食肉生産流通部
平成14年度は深刻なデフレ不況の中、先の見えない閉塞感がぬぐえない1年間であ り、雇用状況の悪化、失業率の慢性的高止まり、所得の下落で消費意欲は減退基調 で推移した。 外食産業の概況としては、総務省の2002年全国世帯別家計調査報告によると、1997 年のピークから減少を続けていた外食支出が 5年ぶりに1.3%の前年比増を確保した が、増加品目が主に麺類に限定され、ハンバーガーについては3.6%の減少となった。 JF注)2002年外食市場調査では、過去9年間の統計で全店ベースの売上が最低伸び率 (1.7%)を示し、客数は5.3%の伸び、店舗数は過去最大の5%の伸び、客単価は下 落幅は後半に入り縮小傾向になったものの依然として下降方向を示した。 ハンバーガーを含む洋風ファストフードは外食業種の中でも焼き肉ファミリーレ ストラン、パブに続く苦戦で、全店ベースで売上、客数、店舗数とも前年割れ、売 上減少幅は前年より拡大し、前年増加した店舗数、客数は減少に転じた。既存店ベ ースでの売上減少幅は若干改善したものの、客数の減少幅は拡大し、客単価の下げ 幅が縮小し1.0%の減少であった。店舗数、客数が増加してもデフレ下の状況にあ っては売上の伸びに結びつけられない現状である。 洋風ファストフード低迷の要因については、不況による不振のほか、限られた食 欲、パイを巡る他業種の伸展が上げられる。麺類ばかりでなく、高級感を打ち出し たコンビニエンスストアの「おにぎり」や弁当、デパート地下食品売り場のバラエ ティに富んだ惣菜、弁当など中食産業がこの不況下で好調を維持しシェアを伸ばし ている。 14年度の動きとしては、上半期(4〜9月)においてはBSEの後遺症からビーフ類 の低迷、代替でチキン類の伸長があり、下半期(10月〜3月)でビーフ類の回復が 顕著になり、売上高でも下半期は回復を示したが、年間としてはパティ類購入販 売量で19.1%、売上高で6.2%の前年割れとなった。食肉使用量としては、下半期 の積極的な新メニュー導入で牛肉が年間前年比4.9%減まで回復したが、ナゲット 類の手当調整で鶏肉の使用量が大幅に減少した。 調査対象3チェーン以外を含めハンバーガー業界全般的に、和食を中心とする他 業種の台頭への対抗とこれ以上の低価格化での客数増加が見込めないとの判断で、 あえて原価率の上昇率を招いても高品質アイテムや夕食向けのボリュームある定 食風セット導入が進められるなど高価格路線への転換がみうけられ、前年消費者 物価のサービス価格項目で最大下落幅を示しデフレの象徴となったハンバーガー が2002年は一転して上昇率のトップ(12.7%)となった。 本年度の調査事業の対象は社団法人日本ハンバーグ・ハンバーガー協会加盟ハ ンバーガーレストラン3チェーンで、その実績を基に、3社の日本のハンバーガー 業界におけるおおよその売上高シェア(日経流通新聞2001年外食売上高ランキン グを参照)の係数をもって日本全体の動向を推計したものである。 注)JF:(社)日本フードサービス協会 平成2002年1〜12月集計
各月ともキャンペーンの実施品目によってその需要量が大きく左右されている が、前年後半からのBSE影響の牛肉離れ、そこから波及してのハンバーガー類全体 の落ち込みは、14年度末でも回復しきれない根深いものであった。 ビーフ類は、前半30%を超える前年割れが続いたが、8月にマクドナルドが創業 価格の80円を大きく下回る59円までハンバーガーの価格を引き下げたことによっ てこの月大きく消費を伸ばし、10月、11月は前年BSE発生後に激減したこととの対 比で大幅増となった。ただし、BSE発生に無関係の12年と比較すると97.4、88.8% にとどまっている。ここを転機に後半はキャンペーンによって実質上もプラスと なる回復をみせ始めている。一方、ビーフの代替メニューとして前年後半需要の 伸びていたポーク類が特段のキャンペーンのない限り10%前後の前年比減少とな り、新製品開発新発売に呼応して伸びたチキン類が比較的安定して推移したが、 フィッシュ類はキャンペーン実施月以外の落ち込み幅が大きかった。また、ナゲ ット類は年度始めに海外の鳥インフルエンザ発生から原料手当の問題で販売中止 があり、以後再開されてからも度重なる鶏肉の輸入停止もあり手当量が大きく落 ち込んだ。 本年度は、13年10月からの実績がBSEの影響が大きく特殊な状況と考えられる ので、参考までにパティ量、食肉使用量、売上高については12年度との対比値を 掲げることとした。
14年度前半は、5、7月と雨の多い不順な天候の中、ビーフ類の低調をチキン 類がカバーするかたちで推移し、夏以降は、ビーフ類が徐々に主力の座を取り 戻しつつ回復をみせたが、全体で前年比90%前後となり、12年度と対比すると 85%前後であった。特に8月と並んで大きく売上を伸ばす12月において、クリス マス商品のナゲット類が不振に終わったことが目立つ。 ただでさえ限界に達したと言われる低価格環境で、売上高の伸びは期待でき ず後半には高品質商品への転換も図られた。 売上高における各品目のシェアは、ビーフ類21.3%、その他バーガー類(チ キンやポーク類)18.5%、その他(ナゲット類、ポテト等)60.2%となった。
例年の動きで需要量、売上が大きく他の月に比べて伸びるのは8月と年末年 始の2回であるが、13年度は変動幅が小さくなったことと、後半の落ち込みが 目立ったことに比べ、14年度は4月が低調であったため、指数100を超える月が 多く、特に8月の高実績が目立った。絶対量では低調だった12月も年間の動き では例年並の上昇を示した。客足を左右する要因としてまず休日数では、7月 の前年比▲2日が挙げられ、7月はそれに加え台風が2度上陸するなど雨天も多 くマイナス要因が重なった。5月の雨天日数の多かったこと、11月以降急速に 冷え込んで3月まで寒さの厳しい冬が長かったことも外食業界としてはマイナ スになった。 本稿は、当事業団が(社)日本ハンバーグ・ハンバーガー協会に委託して実施 した調査の概要である。パティ量季節変動(4月=100)
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