輸入の輸送形態のほとんどが航空貨物(約96%)であるに
もかかわらず、肥育用牛の約9割が船舶貨物で日本に輸送されるのことは生体
輸入牛の特徴である。
と畜場直行牛の国内仕向地は福岡県のみで、肥育用素牛の主な仕向地は宮崎
県32.1%、福岡県18.3%、兵庫県13.0%、鹿児島県10.2%、熊本県9.8%であ
り、全体の83.5%を占める(図4)。
ちなみに生体輸入され3カ月以上肥育された牛からの牛肉は農林水産省告示
により国産品として扱われる。
●●●増加した豚平均枝肉重量と「上」格付け率●●●
現在の豚の家畜改良目標では、出荷時体重112Kg(枝肉換算78.4Kg)とされ
ている。そして、農林水産省「食肉流通統計」を基に全国の豚平均枝肉重量に
ついて見ると、この目標を反映するかのように年々豚肉の平均重量は増加して
いる(図5)。
一方、格付けの判定に使われる豚の枝肉重量範囲は、豚の成長過程、豚肉生
産の経済性、豚肉需要の傾向を考慮して設定されており、一つの重要な指標と
なっている。
最近では平成8年10月に一部改正が行われ、重量による規格範囲が重い側へ
ややスライドした。格付け等級「上」の1頭当たりの枝肉重量(皮はぎ)は、
62.0〜78.0Kg→65.0〜80.0Kgと上限の重量が2Kg引き上げられた。
必ずしも枝肉重量の増加と格付率に相関があるとは言えないが、日本食肉格
付協会「豚枝肉格付結果情報」の「上」の格付率と照らし合わせて見ると、枝
肉重量の増加に伴って格付率も向上している(図6)。豚の体重の増加は、厚
脂や重量オーバーによる格落ちの要因も伴うが今後も枝肉重量の増加傾向は続
くものと予想される。
●●●下げ続けるむね肉に熟成むね肉が救世主となり得るか●●●
平成14年1月のむね肉卸売価格(東京)は1キログラム当たり224円(▲31.7
%)と昨年の3分の2程度の金額となった。2月も下げ続き210円(▲27.9%)と
なっている。一昨年のように200円を下回り、190円台も予想される。そのため、
熟成むね肉が注目されつつある。社団法人日本食鳥協会が昨年8月に「鶏肉表
示ガイドライン」として「熟成むね肉」の定義を下記のとおり定めている。
定義:と鳥、大ばらし後、骨付きのまま「0〜2℃」で数時間冷蔵庫で貯蔵(熟
成)させ、その後解体処理を行い採取された「むね肉」をいう。なお、
貯蔵に際し乾燥を防止するため一定の湿度下にて行うものとする。
表示:骨付きのまま○○時間一定の温度で貯蔵後に製品化した柔らかい「むね
肉」です。
単に、「むね肉」製品を一定の時間寝かせることとの誤認を避けるため、任
意表示として「熟成むね肉」の内容を示して消費者に理解を深め、消費拡大に
つなげることとしている。と殺後4時間以降に除骨を行うと保水性の低下が抑
制されると同時に軟化が促進され、柔らかいパサパサ感の少ないむね肉となる
ことが、実証されている(広島大学教授西村敏英氏の研究より)。
●●●15年1月以降のブロイラー輸入品在庫は安定的に推移か●●●
ブロイラー輸入量は平成14年9月以降昨年を大幅に下回っている。年明け後
1月の輸入量は47,213トンと前年同月の19.5%減と大幅に下回って推移してお
り、国別輸入動向調査においても、引き続き2月、3月と前年を下回ると予想さ
れている。国別に見ると、米国産はここ1,2ヵ月前年を上回っているものの、
中国、タイ、ブラジルなどの主要国からの輸入がいずれも減少している。特に
ブラジル産については、15年1月は、18,013トンと前月を大幅に上回っている
ものの、前年同月比では▲14.7%となっており、引き続き2、i3月も減少が予
想される。ブラジル産の輸入量が全体の輸入量を左右していることがわかる。
消費者の国産志向が続いていることと、1月から3月はブロイラーの不需要期で
もあり、輸入量の減少が予測されることに加え、輸入品在庫は徐々に取り崩さ
れることが予想されることから、在庫水準の増加の心配はなさそうである。
(図7、8)
●●●「低温殺菌牛乳」および「高温短時間殺菌牛乳」処理量、前年並み●●●
厚生労働省が公表した「平成13年度衛生行政報告」の「殺菌温度別牛乳等の
処理量」によると、牛乳全体の処理量は3,893,106kl(0.1%)と前年並みであ
った。
「62〜65℃」(低温長時間殺菌)
11年度には136,451kl(48.2%)と前年度から大幅に増加したものの、12年
度が131,628kl(▲3.5%)と前年度をやや下回り、さらに13年度は94,754kl
(▲28.0%)と大幅に下回った。シェアも2.4ポイントと前年度を1.0ポイント
下回った。
「75℃以上」(高温短時間殺菌)
13年度は144,172kl(▲10.6%)と前年度をかなり下回り、シェアも3.7%と
0.4ポイント減少した。低温長時間殺菌と合わせると全体の約6%を占める。
「瞬間」(超高温殺菌、LL牛乳を含む)
13年度は3,654,180kl(1.6%)とわずかに増加した。引き続き牛乳全体の処
理量の9割以上を占めている。(図9)
●●●14年次鶏卵生産量、ほぼ前年並み●●●
農林水産省「鶏卵流通統計」によると14年次の鶏卵生産量は、2,512,195ト
ン(▲0.6%)とほぼ前年並みとなった。
最近の鶏卵生産量と生産量の先行指標となるひなえ付け羽数の推移を見ると、
10年次まで生産量は2,500〜2,600千トンの範囲で、おおむねえ付け羽数増減の
影響を受け増減している。しかし、11年次以降はえ付け羽数の増加にもかかわ
