◎地域便り


茨城県●稲発酵粗飼料の給与による地域循環農業への取り組みについて

茨城県/山形 勝吉


 平成13年度に設立した茨城町馬渡飼料生産組合は、現在、30ヘクタールから生
産される稲発酵粗飼料を組合員12戸(酪農家11戸、肥育農家1戸)で利用し自給飼
料の確保に努めている。


 組合の代表は茨城県東茨城郡茨城町の清水裕一さん(40歳)で、現在乳用牛130
頭を飼い、ほかに水田0.5ヘクタール、畑12ヘクタールを栽培している。


 清水さんが稲発酵粗飼料を給与することになったきっかけは、水戸地域農業改良
普及センターから茨城町に隣接する大洗町が平成13年度水田農業経営確立対策事業
で稲発酵粗飼料の作付けを考えており、その給与農家としてどうかとの相談であっ
た。


 常々、輸入粗飼料に不安を感じていた清水さんは、当時稲発酵粗飼料の給与体系
が確立されてはいなかったが、普及センターと地元の農協や酪農協の協力が得られ
るとのことで稲発酵粗飼料の給与について前向きに検討することにした。


 しかし大洗町からの要望は約48ヘクタールから生産されるおおむね5,000ベール
(1,250トン)にも及ぶ膨大な稲発酵粗飼料であったため、自家だけでは消費しき
れないので地域の仲間に働きかけ組合を組織した。


  さらに清水さんは茨城町馬渡飼料利用組合の代表として稲作農家や大洗町役場と
作業や費用の分担などの検討を重ねた結果、大洗町の稲作農家で組織する水田農業
推進協議会(110戸)と茨城町馬渡飼料利用組合との間で「栽培利用協定」を平成
13年度に締結するに至った。協定では稲作農家が飼料用稲の栽培管理、収穫・調製
を行い、畜産農家が運搬・利用を分担することになっているが、実際にスタートし
てみると稲発酵粗飼料の調製や輸送そして保管に係る品質や作業労力などで課題が
生じたため両者間で協議し、出来る限りの譲歩と協力の中で問題の解決を図った。


 また、清水さんは、これまで良質なたい肥の生産にも努め近隣の畑作農家にたい
肥を供給してきたが、今年度からは、普及センターの技術指導もあり、茨城町馬渡
飼料利用組合が生産したたい肥を施用した飼料用稲と一般的な水稲の実証ほを設置
し、水田農業と畜産業の循環システムの本格的な確立を目指している。


 将来は耕畜連携の中ですべてを国産の飼料で賄い、地域社会とともに歩む農業を
進めていきたいと考えている。
稲発酵粗飼料の収穫 ラッピング作業の様子

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