◎地域便り


大分県 ●肉用牛繁殖農家へ転身

大分県/農政部畜産課


 「豊後山香牛(ぶんごやまがぎゅう)支えます」と語るのは、大分県速見郡山香
町(はやみぐんやまがちょう)の岩崎雅公さん(39歳)。現在、繁殖雌牛を72頭飼
養している肉用牛繁殖農家である。

 岩崎さんは就農前、大手電機メーカーでICの設計を担当する技術者であり、東京
都や福岡県で15年間働いていた。畜産農家への転身は、山香町役場からのリース畜
舎事業の話を聞いたことがきっかけとなった。


 農業に興味のあった同僚の付き添いで畜産の話を聞き、元来の動物好きもあって、
岩崎さんは農家になってしまったとのことである。


 リース畜舎事業とは、山香町とJA山香町が平成9年度から進めているもので、JA
が牛舎などの飼養施設を建設し、繁殖牛も用意する。繁殖農家を目指す青年を臨時
職員として雇用し、研修を積ませた後、施設のリース契約を結んで独立してもらう
というシステムである。新規参入者には自己資金が安く済み、飼育に慣れるまでは
身分と給与が保証されるメリットがある。同事業の牛舎は2棟あり、それぞれ70頭
規模。個人で計画した場合には、一棟6千万円ほどの資金が必要となる。平成11年
12月から岩崎さんの研修がスタートしている。


 当初は乳牛と肉牛の区別がつかないほどの初心者だったが、3年間の「修行」期
間中は、牛に踏まれたり、蹴られたり、お産(分娩)の立ち会いや、子牛の健康管
理などさまざまな経験をしてきた。「修行」期間が終了した今、ようやく軌道に乗
り始めた。
 平成14年10月にJAとリース契約を結び、経営者として独立、現在は2カ月に1度の
市場に、10頭前後の子牛を出荷できるようになった。「これからのモットーは、常
に厳しく経営を行っていかなければならない。甘えは許されない。肥育農家に喜ば
れる子牛を1頭でも多く育てたい。今は、母牛の年齢構成もほぼそろっていて、経
営的にはまずまずだが、母牛の減価償却もしていかなければならず、少しずつでも
自分の牛を増やしていきたい。」と語る。


 JA山香町担当者は、「町内の繁殖農家は80戸余りで、約400頭の繁殖牛が飼育され
ている。繁殖農家は肥育農家に比べて高齢化が進み、1戸当たり頭数が少ない小規模
経営が目立っている。勉強熱心な岩崎さんは、県が主催する「豊後牛飼い塾」の第
1期生でもあり、山香町を担う大型繁殖農家としての期待も大きく、今後の豊後山香
牛を支える存在になってほしい。」と語った。
電機メーカー技術者としての
経験を生かして活躍中
岩崎雅公さんの若い力に期待

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