らず生産量は減少していることから、老鶏の早期淘汰や強制換羽等で積極的に
生産抑制を図ったと考えられる。
15年1月のえ付け羽数は、9,123千羽(10.7%)と依然として減少する兆しは
見せておらず引き続き計画的な生産調整の取り組みが必要といえよう。
●●●平成15年度畜産物行政価格等の決定について●●●
平成15年3月13日付けで食料・農業・農村政策審議会で次のとおり答申と建
議が行われた。
平成15年度畜産物価格等(加工原料乳補給金単価及び限度数量、指定食肉、
指定肉用子牛)は以下のとおりである。
答 申
平成15年3月13日付け14生畜第7952号で諮問があった平成15年度の生産者補
給交付金に係る加工原料乳の数量の最高限度として農林水産大臣が定める数量
及び加工原料乳の補給金単価を定めるに当たり留意すべき事項、平成15年3月
13日付け14生畜第7954号で諮問があった平成15年度の指定食肉の安定価格を定
めるに当たり留意すべき事項並びに平成15年3月13日付け14生畜第7953号で諮
問があった平成15年度の肉用子牛の保証基準価格を定めるに当たり留意すべき
事項及び肉用子牛の合理化目標価格を定めるに当たり留意すべき事項について
は、下記のとおり答申する。
なお、併せて別紙のとおり建議する。
記
1 加工原料乳に係る限度数量及び補給金単価については、生産条件、需給事
情及び物価その他の経済事情を総合的に考慮すると、政府試算に示された考
え方で定めることは、やむを得ない。
2 豚肉の安定価格については、その生産条件及び需給事情その他の経済事情
を総合的に考慮すると、試算に示された考え方で安定価格を決めることは、
やむを得ない。
牛肉の安定価格については、その生産条件及び需給事情その他の経済事情
を総合的に考慮すると、試算に示された考え方で安定価格を決めることは、
やむを得ない。
3 肉用子牛の保証基準価格については、その生産条件、需給事情及びその他
の経済事情を総合的に考慮すると、試算に示された考え方で決めることは、
やむを得ない。合理化目標価格については平成15年度につき試算に示された
考え方で決めることは、やむを得ない。
建 議
T 酪農・食肉共通
1 頻発した食の安全・安心を脅かす事件を教訓に、生産者と消費者の情報交
流を強化し、自然循環に配慮しつつ、安全な畜産物の供給と流通に努めるこ
と。
2 生産段階における自主的防疫措置の推進や生産・加工・流通の各段階にお
ける衛生・品質管理対策の徹底、表示等による畜産物の情報伝達の適正さを
確保すること。
3 意欲のある担い手の確保・育成を図るとともに、酪農ヘルパーの利用拡大
や肉用牛ヘルパーの普及定着等を図ること。
4 地域の実態等に応じた家畜排せつ物の処理・再資源化、施設の計画的整備、
耕種分野と連携したたい肥の利用・流通の促進を図ること。
5 自給飼料基盤に立脚した畜産経営の推進を図るため、「飼料増産推進計画」
の下、生産性の向上、放牧の推進等のための施策を適切に行うことにより自
給飼料の増産を図ること。さらに、飼料安全対策の充実・強化を図ること。
6 牛海綿状脳症(BSE)について、清浄化の達成に向け、死亡牛のBSE検査に
よる浸潤状況のより正確な把握や感染原因の究明に努めるとともに、科学的
な知見に基づき、BSE疑似患畜の範囲の見直しを検討すること。
7 肉骨粉の処分に係る費用など、食の安全・安心のための措置に要する経費
の受益者負担の在り方について検討すること。
8 関連対策については、政策目的、達成度を踏まえ、適切に見直すとともに、
その実施に当たっては、透明性の確立、適切な執行に努めること。
U 酪農・乳業関係
1 脱脂粉乳の過剰在庫等の需給状況を踏まえ、生乳・乳製品の需給の安定を
図るため、需給情報の的確な提供、脱脂粉乳の新規用途の開拓、脱脂濃縮乳、
チーズ等の消費拡大に努めるとともに、指定生乳生産者団体の機能強化を図
ること。
2 牛乳・乳製品は、多様な栄養素を含み、他の食品との組合せも可能な身近
で日常的に使いやすい食品であることから、その優れた特性の普及等を通じ
て、消費の拡大に努めること。
3 国際化の進展を踏まえ、乳業の経営基盤と国際競争力を強化するため、乳
業工場の再編合理化の推進に努めること。
V 食肉関係
1 肉用牛生産基盤の整備や養豚経営の経営安定のための対策の継続実施によ
り、地域における多様な取組等への支援を通じて、生産コストの低減を図る
こと。
2 海外との交流機会の増大にかんがみ、国内防疫措置及び輸入検疫措置をよ
り強化し、効果的かつ効率的な家畜防疫体制を構築すること。また、国、地
方自治体、生産者等の関係者が連携して豚コレラ等の防疫を推進し、家畜衛
生の維持・向上を図ること。
3 牛肉の生産から流通・消費の各段階において個体識別番号等を正確に伝達
するためのトレサビリティ制度について、流通実態を踏まえ、十分な普及・
啓発を図りつつ、円滑な導入を図ること。
○平成15年度畜産物価格等(加工原料乳補給金単価及び限度数量、指定食肉、
指定肉用子牛)
1 加工原料乳補給金単価及び限度数量
2 指定食肉安定価格
3 指定肉用子牛保証基準価格及び合理化目標価格
合理化目標価格の適用期間
今回の合理化目標価格の適用期間は、平成15年4月1日から平成16年3月31日
までとする。
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